第二十話 二人の子供
「さて、どうしましょうか」
私は目の前に居る二人の子供を観察する。
一人は赤毛の獣人の女の子。
身長は…私よりも低いと思う。
箱に身を乗せたままなのでそう思うかもしれないけど。
顔付きは人とあまり変わらずクリクリとした大きな目は光の加減で青にも緑にも見えてとても綺麗だ。
その目は私ともう一人の子供と行ったり来たりして頭の上から生えているケモ耳がピクピクと忙しなく動いている。
幼く可愛らしい顔もこれからどうしようかと迷っている表情だった。
初めて会う私への警戒と抱きしめている少年への心配をしている様子だ。
ボロボロな布を胴体に巻きつけるように着ていて布がない肩や腕、足の部分には赤くて短い毛がびっしりと生えている。
毛は全身に生えているのかもしれない。
しかし、布のせいか尻尾が見当たらない。
もしかしたら、尻尾は兎や熊のように小さいのかもしれない。
研究所であった獣人と比べて目の前の子の方が人に近いタイプだ。
もう一人は少女に抱きつかれてグッタリと気を失っている緑の髪の少年。
顔が少女の胸に埋もれて見えないが、少女と同じようにボロ布を纏っていて、髪と青白い肌以外は普通の人間に見える。
身長は抱きしめている少女よりも低いようで、少女が動くと足が浮いたりしている。
少女と比べたら全体的に細く、軽そうだ。
二人の種族は違うように見えるけど、どんな関係なのか。
異種族姉弟?
友達?
抱きしめてるから見知らぬ他人同士って訳じゃないと思うけど。
今居る所は明るく広い見知らぬ場所。
ここには私を閉じ込めていた箱とは別になんらかの巨大な機械…魔導具が箱の周囲に設置されていた。
箱は思っていた通り小さかったが、これぐらいの大きさなら救済の手で箱か上の部分が持ち上がると思うのだけど。
救済の手は頭上に何かあると発動しないのかもしれない。
まずは情報収集をしよう。
今、話せる相手は…獣人の少女だけ。
言葉が通じないが…さて、私が箱から出る途中で話し声が聞こえてたな。
何か話してもらえれば分かる事もあるだろう。
…建前はここまで。
めっちゃ人と話したいです!
箱の中に何年閉じ込められてたと思っているんだ!
少なくとも三年、体感では十年以上だ。
発狂していた時ならいざ知らず、今の私ならどんな相手だって話せる自信があるね!
まぁ、相手の反応次第で狂喜乱舞する可能性は大きいと思うけど。
箱から出られただけでも嬉しいのに、目の前に話せる相手が居る。
それも、とびっきり可愛らしい獣人娘ときたら幸福感で昇天しそう。
ニヤニヤが止まらないさ。
異世界万歳。
相手が警戒してる?
無視されるより何倍もマシだろう!
こっちは話し相手に飢えているんだ。
さぁ、仲良く…うん、情報収集の為に会話をしようじゃないか。
箱から出る前に聞こえた会話を思い出せ。
…名前、と思う単語が二つ。
ディーダ、ノイマン。
これだ!
私は指を指しながら尋ねてみる。
フランクリンの教えだと指を指してもマナー違反ではなかったはず。
「貴女が、ディーダ?」
『え!
あんた、なんでオレの名前が分かるんだ!?』
とても驚いた様子の獣人の少女。
目を大きく開いてなんで分かったのかと叫んでいる。
そりゃ、聞こえてたから。
二分の一の賭けに勝った。
少女の名前はディーダ。
なら少年の名前は…
「なら、そっちがノイマンね?」
『おぉ!
そうだぞ!
こいつはノイマンだ!』
ディーダは元気よく笑顔で正解だと答える。
可愛らしい見た目に反して話し方は男の子っぽい。
私は指を自分に向けて続ける。
「アカリ」
『あかり?』
自分を指差して私の名前を言ってみる。
ディーダは私の意図に気付かなかったようなので少し方法を変えてみる。
「ディーダ、ノイマン、アカリ」
名前を言いながらディーダ、ノイマン、私の順に指を指す。
『あ!
そうか!
あんたはアカリって名前なんだな!』
「はい、そうです」
今度は私の意図を理解したようだ。
よし!
私はディーダの呼びかけに笑顔で応える。
「ノイマンを休ませた方が良いわ」
私は変身能力で紙をディーダに見えるように出した。
そして、ノイマンがマットの上で横になって休んでいる様子とその近くに座っているディーダと私をイメージする。
すると思った通りの絵が紙に描かれていく。
箱の中で気付いた、変身能力でできることの一つだ。
『お、おぉ!
どこからともなく、何かが出てきた!
絵が勝手に描かれて…これはノイマンか?
それにオレとアカリが近くに座っている、のか?』
言葉は伝わらなくとも、絵は分かるよね。
変身能力で描いた絵はとても上手いから分かりやすいだろうし。
「こっちへ、ディーダ」
私は箱から降りて周囲の機械を避けて下にふかふかなキングサイズのべットを出す。
その上に座ってベットを軽く叩きながらディーダを手招きする。
『おぉ!
またどっからか出てきたぞ』
最初の警戒もどこへやら、素直に私の方へノイマンを肩に担いで周辺の機械を身軽に避けてやって来た。
そして、ノイマンをベットの上に手荒に放り投げて私の隣に勢いよく座りこんだ。
私は慌ててノイマンの落ちる所に追加の柔らかいクッションを出した。
顔面から着地してたけど…大丈夫かな?
『すっげー!
ボインボインするぞ!』
ディーダはノイマンの事なんか気にせず、ベットの上で跳ねて感触を楽しんでる。
ベットで跳ねる度に大きく歓声を上げる。
…楽しそうでなによりだ。
落ちたら危ないからベットの周りに網を張っておこう。
…今、ノイマンにヒールタッチしておくべきかな。
顔からクッションに突っ込んで歪な猫のポーズをとっているノイマンに近寄って仰向けに体勢を変えてあげてる。
ようやくノイマンの顔を見れたが、髪と肌の色以外は普通の少年だ。
肌は乾燥して少し痩せすぎな気もするが頬に触れるとちゃんと生命の温かみを感じる。
しばらく触れていればヒールタッチが発動するだろう。
触れると言えば…ディーダのあの短い毛も触れてみたい。
手触りはどんな感じだろうか。
前世で人懐っこい野良猫を撫でた事があったが、あの猫も短い毛で触り心地はとても良かった。
あー、撫で回したい。
研究所では獣人に触れようとしたら暴れる者が多かったから撫でるなんて余裕はなかったしな。
流石に、会ったばかりじゃ撫で回させてくれないよね。
アカリ
Lv2(189/200)
HP79/79
【ヒールタッチ】
【救済の手】
【物理無効】(1/10000)
【無属性耐性】(3/1000)
【火属性耐性】(1/1000)
【水属性弱点】(59/100)
【風属性弱点】(9/100)
【雷属性弱点】(1/100)
【土属性弱点】(10/100)
【光属性耐性】(90/1000)
【闇属性弱点】(1/100)




