第十八話 絶望の先
《復活まであと0:00:00》
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アカリ
Lv2(189/200)
HP79/79
【ヒールタッチ】
【救済の手】
【物理無効】(1/10000)
【無属性耐性】(3/1000)
【火属性耐性】(1/1000)
【水属性弱点】(59/100)
【風属性弱点】(9/100)
【雷属性弱点】(1/100)
【土属性弱点】(10/100)
【光属性耐性】(90/1000)
【闇属性弱点】(1/100)
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「…は、はは、あっはっは!」
ついに、やった。
物理耐性がスキルアップしたぞ。
私は嬉しさのあまり、久しぶりに大声で笑った。
うれしい、うれしい、長らく望んだ変化があった。
長かった、本当に道のりは長かった。
目を瞑れば今までの苦労が浮かんでくる。
この狭い箱の中で出せる道具の大きさが制限されるという悪条件の中、手当たり次第に試行錯誤を重ねて…
ようやく物理耐性を突破して私がダメージを受ける物とその方法を見つけて…
気が遠くなりそうなほど、永遠とその作業を続けたのだ。
精神的にきつくなったらゲームをして気を紛らわして。
他に効率的な方法があるんじゃないかと探して見つからなかったり。
時に発狂して、不貞腐れて、無気力になって…
それでも他にする事がないから、変化を望んだから自分を傷つけ続けた。
今、冷静に思えば狭い空間で自傷行為に励むなんて正気の沙汰じゃない。
第三者に見られれば間違いなく狂人の烙印を押される事だろう。
…ダイジョーブ、アタシ、ショーキ、ダ。
これ前もやった気がするな。
いや、私は自傷行為が目的でやり続けた訳じゃないんだ。
痛みに快感を覚えるような気狂いではないのだ。
第一、私は神経が無いのだから痛覚さえ存在しないのだ。
…触れる感覚は不思議と分かるのだがね。
つまり、自分を傷つけて感じる痛みに悦に浸るような趣味はない。
私はマゾではない。
…でも眼帯とか包帯とか、キャラデザインは大好物です。
主人公が追い込まれる系のゲームもプレイしてた。
…マゾじゃないもん。
この箱に入れられて…何年経っただろうか。
どれぐらい前なのか分からなくなったが、変身能力で出したデジタル時計で1000日は数えた。
1000日目で消して以来、数えていないから、時計を消して何日、何年経ったかは不明なのだ。
だからこの箱の中には少なくとも3年近く入ったままだ。
私は時計を出していた間は、この箱から脱出しようと色々と試してみた。
最初の頃は邪魔する相手が居ないから、これ幸いとゲームばっかりしていたけど。
大好きなゲームを長時間続けても苦ではなかった。
長時間、同じ姿勢でも痛くないし、暗い空間だけど目も頭も痛くない。
周囲も時間も気にせずにゲームをし続けられられる環境は天国だった。
箱が狭くてできないテレビゲームも確かにあったけど、携帯ゲームで充分楽しめた。
ゲームを一つクリアしたら、変身能力で出した物で箱の壁や天井を突いたり擦ったりしてすぐに別のゲームを始めるスタイルだった。
箱から脱出したいと強く思ったきっかけは、とあるRPGゲームの最中だった。
私は魔法の存在する世界に来て、なんで魔王を倒す旅に出るゲームをやっているんだ、と。
この箱から出れば本物の魔法が見られるのに、なんで仮想の魔法で楽しんでいるんだと自問自答した。
それからは積極的に箱から脱出する為に行動した。
こんな狭い空間で出せる道具で箱を壊そうとしたし、箱の中から大声で皇帝に赦しを乞いた時もあった。
私が思いつく限りの事はした。
狭い箱の中で可能な事はどんどん挑戦した。
何をしても箱から出られなかった。
何をしても箱から出してくれなかった。
デジタル時計を出したのは変化が欲しくなったからだ。
狭くて暗い空間。
膝を抱えた状態から少ししか身動きは取れない。
明かりを点けないと何も見えない。
私が何かしないと何も聞こえない。
外への、魔法に対しての渇望が募るのみ。
私は不変に耐えられなかった。
私は静寂に耐えられなかった。
私は希望を諦めたくなかった。
だからデジタル時計を出した。
時間が経つ度に数字が変化していく事に安堵した事は今でも覚えている。
時計があれば時間が分かる。
時間が分かれば予定が立てられる。
予定が立てられれば…先がある。
何時間、続けてみよう。
何日間、耐えてみよう。
何ヶ月間、信じてみよう。
時計が時間を教えてくれる。
時間は私の努力を教えてくれる。
努力は…結果をもたらさなかった。
デジタル時計を消した時、私はこの箱から出る事を諦めた。
時計も、明かりも、なにもかもを消した。
なにもしたくなかった。
私には食事が必要ない。
私には呼吸が必要ない。
私には睡眠が必要ない。
生きていく上で必要な事が不必要で、今の私にできない事だった。
それじゃ、この箱から出られない私は死んでるも同じ事。
何時間か何日か分からないが、暗闇のまま過ごした。
私はその頃、前世の事を思い出していた。
物心ついた時から死ぬ直前まで、そして死後の世界からこの箱に閉じ込められるまでを思い出していた。
不思議と一つ一つ明瞭に正確に思い出せた。
そして、私は耐性スキルの存在を思い出した。
中途半端なままの耐性スキル。
…ゲーマーとしてこれを上げずには終われない。
私は目標を箱から脱出する事から耐性スキルを上げる事に変えた。
それからは精力的に耐性スキルを上げる事を取り組んだ。
とはいえ、上げられる事ができたスキルは火属性と物理だけだったが…
雷属性はスタンガンで上げられると思ってたけど、放電しなかった。
どうやら、変身能力で出した電気製品は電力で動いている訳ではないとこの時、知った。
火属性は直接、火を出す物は出せなかったけど、昔、紙を燃やせるライトを調べた事があったから、これでスキルを上げた。
うん、ホラー系のゲームでライトの光を当てると敵が燃える設定があった時に、絶対にこのライトが使われたぞ、と騒がれた事があった。
本当に紙は燃えるし、薄い布も燃える。
さらには金属のボールを置けばスクランブルエッグも作っていた動画を見た時は私も確かにと思ったものだ。
…本当は光属性が上がると思ったんだけどね。
火属性も耐性にスキルアップしたらどれだけ当ててもダメージが入らなくなったが…
物理は大変だった。
だって、電動ノコギリを使い果たして1ダメージだ。
流石は耐性スキル、ダメージ軽減が半端じゃなかった。
だからこそ、熱中して取り組めた。
しかし、それも物理無効にスキルアップしてしまった。
気絶する前は効いていた作業も今は全く効果がない。
次はどうしようかと考えていた時、微かに音が聞こえた。
これは…もしや!
私は静かに待った。
ギギ、ギギと音が大きくなるにつれて真っ暗だった箱の中がほんの少し明るくなっていく。
はは、どうやらこの箱から出れるチャンスが巡って来たようだ。
アカリ
Lv2(189/200)
HP79/79
【ヒールタッチ】
【救済の手】
【物理無効】(1/10000)
【無属性耐性】(3/1000)
【火属性耐性】(1/1000)
【水属性弱点】(59/100)
【風属性弱点】(9/100)
【雷属性弱点】(1/100)
【土属性弱点】(10/100)
【光属性耐性】(90/1000)
【闇属性弱点】(1/100)




