第十七話 小箱の中身
「こんなに早く見つかってしまうとは…」
私が自転車を漕ぎ始めて数十分後、空から黄色の鎧が数体、壁が見える方角から飛んで来て私を囲むように降りてきた。
私はちょうど、ドローンを飛ばして周囲を確認していた所だったので、自転車を止めていた。
止まっていなかったら空から爆撃されてたかもしれないな。
…魔法が見れた?
急いで逃げてれば良かった!
彼らは迷いなくこちらに向かって来た。
空を飛んでいた彼らに飛ばしていたドローンが見つけられたのかもしれない。
あの黄色い鎧には見覚えがある。
グラットに引っ張られて皇帝に会う前に大勢ひしめいていた人達が着ていた鎧。
という事はこの黄色い集団は皇帝の放った追手と考えた方が妥当だろうな。
呪われて石化した皇女を破壊、建物から脱出した事がバレたに違いない。
彼らは一言も話さず長い棒のような物を私に向けている。
武器か何かだろう。
無言で武器を向けられているというのに恐怖を感じない。
うーん、どうやっても死なない事が分かっているから恐怖が湧いてこないのかもしれない。
死なないといえば、彼らは私を殺す気だろうか。
研究所でグラットからも殺す術はないと言っていたし、私も脳や心臓がない存在を殺すとなると…
ゲームなら不死の相手は本当に殺せない仕様か、特定の武器や工程を踏まないと倒せない。
私がそうなのかは分からないけど。
グラットは私がある程度ダメージを負うと一時間は気絶する事を知っている。
私を袋叩きにして気絶させてから連れて行く魂胆だろうか。
人数は見えるだけで10人。
姿を消している者もいるかもしれないからそれ以上の人数がここに居ると考えて、そんな大人数から私は逃げられるか?
私にはステータス画面に記されてない変身と再生能力。
それとステータス画面に反映されているヒールタッチ、救済の点、各属性の弱点と耐性。
再生能力と物理耐性だけで考えたら耐久戦ができるかもしれないけど、HPが残りわずかでは耐久のしようがない。
耐えても援軍が来るわけでもないし、相手の増援が来てしまいそうだ。
万が一、逃げれたとしてもここには身を隠す遮蔽物がない。
変身能力を活用したところでまたすぐに見つかってしまうだろう。
今は逃げる時ではなさそうだ。
次の逃げる機会を待つとしよう。
私は自転車を消して変身能力も解いていつも通りの姿になる。
「この通り、私は逃げる気はありません」
武器を構えて頭までスッポリと兜を被り全身鎧に包まれた彼らに対して堂々と宣言する。
彼らは微動だにしない。
…私の言葉が伝わっているだろうか?
せめて、一言でも良いから反応して欲しいのだが。
いや、もしかして…
私にはこの世界の言葉が日本語に聞こえるが、他の者は異世界言語を話している。
そして、この世界の人達は日本語なんて知るはずもない。
だからグラットは翻訳仮面を着けてようやく私が言っている事が分かったのだから。
もしや、その翻訳仮面を誰も着けていないのだろうか。
わぉ!
もしそうなら私と話す気なんて初めからさらさら無い、ゼロって訳?
うん?
棒が赤く光りだした?
全員の持っている棒が赤く光り出して何かバチバチと音が聞こえてきた。
これは…攻撃準備ってヤツじゃ…
《瀕死状態になりました》
《復活まであと1:00:00》
《復活まであと0:59:59》
《復活まであと0:59:58》
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
《復活まであと0:00:00》
…あれ、ここは?
私は真っ暗な暗闇の中に居た。
拘束具こそないが、私が座っているだけで体のあちこちが当たっている。
変身能力で明かりを付けようと懐中電灯をイメージしたが、出てきたのは小さなライト。
…なるほど、十分な広さが無いと出せる物の大きさも限られるようだ。
明かりを点ける私。
…ふふ。
明かりを点けると、どうやら小さな箱の中に押し込まれてしまったようだ。
手探りで箱の中を探ってみても出口がない。
なんで、こんな所に?
私は、黄色い鎧に囲まれて…持っていた武器が赤く光り出して…
…そうか。
私、ダメージを受けてHPが0になったんだ。
まぁ、高い場所から背面着地をやらかして残り8だったからね。
あの棒、光ってたから物理じゃなかったんだろうね。
物理なら多少は耐えかられたかもしれないけど、それ以外だと私は瞬殺だろうし。
はぁ、魔法の武器、どんなふうに動くのか見たかったのにな。
しかし、どうしようか。
小さな箱の中で膝を抱えた状態で入れられているが少ししか隙間がなく、動くに動けない。
体勢が変えられないほどに狭い。
変身能力では私に付いている物だけでは消えず、着けられた物や体内に入っている物しか消せない。
私が触れている物が全部消えてたら床に穴が空いたりするはずだからね。
うん、皇女の壁が消せなかった事もこれで説明ができる。
しかし、これはグラットは知らないはずなのに。
やっぱり監視カメラでも付いていたのかもしれない。
私の動きを全部把握済みってことか。
それとも、グラットは私よりも先に気が付いていたのかもしれない。
頼まれて何度か変身能力をグラットやフランクリンの前で使っていた。
グラットは研究者だ。
得た情報から考える事が専門。
情報があれば私よりも早く分かる事だってあってもおかしくない。
じゃあ、この箱は私を閉じ込める為に前から準備されていたのかも。
もしかしたら、あの皇女も偽物だったかも。
この箱の中に閉じ込める流れを作る為に。
もしくは、呪われて石化した皇女に対して私がどんな動きをするか様子見をする為に、とか?
友好関係なら私の能力を利用して、反抗したなら能力を強制して道具として扱う。
研究所で癒した獣人達みたいに意思を無視して。
…これはもう逃げるしかないね。
異世界に来て道具としてしか扱われないなんて嫌だ。
魔法を楽しみして来たのに私が魔法の道具になるとか願いが歪んで叶うなんて洒落にならない。
まずはこの箱の中から出よう。
救済の手を使ってこの箱を破壊しよう。
………あれ?
頭の上にはすぐに箱の天井がある。
そのせいか頭の少し上から生えてくる白い手が箱の中に現れない。
いや、それでも箱の外で白い手がでているはず。
方向は意識してないから真っ直ぐ下に降りるて箱に触れるはず。
救済の手は何かに触れれば、それを離さないようにくっついて、物凄い力で引っ張る。
しかし、いくら待っても箱が壊れるような音が聞こえてこない。
箱が浮いているような感覚もドスンと落ちた時の衝撃も無い。
…これは救済の手が発動していないのでは?
変身能力で出せる物は今手に持っているこの小さなライトぐらいの大きさまでの物に限られる。
…詰み?
アカリ
Lv2(189/200)
HP58/58
【ヒールタッチ】
【救済の手】
【物理耐性】(20/1000)
【無属性耐性】(3/1000)
【火属性弱点】(16/100)
【水属性弱点】(59/100)
【風属性弱点】(9/100)
【雷属性弱点】(1/100)
【土属性弱点】(10/100)
【光属性耐性】(90/1000)
【闇属性弱点】(1/100)




