第十五話 部屋の抜け穴
「どうやって壁を壊しましょうか」
壁の前に立ちつくす私。
銃火器全般、弾が出ない。
レーザーソードやレールガンなどのトンデモ武器、見た目だけの玩具。
鈍器、重たくて振るえない。
戦車や装甲車、そもそも出せない。
爆弾、爆発しない。
変身能力を使えば私に触れていたモノが消えた事を思い出して壁に張り付いて変身能力を使ってみたが、壁に変化はなかった。
銃火器には期待していたのに…
銃口を壁に向けて引き金を引いても音も弾も出ない。
どれを試してみても結果は同じ。
中には持てないほどの重量で試せなかったモノもあるが結果は同じだろう。
今後、銃火器は鈍器か飾りにしか使えなさそうだ。
わざわざ銃火器を鈍器として振るわなくても鈍器として完成された物を出せるし、異世界で銃火器を飾る機会があるかも分からない。
トンデモ武器は、見た目だけは精巧に忠実に再現されてはいたが、ビームやレーザーは出ないし、斬りつけた壁がボロボロに崩れたり、異空間に通じる次元の裂け目なんていくら振っても現れない。
コスプレを楽しむだけなら良いけど今の私には不必要だ。
鈍器も傭兵のコスチュームで振るえない事は分かっていたから下にタイヤを付けた破城槌のようなモノを出して全力でぶつけてみたけど、傷一つなし。
アクセル全開の乗り物なら壊せるはずだと思って出そうとしたが変身能力で出たのは車の玩具。
手乗りサイズのミニカーが出てきた時は壁に投げつけてしまった。
ダイナマイトで吹き飛ばしてしまえ、と出したものの赤い筒に導火線といった、いかにもな形で出てきた。
けど導火線に火を付ける為の道具が出せないし、ボタンで遠距離操作できるタイプを出してみても不発に終わった。
ヤケクソでニュースで見た事がある原子爆弾を出して見ても中が空洞のハリボテしか出せなかった。
構造が分かるのかと聞かれたら無理だけど。
変身能力で壁を壊せそうなモノを思い付いた限りどんどん試したがどれも失敗。
乗り物は出せない。
火薬や爆弾は再現できない。
空想の産物は見た目だけ。
どうやら変身能力で出せる道具は完全に能力を発揮するわけではないようだ。
一部のモノは見た目と質量だけを再現しているとしか思えない。
うーん、電気は再現しているのに、なんでだろうか。
ゲームとか電動ノコギリとか。
電動ドリルで壁に穴を開けられない時点で道具を使って壁を壊す事を諦めてしまったけど。
重いし、真っ直ぐに突き立てられないし。
私が扱えない物を出しても無理だと悟った。
とはいえ工具用のトンカチで壁を叩いても永遠と壊れない気がするし。
なにより、長時間この部屋に居ればいつかは監視か様子を見にくる人が来るだろう。
…この部屋で起こった事が知られたら終わりだ。
私は後ろを振り向くと、皇女の残骸が目にはいった。
…皇女もきっと死後の世界に旅立っただろう。
私の時も遺体を焼却されてようやく死後の世界に着いたと神様から説明されたから…
石化の呪いと頭部破壊で死は免れない。
来世で幸多くあれ、なんて壊してしまった私が言える事じゃないけど。
しかし、どうしようか。
変身能力は種族も変えられない。
私も幽霊になれたら壁をすり抜けて逃げ出せるのに。
姿は人間から変えられない。
特殊メイクで多少は化けたりはできるけど、研究所であったような獣人や魔法の世界に定番のエルフや人魚にはなれない。
せめてやれたとしてもコスプレぐらいだ。
つまり、巨人になって暴れたり、ドラゴンになって灼熱の息吹を吐いたりはできないのだ。
万事休すかと思ったが、救済の手の効果を思い出した。
白い手に触れたモノは磁石のようにくっつき離さず、かなり強い力で引っ張る。
金属の塊としか言い表せない鈍器さえもゆっくりとだが引きずる事ができた。
救済の手が壁に触れれば壁が壊れるまで離れないはず。
正確には、壁が壊れて手が戻りきるまで、だが。
救済の手を使えば壁を壊せるかもしれない。
そう思うと白い手が頭の少し上から生えた。
そのまま、ゆっくり壁の方へ伸ばしていく。
白い手が壁にピタリと触れると動きが止まった。
様子を見守ると微かに音が聞こえ始めた。
私は壁から離れようと後退ろうとすると白い手が触れていた付近の壁にヒビが入り、次の瞬間には白い手が壁から離れ始めた。
白い手が触れていた場所は確かに崩れていた。
白い壁に手の形の穴が空いて、そこからはカラフルな繊維状の何かが見える。
壁の中はこんな風になっているのか。
この繊維状のおかげで壁が動いたりできたのだろう。
白い手が消えて壁の破片がカランと落ちた。
私はそのカケラを手に取りしげしげと見つめる。
軽くて硬い。
すぐに割れてしまいそうな材質なのに、何をしても砕けなかった壁の一部。
さて、この場でゆっくりしていては逃げられなくなるだろう。
壁が破壊された事は遅かれ早かれ知られてしまう。
救済の手でどんどん壁を壊して早く逃げ出さねば。
私は救済の手を出して壁の穴まで伸ばす。
私自身もチェーンソーを突っ込んでみたり手斧で叩いてみたりと頑張った。
努力の甲斐あって壁の穴はますます広がり奥へ奥へと進んだ。
そして、ようやく、幸運にも、向こう側に通じる人一人が通れるほどの穴が空いた。
穴の向こう側は観察する限りは別の部屋か廊下だと思う。
人気自体はないだろう。
壁に穴を空ける時に結構な音が出ていたからね。
廊下で有れば人に見つからないように逃げよう。
部屋だったら…また同じ事をすれば良い。
私は穴に両手、頭、肩と入っていく。
穴は人一人が入れるとはいえ狭くて身動きが取り辛い。
幸いにも長さは肩を穴に入れている時点で向こう側に手が出ている。
ジタバタと動きながら穴を進んでいく。
お尻も引っかからずに向こう側へと辿り着いた。
うん、小柄でスマートな体はこういう時に便利だ。
顔から着地してしまったが、痛みはない。
周囲を確認すると、どうやら廊下らしい。
私は変身能力で緑に統一したゆったりとした服と特徴的な帽子に着替えて、念のためにメイクは男っぽくした。
これなら、誰がどう見てもこの国の兵士だ。
私はなるべく冷静に、落ち着いて歩き始めた。
うん、慌ててはいけない。
慌てれば失敗してしまうのは世の常だ。
人に会ったら同じ色に変えていけばバレないだろう。
曲がり角と壁の割れ目に注意しながら進む。
アカリ
Lv2(189/200)
HP48/57
【ヒールタッチ】
【救済の手】
【物理耐性】(17/1000)
【無属性耐性】(3/1000)
【火属性弱点】(16/100)
【水属性弱点】(59/100)
【風属性弱点】(9/100)
【土属性弱点】(10/100)
【光属性耐性】(90/1000)
【闇属性弱点】(1/100)




