第十四話 皇女の変化
「これは…復元は無理、ですよね」
目の前には粉々に砕けた石の破片が散らばっている。
傍らのマットレスには胸から上の損傷が激しい石像。
…はい、皇女を壊してしまいました!
うわ…うわー。
ヤバイヤバイヤバイ…
え、なんで、何が起こった?
皇女が砕けた。
はぁ、なんで?
いや、落ち着け、私。
まずは状況を整理しよう。
あの白い手が皇女に触れて、ゆっくりと生えた所に戻るように上がるとまるで磁石にくっついたクリップのように石化した皇女が持ち上げられた。
触れた所が頭だった為、ズルズルと足をマットレスの上で引きずられながら上がっていく皇女。
私は白い手が皇女のモノだと思ってマットレスから立って何が起こるか様子を見ていた。
そして…白い手が生えた所まで昇ると何も無かったようにフッと消えた。
白い手の生えた場所は私がマットレスに腰掛けていた時の頭の高さより少し上。
つまり、あまり高い位置から生えた訳ではない。
しかし、持たれていたのは頭。
これが生身なら問題は無かったかもしれないが今の皇女は石化して身動きが取れない。
手が消えた時は皇女は持ち上げられながら元の位置より移動していた。
ゆっくりと後ろに倒れていく皇女。
私も白い手が消えるとは思いもよらず石化した皇女が倒れていく様をただ見ているだけだった。
ガシャンと床に硬いモノが当たって砕ける音が響いて慌てて駆け寄るが…
そして今に至る。
少女の裸身像は頭から落ちた為、首から上は跡形も無く砕け散った。
上半身はひび割れて首に近い所ほど欠けてしまっている。
唯一下半身がパッと見では無事だ。
ボロボロである。
…終わった。
石化して砕けるとか、もう無理じゃん。
即死じゃん。
しかも砕け散ったのは頭だし。
致命傷じゃん。
復活なんて無理じゃん。
死者蘇生しか手がないじゃん。
皇女が倒れてボロボロに壊してしまってからどこも触れていない。
触れたらもっと崩れてしまいそうで触れられない。
…中まで綺麗に石化してたんだね。
割れて見える中身も灰色だ。
骨も肉も区別はつかない。
何も知らなかったら、石像が壊れただけだと思えるのだけど。
前世の知識ならこの状態なんて、化石ぐらいしか思いつかないけど、確実に死んでる状態だ。
いくら魔法が存在する世界だからといってもこんな完全に石化してたら助けられなかったんじゃないだろうか。
…これは言い訳にすぎないか。
あの白い手はなんだったのだろうか。
私は皇女の霊とか思ったけど…自分の遺体を壊すだろうか?
もしや、皇帝に自分の事は飽きらめろと伝えたかったのだろうか。
それなら私が壊した訳じゃないからセーフ?
しかし、皇帝は自分の娘が砕け散った現場を見れば怒り狂うに違いない。
私の言い訳なんて聞く前に処理してしまうのではないだろうか。
残酷に冷酷に。
うわ、私、皇帝に殺される。
死なないけど。
よし、逃げ出そう。
…でもこの部屋から出られないから無理だ。
終わった。
…幽霊ってやっぱ存在するのか?
死後の世界や神様が実在したんだ、幽霊が存在してもおかしくはない。
なんなら、魔法の世界なら幽霊が一般的に存在、認知されていても不思議ではない。
…それじゃ、まだこの部屋に皇女の幽霊が居るだろうか。
「皇女様、いらっしゃいますか?」
声を出して確認してみる。
ほら、こっくりさんとか呼びかけたら応えてくれるし、もしかしたら…
いや、言葉が通じないから応えてくれないだろうけどさ。
そもそも、皇女の名前すら知らないから呼びかけなんてできない。
流石に肩書きで呼ばれるなんてないだろう。
皇女には申し訳ないけど、怖い皇帝から逃げ出さないと私の身が危ない。
利用されるならまだしも、地下深くに埋められたりしたら…
まずはこの部屋から脱出しよう。
変身能力で出した銃火器やトンデモ武器が使えるか確認してみよう。
ガトリング銃やレーザーソードならこの部屋の壁も壊せるかな。
問題は思った通りに動くか、私が取り扱えるか、だ。
…そういえば救済の手はどんな能力だったのか。
もしかしたら脱出する事に使えるかもしれない。
私はまだ発動していないはずのスキルを意識した。
すると私の頭より少し上から白い手が生えてきた。
…アウトーッ!
え、え!?
白い手がまた出た。
いや、まだ、救済の手がアレだとは限らない。
さっきの呼びかけに皇女が応えたのかもしれない。
幽霊には言葉の違いなんて無意味なんだ。
「皇女、様ですか?」
白い手はゆっくりと下に降り続けている。
私の声には無反応なようだ。
当たって欲しくないと思いながら私は白い手が私の意思で動くか確認した。
私が右と思えば右に、左と思えば左にゆっくりと動く白い手。
はい、アウト。
白い手は救済の手でした。
今の状況を作り出したから救済じゃなくて絶望の一手だ。
皇女にトドメを刺したのは私だったよ。
皇女と面識がないせいか罪悪感は少しも感じないけどさ。
…せめて救済の手の効果を確認しないとやりきれない。
まず、この白い手はどこまで伸びるのか。
壁に向かって伸ばしてみる。
白い手が出ている所から壁までは20歩、歩けば辿り着くから…大体10メートルぐらいかな。
白い手はゆっくりと壁へと伸びていく。
伸びる腕には関節はなく、空中を進む白い蛇のように見えた。
壁に触れそうになったが、伸びる速度は止まらない。
まだまだ伸びそうだったので壁に沿って伸びるように意識した。
しかし、腕の部分はグネリと曲がらず手と生え始めた所を直線になるように動いていた。
蛇のようにトグロを巻くように壁に沿って伸ばせる長さを確認しようとしたが、腕は手と生え始めた所の最短距離に移動するようだ。
消えろ、と念じても消えず、変身能力で出した長い棒で突いてみると、瞬間接着剤でくっついたように外れなくなり、白い手が生えた所に戻り始めた。
それに合わせて棒も引っ張られ離してみても落ちずに腕についたまま動いていく。
棒が生え始めた所にたどり着いても落ちず、白い手が生え始めの所に到着して消えると棒もストンと落ちた。
条件を変えつつ色々と試してみたら大体、救済の手の効果が分かってきた。
現れるのは必ず私の頭より少し上で下向きに生えて、生える場所は現れた時から固定されるのか動かない。
白い手の動きはゆっくりで基本は下に伸びる。
私の意思で伸ばす方向は変えられる。
伸びる範囲は少なくとも10メートル。
何かに触れると戻り始めて戻りきるまで消えない。
触れたモノは手が消えるまで離れない。
相当な強さで触れたモノを引っ張る。
私の力では傷付かない。
…脱出には役に立ちそうにないかな
アカリ
Lv2(189/200)
HP57/57
【ヒールタッチ】
【救済の手】
【物理耐性】(8/1000)
【無属性耐性】(3/1000)
【火属性弱点】(16/100)
【水属性弱点】(59/100)
【風属性弱点】(9/100)
【土属性弱点】(10/100)
【光属性耐性】(90/1000)
【闇属性弱点】(1/100)




