第十三話 新技の習得
「全然、変わりませんね」
私は半透明なマットの上にある石像の隣にぴったりと引っ付いている。
石像はスベスベしていて素肌が触れるとヒヤリとする。
私は赤服とピエロメイクから元の格好とすっぴんに戻っている。
苦悶に満ちた表情の少女の裸身像の隣にタンクトップとホットパンツを着た美少女。
…怪しい雰囲気だ。
これじゃ、私が皇女を石化に変えたようじゃないか。
隣で寝転んでるだけだけどね。
不敬とか無礼とかはこの際、置いといて。
かれこれ、一時間は体勢を替えながら触れ続けたが石化した少女、呪われし皇女は何も変化が起こらず、頭の中では機械的な女性の声が響かない。
…うん、最低でも一時間が正しいか。
変身能力で出した懐中時計で時間を計り始めたのがちょうど、一時間前だからだ。
その前から触れてたしね。
いつもの場合は個人差はあれど触れ続ければ数分でヒールタッチが発動するのだが…
やはり、ヒールタッチは呪いを解く効果はないのだろうか。
それとも…すでに手遅れなのだろうか。
ゲームによっては石化は即死と同じ扱いもあるし。
ヒールタッチは死者を復活させる効果はない。
それは研究所で骨を持たされた時に経験してる。
第一、死後の世界に居た神様が死者を生き返らせる能力を授けるとは思えない。
ヒールタッチはあくまで生きている者を癒す能力だ。
少なくとも、今までの効果はそうだった。
だいたい、きちんと説明せずに私を送り込むとはどういう事なのだ。
せめて皇女がどんなふうに呪われてしまったのか知っていれば、また何かが違ったのかもしれないのに。
私はこの少女の裸身像が本当に呪われた皇女なのかも私は分からない。
しかし、強引に送られた今居る部屋には研究所で目を覚ました時と同じように出入り口がない。
あの部屋は登録した者以外は壁を割って出入りすることができない部屋だった。
ここも同じだと思う。
つまり、私はこの部屋から出られない。
ヒールタッチが数分で発動しなかったから確認の為に壁が割れて別の部屋に行けるか確認したが、行けなかったし。
…流石にこの石像が皇女の趣味ではないだろう。
呪いの効果が誰かを石化させる、とか?
それは私も大ピンチではないだろうか。
私には再生能力もあるようだが、呪いに対しても回復するのかは不明だ。
異世界に来て石像になるのはごめんだ。
しかし、それなら皇女がこの部屋に入ってくるなり、声をかけてくるなり、反応があるはず。
やはり、この石像が呪われた皇女なのだと思う。
しかし、皇帝も無茶を言う。
私が呪いを解けるかも分からないのに、呪いを解け、さもないと酷い目に合わせるぞと脅迫してくるのはどうかと思うぞ。
グラットもグラットだ。
皇女の呪いを解く術を探していたならもっと早く言っていれば…今回のようにヒールタッチを試しているだろうな。
でも、私に酷いことって何をされるのだろうか。
私はダメージを受けても痛みを感じない。
HPがゼロになっても気絶するだけで死なない。
怪我はすぐに治るし、仮に刃物か何かで串刺しにされても変身能力で消せる。
死なないならばと、永遠と気絶させようにも気絶する度にHPの最大値と耐性スキルが高くなって耐久性が増すだけ。
不快という感情はあるから、変態にエッロエロな事をされたり、虫が蠢く穴に閉じ込められたら発狂しかねないけど。
今の私は非力な女の子。
攻撃スキルなんてまだ持っていないから複数の男に囲まれたら抵抗もできないだろう。
うぇ、複数の醜男から全身をねっとり弄られながらベチョベチョと舌を這わせられるシーンを思い浮かべちゃった。
鳥肌モノだ。
それに、誰にも接触させずに今みたいな部屋に閉じ込められたら今の私じゃ非力過ぎて脱出できないわ。
レベルが上がらないし新しいスキルも手に入らない…し。
そうだ、新しいスキル。
ハイタッチ、ブライドタッチ、救済の手。
この三つに呪いを解く能力はないだろうか。
…名前だけじゃどんな効果か分からん。
しかもこの三つのどれかに石化を解く事が可能かどうかも分からない。
分の悪い賭けにもほどがある。
…ダメだったら帝国から逃げ出そう。
大丈夫、私の変身能力があれば人混みに紛れ込むなんて造作ないはずだ。
でも…そもそもこの部屋から出られないのだけどね。
…よし、悪い考えはここまで。
私は起き上がってマットレスに腰掛ける。
片手だけ少女の重ねている手に置く。
ハイタッチは…あのハイタッチかな?
手と手を上げて軽く叩くアレ。
効果は相手にハイタッチを強要させる、とか?
それで皇女
ブライドタッチは…なんだろう。
ブライドって何?
うーん、ジューンブライドっては聞いた事があるけど、意味なんだっけ?
6月の…ナニカ。
効果を考えるのは無理だ。
救済の手。
三つの中で一番、石化の呪いを解くかもしれない一縷の望みだ
名前からして何かから助ける能力だと思う。
私をこの状況から助けてくれ。
私は新しいスキルを救済の手に決めた。
…これで習得できたのかな?
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アカリ
Lv2(189/200)
HP57/57
【ヒールタッチ】
【救済の手】
【物理耐性】(8/1000)
【無属性耐性】(3/1000)
【火属性弱点】(16/100)
【水属性弱点】(59/100)
【風属性弱点】(9/100)
【土属性弱点】(10/100)
【光属性耐性】(90/1000)
【闇属性弱点】(1/100)
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おぉ、確かに空欄が救済の手に変わってる。
機械的な女性の声は魂のカケラと魔力の入手時、それとレベルアップの時だけなのかも。
思えば弱点スキルを習得した時も響かなかったしね。
救済の手はヒールタッチのように経験値がないスキルなのか。
それじゃ、効果は一定って事かな。
まずは救済の手を意識する。
…石像に変化なし。
ヒールタッチのように発動に時間がかかるのだろうか。
「…はい?」
ふと、動くモノが目に入ったので顔を上げると見えてしまったモノに思わず声が出た。
それは…白い手。
何も無い空中から生えた白い手がゆっくりと伸びて降りてきてる。
…え、幽霊?
石化した皇女の幽霊?
私の不敬な行為に怒って化けた?
思わず視線を降して石像、石化した皇女を見るが変化はない。
心なしか灰色の顔が嗤っているようにも見えた。
白い手はゆっくりと降りて皇女に触れる。
アカリ
Lv2(189/200)
HP57/57
【ヒールタッチ】
【救済の手】
【物理耐性】(8/1000)
【無属性耐性】(3/1000)
【火属性弱点】(16/100)
【水属性弱点】(59/100)
【風属性弱点】(9/100)
【土属性弱点】(10/100)
【光属性耐性】(90/1000)
【闇属性弱点】(1/100)




