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新生ゲーマー アカリ  作者: ゴーレム
12/43

第十二話 無体の皇帝

『…君!

アカリ君!』


いつものように始めようと片足を引きずっていた男性に触れてヒールタッチが発動するのを待っていたら遠くから私を呼ぶ声が聞こえて来た。


この声は…グラット、だろうか。


珍しい、というか今まで無かった。

この病院に来る前に正体を隠す一環で名前は呼ばないとグラット本人が言っていたのに。


《魂のカケラを入手しました》

《水属性の魔力を手に入れました》


タイミング良くヒールタッチが発動したので男性から離れて声のする方に向かう。


何かが走って来る音と私の名前を呼ぶ声が大きくなっていく。

本当に珍しい。

グラットはいつも落ち着いていた。

何かあったのかもしれない。


『アカリ、君。

ここに、居たの、か。

…すぐに来たまえ』


私が出口に近付くとグラットが走り込んで来た。

今の格好はグラットも知っているからすぐに分かったようだ。

ここまで走って来たのだろう。

顔を真っ赤にして息切れを起こしながらも私に着いてくるように言った。

よほど慌てていたのだろう、翻訳仮面を付けずに言っている。


私は黙ってグラットについて行く事にした。

その背後には護衛兼監視役の兵士もついて来ようとしたが、グラットから機密案件だと言われて部屋の方に戻って行った。


機密案件、か。

私が関わるようなものってやっぱ癒す事かな。


『アカリ君。

これから向かう場所では許可が出るまで一切話してはいかん。

何か言われればその通りにするのだ。

よいな?』


私は黙って頷いた。


グラットは私を引っ張ってここに来た時に乗ったマークとは別のモノに乗って違う場所に移動した。


そこには何十人という光沢のある黄色い甲冑を着た人達が居た。

隙間無く、黄色い集団がいる為、先には進めそうにない。


『連絡していた者を連れて参った!

通してくれ!』


ザワザワガチャガチャとして黄色い集団の言葉が聞き取り辛いが、すぐに道を開けた。

隙間が無いと思ったが、すんなり動けるぐらいにはあったようだ。


グラットはその道をどんどん走って行く。

その後を私も追いかける。


曲がって昇って曲がって降りて…

まるで迷路のような道順をグラットを見失わないように追いかける。

荒い息の音がはっきりと聞こえるが少し休んだ方が良いのではないだろうか。

…同じところをグルグル回っているのは気のせいだろうか。


と思ったらグラットが私の手を掴んで窓から外に飛び降りた。

は?

待って、待って、飛び降り自殺を強行するとか聞いて…


フワッと浮遊感を一瞬感じるも景色がガラリと変わりすぐに足が地に着く感触があった。


『疫病のグラット、参りました』


グラットは深く息を吐くとそれだけで息を整えたのか、落ち着いた様子で話した。

…グラットの二つ名はエキビョーだったのか。

この国には名前の前に二つ名があるらしい。

それを決めるのも元老院だそうだ。

何もかもを決めているのか、元老院。


目の前の光景は…ファンタジーよりも近未来方が近い。


全体的に暗く、淡く光る大量の太いパイプが床を覆い尽くしている。

白い幾何学模様の黒いローブを着た人達が数名居るが頭まですっぽり被ってこちらには一切顔を向けずグラットの言葉が聞こえていないのか無言で壁にある道具を操作している。


最奥には何本もパイプが絡まりあって歪な球体が設置されていた。


どうやら、この部屋には決まった道順の後、窓から飛び降りなければ来れないようだ。

どこの迷宮だと叫びたいが我慢する。


『アカリ君。

着いて来たまえ』


グラットはパイプを踏まないように右へ左へと飛び跳ねて最奥に向かう。

グラットの動きからパイプを踏んではいけないようだと分かり、私も慎重に進む。


パイプは無造作に所狭しと床に置かれており、踏まずに進むのは苦労した。


グラットは慣れているようでピョンピョンと先に進んでパイプの塊まで到着していた。

背中が曲がってはいるがグラットは身軽なようだ。


私がパイプの塊の近くまで辿り着くとパイプがウネウネと動き出し塊が解けていく。


パイプの塊の中には水槽があった。

水槽には緑色に濁っていて、中に何が入れられているのか確認ができない。


グラットは水槽に向かって顔を床に向けた状態で掌と膝をつく形で四つん這いになった。

これは確か、帝国に全てを捧げるという意味の姿勢だったはず。


『疫病のグラット。

待っていたぞ。

隣に居るのが(くだん)の来訪者か?』


『左様でございます』


突然、声が聞こえた。

グラットが顔を下に向けたまま答えると濁った水の中に人影がぼんやりと浮かび上がった。


『その者が娘を治せると申しておったな。

確か…魔力を発しない異なる能力だったか』


影はゆらゆらと揺れている。

娘を治す為に私は呼ばれたのだろうか。


『はい。

この者の能力で有れば皇女様の呪いも解く事ができるやもしれません』


呪い?

私は怪我や病気は治せてたけど呪いなんて一度も解いて無いと思うが…

それだけ珍しいのかもしれない。

やっぱり呪術とかあるのだろうか。

呪いの剣やら盾やらも存在するのだろうか。

呪われし姫。

うん、ファンタジーではよくある設定だ。

今回は姫じゃなくて皇女らしいけど。


『…アカリと名乗っていたな?

我が最愛の娘、イザベラを治せれば褒美をやろう。

だが、もし治せなかったら…』


水槽の人影は最後まで言わずにすーっと消えた。

…え、強制イベントなの?

失敗したら絶対何かする気だよね。

変化は求めていたけど。事態が急変すぎる。


私はグラットの方を見た。

ねぇ、私にしゃべらせずに勝手に決めるとか酷いと思うよ。


グラットは四つん這いのまま動かない。

人影は消えたけど、まだ居るのかもしれない。


部屋が先ほどよりも暗い。

淡く光っていたパイプがどんどん輝きを失っていく。


完全に光が消えるといきなり明かりが付いた。

しかし、そこは近未来な雰囲気の部屋ではなく、研究所にも似た真っ白な部屋に飛ばされていた。


白い部屋の中央には半透明のマットレスが敷かれており、その上には灰色の石像が横たわっていた。


よく見るとその石像は精巧に作られた少女の裸身像で、両手を胸の辺りで重ねて今にも声が聞こえてきそうなほど、苦悶な表情をしている。


…えっと、もしかしてこれが呪われた皇女なのだろうか。


呪いとは石化だったのか。

うん、ゲームでよくある状態異常だ。

問題はヒールタッチが発動するのかどうか。

私は半透明のマットレスに腰掛けて少女の髪に触れてみる。


…硬い。

触れて崩れるほど脆くないと分かったので両手で少女の顔に触れる。

後は脳内に声が響くのを待つだけだ。

アカリ

Lv2(189/200)

HP57/57

【ヒールタッチ】

【   】

【物理耐性】(8/1000)

【無属性耐性】(3/1000)

【火属性弱点】(16/100)

【水属性弱点】(59/100)

【風属性弱点】(9/100)

【土属性弱点】(10/100)

【光属性耐性】(90/1000)

【闇属性弱点】(1/100)

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