一人での客先 その1
前回の出張時はスーツで行ったが、暑かっただけじゃなくTPOに合っていなかったらしい。
自分はエンジニアと自己紹介したら、スーツで行く人は契約をする人と思われたらしい。
だから、今日はジーンズにポロシャツを着て部屋を出る。
時間に余裕があるので、フロントにあるコーヒーを飲む。
テーブルにはいくつか新聞がおいてあるが、日本の新聞がある。
しかも、誰かが読んだ形跡もない。
日付は、今日の新聞…
日本人が多く泊まるからホテルが用意しているのか?
利用しないと、今後置いてくれないかもしれないから、コーヒーを片手に新聞を読む。
なんて優雅なんだ…
いい頃合いになったので、駐車場に向かう。
外の日差しがものすごいて暑いが、日陰はかなり涼しい。
仕事は基本的にSun社の中に借りるブースで行う。
このホテルとSun社の距離は歩いて行ける距離だ。
しかし、シリコンバレーで歩いている人は駐車場から店までの間のみで街中を歩く人は基本いないから車で移動する。
車は日で焼かれているため、車が熱い。
俺は、エンジンをかけ、すぐにクーラーを付けるが、車には乗らずに、日陰に退避。
うーん。この時間を考えたら、歩いても着く時間は同じような気がする…
Sunのオフィスはガラス張りで、受付が見える。
受付の後ろはガラスで区切られた中庭が見える。
俺は、受付に印刷しておいたメールを見せながら、『芝浜Americaの長谷川健一です。Lisa Johnson Walkerさんをお願いします』と言う。
『ちょっと待って』と言って、受付の女性は内線電話をかけた。
受付の女性が話しているが、小声だし、速いのでわからない。
受話器を置くと、『あちらでお待ちください』と言うので、ソファーに座る。
ソファから外が見える。
街路樹が植えられており、広い。
シリコンバレーはハイテク戦争の中心地で殺伐としていると、勝手な想像をしていたが、とても穏やかだ。
奥から、Lisaが歩いてくるのが見えた。
俺は立ち上がり、Lisaと握手する。
『ようこそ、HASEGAWAさん』
『ここに来られて嬉しいです』
『こちらに住むのでしょ?』
『はい』
Lisaは受付からビジターカードを受け取り、俺に渡す。
『あなたの部屋に案内するわ』と言い、歩き出す。
俺はLisaについて歩く。
廊下を進んだ部屋に止まり、『ここよ。ネームプレートは用意中なの。あのワークステーションは自由に使っていいわ』と言う。
俺が、部屋の中に入る。2畳ほどの大きさで、廊下とは曇りガラスで仕切られていて、扉を閉めることができる個室だ。
『個室を使っていいのですか?』
『ここには個室しかないわ』
『広いですね』
『広くないわよ。ボスの部屋はここの倍の大きさはあるし、窓もあるわ。管理者権限のパスワードなどの情報とHASEGAWAさんのアカウントはこの紙に書いてあるわ。今日は車で来ているわよね?』
『もちろん』
『今から、バッチオフィスに行って、バッチを作ってね。バッチオフィスではこの紙を渡してね』と紙にバッチオフィスの住所が書いてある…
俺が地図を広げてバッチオフィスを探していると『ここよ』と指差した場所はかなり遠い…
『車で何分?』
『30分ね。今から行けば午前中に作ってもらえると思うわ。戻ってきたら、メールして』と言うと、出て行った。
280号線から85号に乗り換えて、101に乗るのか。
ペーパードライバーと言っても過言じゃない俺には過酷だな…
地図を見ながら運転はできないから、道順を頭に叩き込んで出発した。
なんとか着いてバッチオフィスで紙を出したら、すぐに写真撮影してその場で社員証を印刷して渡してくれる。
そこには、疲労困憊の俺の顔が写っていた。
俺は味は良いんだが、注文が面倒なTOGO’S Sandwichesに寄る。
サンドイッチという名前の店だが、Subwayと同じ感じのフランスパンに挟む形式だ。
「Welcome. What would you like to order?」と手のひらを上にして、こっちに来いと手を動かす。
男の店員は怖いんだよねぇ…
「I'd like a regular-sized turkey sandwich on wheat bread, to go, please.」と覚えている呪文を一気に唱える。
「Wheat is sold out.」
ん!? 呪文の詠唱には成功したけど、売り切れの反撃があるなんて!
うーん。パンの種類は他に何があるんだっけ?
少し、店員がイライラしているように見える。
確か、普通のフランスパンはWhiteだったような…
俺は恐る恐る「White Please.」と言うと店員は、サンドイッチを作り始める。
うーん。
McDonald’sにすればよかった…




