建物探訪
「ちょっと待ってください。もしかして、あれは俺が注文したものですか?」
俺は玄関に積み上げられている段ボール箱を指差した。
「確認します」
運転手は家の入り口に立つ男性と話をする。
「はい。ただし、まだ1つ届いていないそうです」
「開けていいですか?」
俺は段ボールを一つづつ開けた。
あった。
「費用は後で請求していただいて結構ですので、開けていいですか?」
「開けていただいて問題ありませんし、建築に必要なら経費です。ご自由に利用してください」
「ありがとうございます」
俺は段ボールからビニールに包まれた箱を取り出し、開けた。
「何それ? サングラス?」
「VRメガネ」
「VRメガネ?」
俺はメガネをかけた。
キャリブレーションをして周りを見渡す。
「すべての部屋、設備の案内をお願いします」
「承知しました」
俺たちは家の外周から見て回った。
「外が眩しいからサングラスなの?」
「サングラスに見えるけど、カメラで写した内容を見ているんだよ」
「へぇ。後で貸してね」
「建物のスキャンが終わったらな」
「スキャン?」
すべての部屋、設備を懐中電灯を照らしながら見回った。
残りは暖炉だけど、煙突の中はスキャンは無理だなと思っていると、裕香と孝也さんが入ってきた。
「遅かったわね」
「は?」
「やっと来たと言う意味よ」
俺は裕香を無視して、俺は孝也さんに向かって「孝也さんのおかげで楽に移動できました。ありがとうございます」と言った。
「建築をお願いしたのはこっちなんだから、当然だよ。中は見たかい?」
「ええ、隅々まで」
「遥翔、そのサングラスは何だい?」
「VRグラスです。建物をスキャンしました。見ます?」
俺はリビングにある大きなテレビを操作して、VRグラスと接続した。
テレビの真正面のソファには裕香が座っている。
ま、家主だから、いいんだけど…
「ビデオで写したものを何に利用しようと言うの?」
「これは、CG、コンピュータグラフィックだよ」
「あぁ。自由に中を動くことができるし、サイズを測ることもできる。例えば、こんなふうに」と俺は、家の中に木を置いて、木の周りを回る。
「へぇ。これを使えば、店のレイアウト変更なんかも事前に確かめられるのね」
「なるほどなぁ。これは使える」と孝也さんが言う。
俺は持ってきたパソコンを開き、プログラムを起動する。
段ボールの中から、Bluetoothビーコンの箱を開けて起動し、ブレスレットを取り出し、ペアリングする。
うん。問題ない。
Bluetoothビーコンをテーブルの上に置き、VR空間にBluetoothビーコンの位置を登録する。
「孝也さん、このブレスレットを持って部屋の中を移動してください」
「わかった」
孝也さんはテレビを見ながら、行ったり来たりジャンプしたりする。
孝也さんの動きが軌跡としてVR空間上に表示される。
「腕につけているので上下運動は記録していませんから、ジャンプは意味ないですよ。それに、歩く時にも腕は動くので、補正してありますが、もうすこし調整が必要ですね」
「孝也、一旦、外に出てよ」
「わかった」
孝也さんは裕香の意図がわかったようで、部屋をでる。
「Bluetoothビーコンの範囲を調べたいんだな」
「そうよ」
「だいたい10Mぐらいだ。孝也さんが石の壁の裏に回ったから、接続が切れたね。遮蔽物があると届きにくくなる」
孝也さんが戻ってきた。
「どうだった?」
「この部屋とちょっとぐらいまでは認識しました」
「ふーん。店だとお客にブレスレットをつけてもらうのは難しいから、店内カメラで場所を解析した方いいんじゃないか?」
「そうね。新しい店や、レイアウト変更で客の動きをシミュレーションできるわね。どうしてカメラにしなかったの?」
「カメラがある状態で生活したくないだろ?」
「そうだけど、何をする気?」
「数日、このブレスレットをつけて生活してくれ、その動きを解析して無駄な動きを抽出すれば、無駄な動きが少ないレイアウトをAIが出せるってことさ。初めてするからうまくいくかどうかわからんが」
「AIも使うのね。遥翔はもっと古風な建築ばかりと思っていたけど、ハイテクじゃない? じゃ、優希にもつけてもらわなきゃ」
「ハイテクって最近聞かないぞ… で、ゆうきって誰?」
「あれ? 自己紹介してなかったの? 秘書の優希よ」と運転手を見た。
「優希です。秘書ではなく、雑用係です」




