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記憶にある風景

「どうしたの?」

「あの3階の部屋に住んでいたと思う」


「長谷川さんの記憶よね?」

「理性では長谷川さんの記憶だとはわかるけど、自分の記憶なんだよなぁ」

 俺は、あまり変わってないなぁと思いながら周りを見渡した。


「車に戻ろう」

「そうね」

 翔(かける)はそこらじゅうにいるリスが駆け回ることに夢中だ。


「かわいいわね」

 俺は携帯で翔(かける)の写真を撮りまくった。

 車に戻るとすぐに出発だ。

 ハイウェイの101に戻り、サンフランシスコに向かう。


「ここを左に曲がれば、スタンフォード大だよ」

「スタンフォード大? パイプオルガンのコンサートだっけ?」


「そうそう。子供のチケットだったところ」

「行きたいけど、時間がないわよね?」


「いいですよ」と助手席の運転手が言う。

 101から、University Aveに入り、パロアルト市内に入る。

「もう少ししたら、ヤシが並ぶ道に入るよ」

 車を止めてもらった。


「芝生がすごく手入れされていて綺麗ね」

「スタンフォード大は私学だし、寄付金も多いからねぇ。この道の突き当たりがStanford Memorial Churchだよ。中に入ろう」

 入り口は暗いが、奥は丸い天井でそこは明るい。

 だれもいないから貸切状態だが、大きな声を出すのは不謹慎な気がする。


「ステンドグラスとフレスコ画がすごいわね」と紬が小声で言う。

「バチカンのフレスコ画をモチーフにしているけど、ガラスとエナメルのモザイク画だよ」


「へぇ。でも、パイプオルガンがないけど…」

「後ろを見てみろ」


「後ろ? え? あっ。すごい。コンサートに来たかったね」

「そうだね。でも、翔(かける)を連れてはこれないかな」

 教会の外に出ると、ウェディングドレスの女性がいた。


「結婚式かな? 綺麗ね」

「そうだね」

 俺は、こちらの写真を撮っている運転手が気になった。


「フーバータワーが有名だけど登るのは大変だし、戻ろうか」

「そうね」

 車に戻る。

 車は82をしばらく走り、101に戻るとサンフランシスコ湾が見えた。ここで怪鳥のフン攻撃を受けたなぁ。

 でっかい鳥が飛んでないかなぁと窓から空を見る。


「どうしたの?」

「いや、鳥がいないかなぁと思って…」


「鳥? 飛行機じゃないの?」

「サンフランシスコ空港がすぐそばだから飛行機が多いね」

 紬が少し不思議な顔をしたことに気づいたが、俺は空を見ていた。


「もう少ししたら、サンフランシスコ市内だよ」

「都会って感じね。正面は海ね」


「あの島がアルカトラズ島だよ」

「牢獄だっけ?」


「そう。サンフランシスコ湾は海流も早いし、かなりサメもいるらしいよ。もうちょっとしたら、ゴールデンゲートブリッジが見えるよ」

 俺たちは景色をしばらく楽しんだ。


 ナパ市内を抜けると、葡萄畑が見え始める。

「あれって、葡萄畑?」

「そうだな。右側はオーパスワンの葡萄畑だな」

 しばらく走ると、車は左に曲がり、停まった。


「到着しました」と言い、扉を開けてくれる。

 そこにはのどかな葡萄畑が広がっていた。


 紬は降りると、「涼しいというより、少し寒いわね」と言う。

 確かにサニーベイルより涼しい。

 寒暖差も大きいはずだ。


「石造りの建物は重厚感があるわね」と紬は建物の方を見て言った。

「そうだね。ワイナリーらしい建物だね」


「かなり、損傷が大きく、この建物の建て替えをお願いすることになっています」と運転手が言う。

「え? 建て替える? これを? いい味しているわよ」


「ご案内します」

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