渡米
孝也さんは日本に迎えに行けないということで、車をよこしてくれると言う。
俺は電車で行くと言ったが、空港で落ち合うが面倒で、空港も案内してくれるらしい。
空港って案内なんて必要か? と思ったが、孝也さんの指示に従う。
俺たちは用意をして、待ち合わせ時間の少し早めに玄関を出ると、既にレクサス?のバンが停まっていた。
そこには、黒いスーツに白い手袋の男性が立っている。
「おはようございます、佐藤様。お荷物はそちらでしょうか?」
「おはようございます。よろしくお願いします」
黒スーツの男性はドアを車のドアを開けてくれる。
そして、荷物を運び入れ、「家の戸締りは問題ないでしょうか? お忘れ物はありませんか?」と言う。
「はい」
「では、出発いたします」と言いながら、ゆっくりドアを閉める。
「ねぇ、この車って高級よね?」と紬が小声で言う。
「だろうな」
「裕香さんってお金持ちとは思っていたけど、すごいわね」
「思いつくままいろんな事業をしていることは知っていたが…」
俺は、高級シートもいいが、振動が少なく静かなのが気に入った。
「紬、この車だけど、すごく静かだし揺れないよな」
「そう言われれば、そうね」
「裕香が日頃、こういう車を乗っているとしたら、家もこのレベルを要求するのかな?」
「あっ。そうね…」
「どうした?」
「裕香さんって料理する?」
「しないだろうな」
「孝也さんが料理するの?」
「しないだろう」
「だとすると、生活動線って私たちの想像と違うんじゃない? 高級なのは必要なんだろうけど、要望する家はどういうものなんだろう?」
「そうだな… どういう生活を送っているのかを知る必要があるな」
「裕香さんにどんな生活をしているのか?って質問をするの?」
「裕香は感覚で生きているから、ヒアリングできるとは思えないな」
「じゃ、孝也さんに聞く? 遥翔は私の生活動線を把握している?」
「たぶん」
「そうかなぁ。うちのリフォームのこと覚えている?」
「紬がパントリーの壁壊すと言ったやつか?」
「そう。邪魔だったのよねぇ。あの時、遥翔はどうして壊すのか理解できなかったよね?」
「そうだったな」
「だとすると、孝也さんに聞いてもわからないんじゃない?」
「そっか裕香に聞くしかないが、裕香からまともに… ん? できるかも」
俺はパソコンを開いて検索を始める。
紬は俺が何か思いついたら、集中することを知っているので、放置してくれるからありがたい。
「ねぇ。着いたようよ」
いつの間にか車は停車していた。
パソコンをリュックに入れ、車を降りる。
羽田空港だろうが、ここはどこ?
ポーターが荷物を下ろし、車は出て行くが、運転していた男性はまだいる。
「こちらです」
「はい」
おれは、運転手?について歩いて行く。
保安検査場?でパスポートを提示するが、え?これで終わり?というぐらい簡素だ。
携帯で場所を確認すると、第3ターミナルの近くらしい。
運転手?がドアを開けると、プライベートジェットの駐機場で、その中の1機に近づく。
「天井が若干低いですので、お気をつけください」
「ありがとうございます」
俺たちは飛行機に乗り込むと誰もいない。
10席ほど取れそうなところに6席しかない。
「だれもいないね。どこに座ればいいんだろう?」
すると、運転手?が「そちらにお座りください」と言うのでそこに座る。
「まもなく出発しますので、シートベルトを締めてください」
ん? この運転手が運転するのか?と思うと、前の席に座った。
もしかして、5名までならOKと言っていたのはこう言うことだったのか…
離陸すると、俺はパソコンを開いて先ほどの案の精査を始めた。




