↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/72

目覚め(2回目)

 俺は公園のベンチに座っている。

 ふと、隣を見ると20代の男性が座っている。

 なぜか、よく知っている人だとはわかるが、なぜ隣に座っているのかわからない。


「もうそろそろ、戻るべきじゃないかな?」と20代の男性が言う。

 戻る?


「あぁ。本来あるべき場所だよ」

 本来の場所…


「俺は、アメリカに出向すべきじゃなかった。アメリカに出向しなかったら、翔(しょう)を失うことはなかったのではないか? と後悔している。もし、翔(しょう)を失うことが運命であったとしても、そばにいることができたはずだ」

 アメリカに行かない選択肢はなかったと言っていいし、今後の会社での立ち位置として、拒否すべきではないとも思っていた。


「その通りだ。だが、そんなことは些細なことなんだよ。重要じゃない。今の君にはわかるだろ?」

 もちろんわかる。

 わかっているつもりだ。


「まだ、真の意味では理解できていない。俺は30年経ってもまだ後悔している。優佳も後悔している。一生、悔やむだろう」

 30年? ふと、隣に座っている男を見ると、50代に老けている。

 誰だっけ?


「俺は建築については素人だが、君の『土地に馴染む建築』には可能性があると思う。建築事務所を立ち上げたばかりで意気込んでいるのこともわかる」

『土地に馴染む建築』…

『土地に馴染む建築』そう、俺が目指す建築… それを実現するための事務所。


「それを支えているのは誰だ? 君は誰のために頑張っているんだ?」

 支えている…

 俺は20代の女性の顔が頭に浮かんだ。

 紬(つむぎ)…

 そして、翔(かける)の顔が浮かんだ。


「君と俺は違う。この先、どうなるのかはわからない。だが、君には優先順位を間違って欲しくない。優先順位を間違うな」

 優先順位…


「時間だ」

 時間?


「君はこんな場所にいてはならない。右に行きなさい」

 目の前に別れ道が現れた。

 俺が立ち上がって別れ道に近づき、振り返ると50代の男性もベンチもない。


 俺は、50代の男性が言った内容が正しいと思える。

「右に行くか…」

 俺が、右の道に踏み出すと、左の道が消えた。

 右手に感触があり、右手を見ると手を繋いでいる。

 俺が手をつないでいるのは紬(つむぎ)だ。

 紬は抱っこ紐をつけており、翔(かける)がいる。

 翔(かける)は俺に向かって手を伸ばして何か言っている。

 俺は左手で翔(かける)の手を掴もうと動かすと、少しめまいがして目を閉じた。


 目を開けると、眩しい…

 誰かが俺を覗き込んでいる?

 瞬きを繰り返すと、女性が見えた。

 あっ。紬… 紬が泣いている。


「紬(つむぎ)? えっ、あっ、紬(つむぎ)さん。ごめん」

 抱っこ紐の中の翔(かける)が何やら訴えかけたいのか、何か言っている。

 俺は翔(かける)を抱っこしたくて体を起こそうとするが、うまく動かない。


「急に動かないでください」と糸井先生の声がする。

 ここは病室?


「落ち着いてください」と糸井先生が紬に向かって言う。

 俺は、右手に力を入れて紬の手を握る。

 紬は右手を見て、俺の顔を見てやっと落ち着いたようだ。


「診察をするので、廊下でお待ちください」

「はい…」

 俺は、診察より紬と話をしたかったが、糸井先生は診察を始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。