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マッサージよりしんどいこと

 マッサージのおかげか急激に動かせるようになってきた。

 体の姿勢を少し変えることができるし、スプーンでご飯を食べることができる。


 起きている時間が普通に近づいているのが自分でもわかる。

 ここには、テレビもパソコンもないから、情報がない。


 だから、色々と考えてしまう。

 現在の俺の体は、頭と右足に怪我がある。

 それもかなり深い怪我だと思う。

 打撲はあるが、擦り傷も火傷のようなものはない。


 かなりの衝撃を受けたと考えられる。

 一番可能性が高いのは自動車事故だな。

 轢かれたら擦り傷があると思うがないから、自動車に乗っている状態で事故にあったのかな。


 俺が運転手と仮定すると、右足に怪我があるということは横からぶつけられたのか?

 頭に怪我があるということは横転事故だろうが、車がオープンカーの可能性が低いだろうから、相当な大事故だったのだろう。


 何日眠っていたのかわからないが、新聞に出ている可能性がある。

 俺は、眠っていた間の新聞をもらえないか?と看護師に頼んだが、ないらしい。

 テレビやパソコンを要求したが、体力の回復が先だからダメと言われた。


 これは、俺に事故の記録を見せたく無いと考えるのが自然だろう。

 大事故から目覚めたら、家族がお見舞いに来ると思うが、誰も来ない。

 昨日、糸井先生が来た時に後ろいた女性が俺の家族かと思ったが、何も声をかけてこなかったから、違うだろう。


 では、なぜ家族がこない? いくつか仮説を考えるか…

 仮説1:事故で家族が一緒に乗っていて、家族も入院中か死亡

 これは、悲惨だなぁ。


 仮説2:俺に家族はいない

 仮説1よりましだが、寂しいなぁ。


 仮説3:俺は犯罪者で逃亡中に事故?

 うーん。これがマシ? いや、犯罪者はダメだろ。


 他の仮説は… 思いつかんと思っていると、ドアがノックされた。


「はい」

 糸井先生が入ってきた。


「調子はどうですか?」

「だいぶマシになってきました」


「思い出したことはありますか?」

「いいえ」


「そうですか… 今日はいくつか写真をお見せします」

 糸井先生がテーブルに液晶だけの端末を置いた。

 うーん。なんだ?このデバイスは… 表示が綺麗だな。

 XGAより解像度が高いような気がする。

 ものすごく値段が高い超高級デバイスだろうなぁ。

 糸井先生は普段使いしているからか、お金持ちだからか、雑じゃないけど、超大切に扱っていない。

 糸井先生は画面を触っていたから、タッチセンサーか? 押し込んでいる感じがなかったから、静電容量方式か?


「これから、お見せする写真で何か思い出したものがあれば、何を思い出したのか言ってください」

「わかりました」


 糸井先生は、人物や風景の写真などを表示する。

「この写真の女性は昨日、ここに来ましたよね?」

「はい。それ以外に何か思い出しましたか?」


「いいえ」

「順番に見て、思い出したことを言ってください」


「はい」

 うーん。写真より、そのデバイスをじっくり見たい!

 おー。指を右にスライドすると画面が切り替わるのか… かなりいい加減に指を動かしているけど、画面の全面が操作できる場所!?

 反応もいいし、すごくないか?


「どうしました? 思い出したことはないですか? 感想でもいいです」

「え? あっ。赤ちゃん可愛いっすね。…知らない人です。…この女性は見たような気がします。…公園? …知らない場所です。…前に出てきた人ですよね? …知らない人です」

 色々な人物、場所を何十枚と見せられる。

 いつまで続く?


「…あのぅ」

「なんでしょうか?」


「これ、すべて私に関係ある写真ですか?」

「関係ない写真も含まれています」

 はぁ。先が長そうだ…


「そうですか…」

「続けてください」

 マッサージより地味にしんどいぞ。

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