リハビリ開始
今までの寝不足が解消されたのか、目はすっきり見えている。
以前のことは頭に白いモヤがかかっているような気分で、すっきりしないが、メガネをかけていたようなきがするけど、今はメガネなしで目はよく見える。
すっきり見えるのに、頭に白いモヤというのが、気持ち悪い。
問題は手足だ。動かすと痛い。
看護師さんが来て、手足を動かしてくれる。
リハビリに必須だということはわかるが、手加減をしてくれ!と言いたくなるぐらい、痛い。
「ゆっくりしますね。痛かったら、言ってくださいね」と言うが、とんでもない。
激痛の拷問だ。
俺が学生で電車に乗っていた時、電車が揺れ、ヒールを履いた女性に足を踏まれたことがあった。
女性は「あっ、ごめんなさい。大丈夫?」というが、俺は痛すぎて何も言えない…
それを女性は大丈夫と思って、電車を降りてしまった。
俺は、やっとの思いで靴を脱ぐと、爪が割れて靴下は血だらけだったことを思い出した。
それに匹敵する痛さだ。
今も痛すぎて、「うっ」とうめくことができるかどうかなので、リハビリを辞めてくれない。
声が出ないのであれば、手を動かせばいいのかもしれないが、まだまだ自由には程遠いので手で合図も送れない。
だからか、「我慢強いですね。リハビリは大変ですが、頑張りましょうね」と言って看護師さんは帰っていく。
俺は、看護師さんから見ると、リハビリを必死で耐え、できるだけ早い回復を願っている患者だと思われているようだ…
リハビリが必要なのはわかるが、もう少し手加減してほしい。
次の日も看護師さんが来た。
病室の扉を開けると、笑顔で「今日もリハビリです。固まらないうちに実施しないといけませんので、痛いかもしれませんが、頑張りましょう」と言われると、俺は「…はい。お願いします」としか言えない。
ということで、今日も俺はたっぷり、拷問をうける…
毎日これは辛いなぁと考えていると、ドアがノックされ、糸井先生が入ってきた。
後ろについてくる人は?
「お加減いかがですか?」
「よくはないです…」と俺は後ろの人を紹介してくれるのかな? 見覚えがあるようなきがするけど… 誰だろう?と考えながら答える。
「良くないとは、気分が悪いとか、どこか痛いということですか?」
え? うーん。思わず『よくはない』と答えちゃったなぁ。
「気分は普通です。痛い箇所がわからないぐらい痛いです」
俺は、リハビリを思い出しながら答えた。
「看護師がマッサージをしたと思いますが、手足はどうですか? 動きますか?」
マッサージ? あれ? マッサージだったのか!?
「…少しは…」
あれが、マッサージだとすると、もう少しお手柔らかにお願いするのが難しいな。
どう伝えようかな?
ん? 後ろの女性はじっと俺を心配そうにみているなぁ。
落ち着いた雰囲気があるから、学生という感じじゃない。
モテるだろうなぁ。
あんな綺麗系の人が俺との関係者ということは考えられないし、白衣も着ていないし、どういう人なんだろう…
「そうですか。マッサージをしてリハビリを頑張りましょう」
糸井先生に声をかけられて思わず、「…はい」と答えてしまった。
これじゃ、今から『お手柔らかにお願いします』とは言えない。
「何か思い出したことはありますか?」
「いいえ」
「何か思い出したり、気になったことがあれば、呼び出してください」
「わかりました」
「では、また参ります」
「ありがとうございました」
はぁ。マッサージを手加減してくれとは言えなかった…
後ろの人が気になる。
何の用事で病室に入ってきたのだろう?




