痛み
「…ねぇ、聞いてる?」
「え? ごめん」
「どうしたの調子悪いの?」
「少しね」
火災報知器の誤報で逃げてから、何か調子が悪い。
少し気分が悪いし、頭も痛い。
それに、足が地についていないというか、ふわふわしている。
何かがおかしい。
「熱でもあるの?」
「熱はないと思う。ちょっと気分がわるいだけ」
「病院に行ったら?」
「病院かぁ 今の症状を英語で説明するのかぁ」
「面倒がらずに、病院に行きなさいよ。病院のかかり方の資料をもらっていたじゃない」
アメリカは個人で保険を入るが、会社が入ってくれているので、そのカードを持っている。
それがあれば、系列の病院なら診療してもらえる。
系列が違えば診療してもらえないから、系列を調べるところから始めないといけない。
「ちょっと気分がわるいだけだから… 悪くなりそうだったら、行くよ」
「わかったわ」
優佳との俺は電話を切って、コンロの火をつけ、お湯を沸かす。
うーん。頭が痛いな。
すると、目の前の映像が白と黒に高速で切り替わる。
これは、まずいかも… コンロの火を消さないと… 俺は手を伸ばして火を消すと同時に崩れ落ちた。
目を開けると、白い…
見えていないのではないと思うが、白しかない。
手を動かそうとしても、動かない。
頭を動かすと、ズキズキして動かせない。
やっと、頭を傾けると、俺の腕が見えた。
ワイシャツ? それにスーツのズボンを履いている?
アメリカにスーツは持ってきていない。
どうして? と思ったら、また真っ白になった。
どのくらい時間が経ったのかわからないが、鼓動は早く、深く呼吸ができない。
胸が痛い。
信じられない! 嘘だ! 嘘に決まっている! そんなはずはない…
誰か嘘と言ってくれ!
また、真っ白になった。
気がつくと、俺の家の玄関の扉に手をかけるが、開けて家に入れない俺が見える。
開けると、本当になってしまう気がするので、開けられないことがわかる。
俺は、どのくらい扉を開けられずに経っていたのだろうか…
中で微かな音が聞こえた気がしたので、思わず扉を開ける。
リビングの扉を開けると、俺に気づかず呆然とソファに落ちるように座っている優佳が見えた。
目の前の俺は、近づけは壊れてしまいそうな優佳にゆっくり近づく。
あぁ。嘘じゃなく、現実なんだという感覚が俺に伝わる。
目の前の俺は、優佳を壊さないように肩を抱き、「ごめんな」と言う。
優佳を抱いている俺から、なぜ俺はアメリカに行ったんだ… 俺は家族を守れなかった… ごめん と後悔の気持ちが俺に襲ってくる。
俺は、翔を失ったんだ…
優佳は翔とお母さんを同時に失ったんだ。
一番、優佳を支えなきゃいけない時に俺はそばにいなかった…
すると、優佳が「ごめんね… 翔は…」と言いかけたが、ソファの俺は「言わなくていい。俺が悪い」と言い。
強く抱きしめる。
優佳は静かに涙を流した。
優佳はやっと泣けたのかもしれない…
俺は、2人から目を離すことができず、いつまでのこの光景を見ていた。




