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閑話:再手術

 私は診察室をノックして、「失礼します」といいドアを開ける。

 遥翔を執刀してくださった里田先生と糸井先生が待っていた。

「佐藤さん、お座りください」

「はい」


「ご主人の寝言の原因を糸井先生と検討しました。ご主人の脳に血の塊が脳を圧迫していることが原因が考えられます」

 黒田先生はPCに映像を表示した。


「前回の手術でご主人の砕けた頭蓋骨の一部を除去と、凝固した血を取り除きました。これが、現在のMRIです。この白い部分が血が凝固している部分で脳を圧迫しているようです。かなり広範囲で凝固しており、このままでは脳が圧迫が進み、壊死します」

「壊死…」


「このまま放置すればと言う意味です」

「長谷川さんの血がまだ残っていたのでしょうか?」


「前回の手術で凝固した血は取り除きました。今回の凝固はご主人の血が固まったと考えられますが、除去をして確認してみなければわかりません」

「…除去ということは、再手術ですか?」

 私は不安で、右手で左手を強く握った。


「はい。血の凝固を防ぐ薬は前回の手術後利用しています。これ以上増やすことはできませんので、手術しかありません。凝固した血を取り除くことで、脳の圧迫が解消され、ご主人が回復する可能性がありますが、リスクはあります」

「リスクですか…」


「凝固した血はご主人の脳を圧迫しているため、それを取り除くことによる脳へのダメージがゼロではありません」

「脳への圧迫がなくなれば、遥翔は目覚めるのでしょうか?」


「わかりません。手術をしなければ悪化を食い止めることはできません」

「…わかりました」


「では、手術の同意書へのサインをお願いします」

 同意書が私の前に出され、ペンが置かれた。

 私は握っていた左手を放すと、右手が汗ばんでいることがわかる。

 私はハンカチを握り、汗を拭ってから、ペンを取り、震えないようにサインした。


「ありがとうございます。手術は明日の9:00開始となっています」

 明日…

「…はい。よろしくお願いします」



「…紬(つむぎ)!」

「え? お母さん? どうして病院に?」


「病院? 何言っているの? 紬、大丈夫? 顔色が悪いわよ」

 周りを見渡すと、私はリビングに座っていたようだ。

 いつの間にか家に帰っていたようだが、覚えていない。


「お水を飲みなさい」とコップを差し出してくれた。

 私はコップを受け取り、半分ほど飲む。

 翔(かける)! 私は周りを見ると、ベビーベットで翔(かける)が寝ているのを見つけてホッとする。


「翔(かける)君と買い物に行って、帰ってきたら紬がいたからびっくりしたわよ。病院はもっと時間がかかると思っていたわ。どうしたの? 何かあった?」

 私は母に病院での出来事を話した。

 母とお義母様に相談し、母に翔(かける)を預かってもらい、私とお義母様が病院に行くことになった。


 次の日、予定通り遥翔の手術が開始され、私とお義母様は待合室で手術の終わりを待つ。

 夕方になってもまだ終わらない… 何かあったらどうしよう…

 お義母様がいてくれて心強い。


 看護師さんが、待合室に入ってきて「佐藤様のご家族ですね。こちらに」と言われ、診察室に案内される。

 診察室に入ると、里田先生がいた。

「お座りください」

「はい」


「佐藤さんの手術は終わりました。佐藤さんは現在、集中治療室にいます」

「手術はどうだったのでしょうか?」


「凝固した血液が複数箇所ありました。それを取り除く際に出血がありました。そのため、輸血を実施しました。手術の結果、脳の腫れが発生すると思われます。現在は経過観察になります。今日はお会いになることはできません」

 今日は帰れということね…

「わかりました。ありがとうございました」

 私とお義母様は診察室を後にした。

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