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避難

 Sun社の俺のブースでコーディングをしていると、突然ブーブーブーとけたたましい音がした。

 ブースから顔を出すと、何人か出てきている。


 壁の上側に赤いプラスティックから明るい光が点滅している。

 金属のジリリリという音じゃないけど… どう考えても警報だよね?

 火災訓練? それとも本物の火事?


 ThinkPadを閉じて貴重品をまとめてブースを出る。

 あれ? ブースを出たところの通路が防火壁?で閉じられている。

 いつも通る通路が防火壁で閉じられただけで、まったく見慣れないオフィスに早変わりだ。

 閉まった防火壁は押しても動かないし、引けるような取っ手もない。

 仕方がないので、反対側に進む。


 実際に火災が起きていないのか、煙は入ってきていないのが救いだ…

 通路の突き当たりを曲がると、また防火壁だ。

 今度は防火屁に小さい扉があり、押すと開くようだ。

 俺は、その扉を開けて通り抜ける。

 あっ、電気が非常灯だけになった。

 ブーブーブーとけたたましい音は継続して鳴っていて、フラッシュライトが点滅しているので、コマ送りの世界を見ているようだ。


 左の防火壁の小さい扉は押しても引いても開かない。

 右の防火壁の小さい扉を押すと開く。

 Sun社の個人毎に部屋を与えているが、各部屋は同じ作りで場所の見分けがつかない。

 それに、いつもと違う道順で逃げるため、方向感覚を失った。


 まずいな…

 えっと、確か押して通れるのは外に出る正しい道順のはずだけど… これって、万国共通?

 万国共通でなくても、アメリカで同じであって欲しい。

 でも、アパートの外に出る扉は内開きなんだよなぁ。

 それに、ブースの扉も内開き… 日本も家の中は内開きか?

 うーん。例外はあるものだけど。


 そもそも防火壁の小さい扉を通っているけど、避難用であっているのか?

 消防隊員が消化活動するための道だったら… 奥に向かっていることにならないか?


 遊園地のミラーハウスに入った気分だ…

 どこに向かうのが正しいのかわからないが、非常扉の小さな扉を押すしか道はない。

 ブーブーブーとけたたましい音と、フラッシュライトが点滅でイライラする。


 俺は、フラッシュライトの点滅で見にくい道を歩き、防火壁の小さな扉を開く。

 これは、何個目の防火扉だ?

 どの防火壁の小さい扉を開いても、Sun社の人に出会わない。

 全員避難して俺だけが彷徨っているのか?


 また、防火壁か… 小さい扉を触ると熱い。

 これって開けちゃダメなやつじゃないのか? 開けたら爆発するというバック何ちゃらが起きる?


 俺は熱くない防火壁を探す。

 防火壁を見つけては、触るが熱い…

 これを何度繰り返したかわからない。疲れた。

 体が鉛のように重い。


 クソ、俺は翔(かける)に会うんだ! 翔(かける)? いや、翔(しょう)に会うんだ!

 俺は、鉛のような体を動かす。

 また、防火壁… これは熱くない! 俺は防火壁の小さな扉を通る。

 通れる防火壁がある! 俺は翔(しょう)に会う!


 すると、防火壁じゃない鉄の扉があり、その上にExitと緑のランプがついている。

 俺は、その鉄の扉を開けると眩しい光が俺の顔に当たる。

 不思議と鉛のような体の重たさはない。

 助かった…


 光が眩しくて、目を細めながら周りを見渡す。

 駐車場に繋がる道?


 俺は玄関の方に向かって歩くと、Sun社の社員が外にいっぱいいた。

『KENICHI、今出社?』と俺を見つけたLisaが言う。

「Non」とだけ答えた。


 消防が中をチェックし、誤誤報と発表されみんな部屋に戻る…

 でも防火壁は熱かった。

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