↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/72

閑話:事故

 長谷川さんは目を伏せる。

「わかりました… 健一との私の間に翔(しょう)という子供がいました」

 翔(しょう)君が亡くなった話は何年経っても辛いよね…

 その気持ちを考えると気が重い。


「健一がアメリカに赴任しているので、翔(しょう)の子育てを私がすべてすることになり、私はかなり疲弊していました」

 長谷川さんの記録では優佳さんが泣き言一つ書いていない…

 心配かけないように、していたのね。


「私は母に助けを求めました。そのおかげで精神的な余裕ができました。健一が赴任して1年経った時です。母と翔(しょう)が散歩に出かけているときに、車が突っ込んできたそうです。その日から健一の記録は止まりました」

 私にも翔(かける)がいるから、失う恐ろしさがわかる。

 長谷川さんにかける言葉はない…


「もう、20年以上も前の話です」

 年数で割り切れる話はではないと思う。


「私と健一の間で翔(しょう)の話をすることはなくなりました。でも、佐藤さんのところに翔(しょう)と同じ漢字の翔(かける)君がいることで、久しぶりに健一と翔(しょう)の話ができるようになりました。私たちは翔(かける)君と出会えたことを感謝していたのです」

 悲しみが深すぎるから、20年以上も夫婦の間でも話すこともできなかったのね。


「健一は佐藤さんとの打ち合わせを非常に楽しみにしていました。だから、翔(しょう)が生まれてからの話をしているかと思ったのですが、違ったのですね」

 私は長谷川さんにかける言葉がない…


「長谷川さん、旦那様は翔(しょう)君が亡くなった報告を受けたときはどうだったのでしょうか?」

「糸井先生!」

 私は思わず、糸井先生の話を止めた。


「佐藤さん、これは遥翔さんの今後に関わる可能性がある話です」

「遥翔の?」


「そうです。理由はわかりませんが、遥翔さんは長谷川健一さんの記録を再現したような寝言を言っています。順序も非常に正確です」

「はい…」


「遥翔さんは鼻血を出しました。暑さや寒さを感じたような変化もあります」

 ということは…


「もしかして…」

「そうです。遥翔さんは翔(しょう)君の事故を聞いた状態の衝撃を体験するかもしれません」

 私は翔(かける)が亡くなったことを聞かされると考えると、恐ろしい…


「糸井先生、健一に知らせたのは私の父で、私は詳しく知らないのです。その時私はこの状況を受け止められない状態で何も考えらませんでした。事故で遺体の損傷が激しかったため、私の父と健一さんのご両親が相談した結果、遥翔の帰りを待たずにお葬式をしたそうです」

「そうですか… お父様にその時のことをお伺いすることはできますか?」


「父は他界しています」

「健一さんのご両親は?」


「連絡が取れますが、老人ホームにいます。義両親とも健一の葬儀に出席できないぐらい記憶が…」

「では、わかりませんね」


「はい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。