Blue
会議で動いているところを見たいというので、俺のブースに集まることになった。
途中のカフェでそれぞれコーヒーをカップに入れた。
俺のブースで『日本のお土産です。食べてみてください』と言いながら、羊羹を出す。
『重いな』
『食べる? これが食べ物?』
『黒いぞ、大丈夫か?』
と感想が出るが、食べない。
もしかして食べ方がわからないのか?
仕方がないので羊羹のビニールを剥がし食べる。
Jeffが同じようにビニールを剥がし、恐る恐る食べるのを全員が眺める。
『このジェリーは甘いな』
『そう。甘いRed Bean Pastだ』
他のメンバもビニールを剥がし、食べ始める。
『うん。俺は好き』
『まぁまぁね』
『…』
Michaelは全部一気に食べ、ビニールをゴミ箱に捨てる。
美味しいから一気に食べたというより、俺に気を遣って食べ切ったのかな…
ワークステーションでデモを行い、実行している画面のソースコードの新旧を比較を見せる。
みんなの意見を聞きながら、俺はemacsでコードを修正し、コンパイルして実行する。
また、修正…と繰り返す。
『フランス語に切り替えたい場合はどうするの?』
『フランス語の用語ファイルを用意すればいいだろ?』
『自動で切り替えられないじゃん』
『Kenichi、ワークステーションのアプリは英語と日本語はどうやって切り替えているっだ?』
『環境変数のLANGだよ』
『じゃ、それでいいじゃん。Javaで環境変数取得できるし』
『Windowsは?』
『…』
『同じようなのがあるんじゃない?』
『あっ。こんどの週末にスタンフォード大でオルガンコンサートがあるんだけど、行かない? Kenichiは知らないでしょ?』
『知らない』
『いいねぇ。スタンフォード大のどこで開催されるんだ?』とJeffが言う。
『Memorial Churchよ』
『知らないよ』とAnilが言う。
俺も知らん。
『Palo Alto市街から行けば、椰子の木が並んでいる道があるでしょ? その突き当たり』
『あれか。何時開催?』
それでわかるのか?
『6時。じゃ、金曜日の6時にMemorial Churchね』
俺の疑問を挟むまもなく、解散してしまった…
パロアルトって言ってたよな?
パロアルト!? パロアルトってパロアルト研究所? ゼロックス?
GUI、マウス、オブジェクト指向、Ethernetができたんだよなぁ。
今のコンピュータの基本のすべて一ヶ所でできたのがすごいよなぁ。
俺は、AAAの地図を調べながら、Palo Altoを調べた。
当日、俺は早めに出発し、パロアルト研究所を外から探索し、Palm Driveを通って突き当たりに車を止めた。
歩いていると、LisaとJeffが居た。
『Kenichi、あそこでチケットを買ってね』と数人が並んでいる場所を指差した。
『わかった』
俺も並ふと、机のところの20$と書いている張り紙が見えた。
俺の順番になり、俺は20$を渡し、『1人』と言う。
『IDはありますか?』
IDか… 運転免許証だろうけど、まだ仮の紙なんだよなぁ。
出したくない…
『持っていません』と言うと、チケットと10$を渡された。
は? 20$じゃないのか?と思いながらLisa達の場所に戻る。
『買った?』
俺はチケットを見せる。
Jeffがゲラゲラ笑って、チケットを見せてくれた。
Jeffのチケットは緑で、俺のチケットは青だ…
Lisaのチケットも緑…
Anilも並んでチケットを買っていたようで、チケット売り場の方からAnilが歩いてきているのが見えた。
その手には緑のチケット…
学生料金? 子供料金? ということ!? 子持ちの俺が?
帰るわけにはいかないので、チケットを渡して教会に入るが、入り口の人も何も言わずに俺の青のチケットをもぎる。
うーん。俺は子供認定かよと落ち込んだが、ステンドグラスを夕陽が通る光景を見ると些細な気がした。
パイプオルガンの音色は最高とは言い難いが、幻想的な空間に満足だ。
俺はDonationの箱があったので、10$を入れて教会を出た。
コンサートが終わる頃は日がくれており、ライトアップされた教会も美しい。
俺は、Lisaに誘ってくれたことの礼を言い、別れた。
その後、しばらくの間、俺はJeffからBlueと呼ばれることになる…




