インドは偉大
日本は電話してもちょうどいい時間なので、俺は電話する。
「もしもし。おはよう? 早いわね」
「こんにちは? まぁねちょっとね」
朝早いのは、陪審員招集の断りの文面を書いていたからだけど、優佳には問題なかったことが確定してから話そう。
「時差ボケ?」
「変な時間に寝たから、そうなのかも」
「ふふ。飛行機はどうだった?」
「二階席で揺れて気持ち悪いし、鼻血はでるし最悪だったよ」
「へぇ。面白そうね。記録しておいてね」
「面白くないよ」
「ま、そう言わず」
「あっ。ハイウェイで怪鳥とニアミスしたみたいだよ」
「会長とニアミス? 芝浜Americaの会長?」
「その会長じゃなく、鳥の怪鳥だよ」
「鳥? 怪鳥に襲われかけたってこと?」
「フン攻撃を受けた…」
「なんだぁ、フンか」
「えー。怪鳥のフンだぜ。デカいから攻撃力もすごいんだぜ」
「アメリカに戻ってすぐに面白体験できるなんて、ついているわね」
「どこが? それより翔は俺がいなくて寂しくしている?」
「積み木で遊んでいるわ」
「お土産で遊んでくれるのは嬉しいけど、俺がいないことは寂しがってくれないのか…」
「翔、パパよ」
「翔、聞こえるかい?」
「…」
「『うー』だって」
「そっか。『うー』か。なるほど」
「会社に行く準備は終わった?」
「これから」
「じゃ、頑張ってね。また電話して」
「あぁ。電話する」
俺は受話器を置いて、早めだが、出社の準備をする。
今日はJeff達と会議だから、早めに行って日本が用意した英語資料を見返しをしなきゃ…
Sun社に着くと、大量に届いているメールを片付けていると、開けているドアをノックされた。
俺は振り向くと、Jeffが『会議に行くぞ』と言う。
『早くないか?』
『ワークステーションの時間を見ろよ』とニヤニヤしている。
時間は10時…
『気づかなかったよ』
『冬時間に昨日切り替わったんだよ』
『昨日?』
『あぁ。昨晩、1時間早くなった』
『11月か!』
11月の最初の日曜日に変わるんだった。忘れてた。
早く起きていてよかった。
『そうだ。行くぞ』
俺は、机の上の資料とThinPadを抱えてJeffの後を追った。
『Michaelは来ていないのか?』
『遅れるって。冬時間を忘れていたみたい』とLisaが言う。
『Kenichi、説明してくれ』
俺は、印刷しておいた紙を配った。
『日本語化するには、フォントがSunselifでなければならない。他のフォントだと日本語は表示できない』と図示しながら説明する。
『コードの中に日本を書いたのか? どうやって?』
どうやって? 俺はThinkPadを開いてエディタでJavaのコード断片を書き、日本語を書く。
『おー。俺のワークステーションでも日本語は入力できるのか?』
『日本語パッケージを入れると入力できる』
『これだと、私たちのコードを毎回、日本語に変換するということ? コードは変化するわよ』
『Lisa、その通り。だから、ローカライズするには、Javaに共通的な国際化ライブラリが必要になるし、全員がそのルールで記載する必要がある』
『それって、面倒じゃないか?』といつの間にか現れていたMichaelが言う。
『全員が英語を読めるわけじゃない。普及させるには国際化は必要だよ』とインド人のAnilが言う。
『わかったよ。Kenichi、この画面は日本語にした画面なんだろ? どうして数字は日本語にしていないんだ?』
数字!? 確かに算用数字はそのままだ。
漢字の数字もあるけど、説明がややこしいな。
うーん。どうしよう… と悩んでいると…
『数字は世界共通だよ』とインド人のAnilが言うとみんなが納得する。
納得したからいいか…




