帰国後の長い夜
アパートの鍵と車の鍵を取り、部屋を出る。
すると、向かいの部屋の扉が開いたので「Hi」と言わなきゃと思っていたら、でかいレトリバーが2匹出てきた。
ちょっと迫力があり、後ろにさがった。
すぐに住人の男性が出てきたが、それもデカい…
圧倒されている俺を見て、男性は「Hi」とだけ言って犬と一緒に階段を降りていく。
俺は男性と犬が目の前から消えて、犬嫌いと思われたかな。
犬は大好きなんだけど…
ん? このアパートはペット禁止だったような気がするけど、こっそり飼っているのか?
あんな大きいのいつかバレるだろ?
それとも、オーナーだからOKとか?
ドアの鍵を閉めようと思ったが、寒っ!
部屋に戻り、クローゼットからパーカーを取り出し、着る。
車に乗ると、クーラーになっているが暖房に切り替える。
向かいに住んでいる住人はTシャツに短パンにサンダルだったような気がするけど、寒くないのか?
車を走らせ、スーパーに行く。
カートを取り、商品を入れていく。
ハーフガロンのオレンジジュース、ベーグル、卵… spinach、tomato、eggplant、cod… codはなんか新鮮そうに見えない。他の魚はサーモン… Codでいいか。
店員にハーフポンドのCodを注文する。
あっ。玉ねぎの山が高くなってる…
スーパーに毎日のように来ると、玉ねぎの山が徐々に低くなっていた。
日本出張の間に玉ねぎの山が復活している。
うーん。アメリカ人の店員はかなりいい加減だから、古いのを上になんてしていないような気がする。
すると、下の玉ねぎはものすごく古くない?
財布を開けると、ドルの手持ちが少ない。
レジで「20$ cashback, please. 」と言い、デビットカードを出し、20$と商品を受け取り出る。
商品代金と20$の合計金額が口座から引き落とされる。
24時間手数料無料でお金を引き出せるのはいいよねぇ。
日本でどうしてできないんだろう…
あっそうだ。20$はポケットにそのまま入れる。
キャッシュバックは40$にしておけばよかった…
襲われた時に出せるようにしておいた方がいいと言われたけど、そんな目にあったことはない。
たまに浮浪者が「Change please」とお金を要求するのを見るが、なぜか俺には来ない。
不思議…
俺はアパートに戻り、ベーグルを軽く焼いて、スクランブルエッグとオレンジジュースの朝食のような晩御飯を作る。
俺は、ベーグルを齧りながら、テレビのチャンネルを変えて英語の勉強をする。
チャンネルをインターナショナルチャンネルにすると、明らかにHの音声が流れる。
画面は全面モザイク? 砂嵐? だけどなんとなく映像がわかる。
翔がこの場にいなくてよかった。まだわからないだろうけど…
ケーブルテレビで夜の放送なんだろうけど、いいのか?
チャンネルを変えても面白いものはない…
仕方がないので、日本出張中の録画でもみるか。
あれ? 録画されてないじゃん。
出張前の録画は表示されるから、壊れていないようだけど…
あっ。VHSの時計が「—:—」で点滅している。
はぁ。停電したのか…
まだ引っ越しして2ヶ月も経っていないのに、二回目だぞ。
ということは… 固定電話の液晶の時計も「—:—」になってる…
留守番電話に何か入っているかもと思い、確認するが、入っていない。
そりゃそうか。ほとんど教えてないもん。
あっ! 郵便受けを見ていないことに気づいた。
郵便受けはアパート全体の中央に世帯全員分がまとめられている。
俺は、部屋を出て郵便を確認する。
広告、広告、広告、水道、広告、ガス・電気、広告、広告、広告、ん?
送信元がJury Office Supervisor? カリフォルニア州のマークまで入ってる…
なんか、他の郵便物とオーラが違う。
俺は急いで部屋に戻って、Juryを英和辞書で調べる…
陪審?
封筒を開けて中の紙を見ると、招集命令? 義務? 罰則?と言う単語がある。
えっとぉ。 陪審員に選ばれて、招集に応じないと罰則がある? 何じゃこりゃ!
慌てて、ネットで調べまくるが、英語ばかりで頭が混乱する。
2時間格闘して、やっと陪審員の条件を探し当てた。
重罪で有罪判決を受けたことがないって、ないわい!
70歳以上… じゃない
身体的・精神的に陪審員としての職務に耐えられない… うーん。そうだけど…
英語を話したり理解できない… この英語を読んで回答すると、できていると判断される? 罠じゃん。
アメリカ市民! おい! これを先に書け!
陪審員にはなれないことを英文で書いて郵便で返送しなきゃ、捕まる!
手紙の定型文を探し、失礼がないように頑張った。
英文が書き上がったら、朝だった…




