閑話:呼び出し
翔のご飯を用意していると、携帯が鳴った。
携帯には聖心医科大と表示されている。
私はあわてて電話に出る。
「はい。佐藤です」
「聖心医科大の糸井です」
「先生、遥翔に何かあったのでしょうか?」
「容体が変化しましたのでご連絡しました」
「遥翔は大丈夫でしょうか?」
「わかりません。できれば病院に来ていただいた方がよろしいかと思います」
「わかりました。翔を連れて行ってよろしいでしょうか?」
「はい」
電話を切ると、翔のご飯をタッパに詰め、タクシーアプリでタクシーを呼ぶ。
タクシーはすぐに来て、タクシーに乗る。
「すみません。子供にご飯をあげていいですか?」
「はい。安全運転で行きますね」
早く病院に行きたいが、翔を事故に遭わせるわけにはいかない。
「お願いします」
私はヤキモキしなら、翔にご飯をあげる。
遥翔に何かあったらどうしよう… 不安が頭をよぎる。
聖心医科大に着いたが、玄関じゃない…
「着きましたよ。あれが夜間入り口です」
今の時間はいつもの入口は閉まっているのね。探し回る必要がなくて助かった。
「ありがとうございます」
病棟にエレベータで上がると、ナースステーションの看護師が私を見て、出てきてくれる。
「佐藤さん、こちらです」
私は看護師について歩く。
看護師が病室の扉を開けると、心拍を計測する機械が出す遥翔の心音が聞こえる。
「佐藤さん、ご主人の容体ですが、安定しました」
「そうですか… よかった…」
遥翔の横にはそら豆の形をしたステンレスの受け皿には真っ赤に染まったガーゼが大量にあるのを見た。
「血… もしかして…」
私は遥翔の脳から出血したのではないか? 遥翔は大丈夫だろうか。起きなかったらどうしよう…と色々考える。
「…大丈夫ですか? 佐藤さん!」
私は看護師に体を支えられていた…
翔が泣いているのにも気づかないなんて…
「はい。翔、ごめんね。大丈夫だよ」
「こちらにお座りください。お子さんをお預かりしましょうか?」
「はっ、はい。お願いします…」
私は椅子に崩れ落ちるように座った。
看護師が紙コップの水をくれたので、ゆっくり飲む。
「落ち着きましたか?」
「はい…」
「ご主人の容体は安定しています。大丈夫です」
「はい… でも、しゅ、出血ですよね?」
「あの膿盆の血は鼻血です」
膿盆? あのステンレスの受け皿? 鼻血? 鼻血って鼻から出る血?
渡しは遥翔をもう一度よく見る。
確かに、顔の周りに血の跡が少しあるが、頭の包帯は白い…
「落ち着きましたか?」
「はい。すみません。落ち着きました」
「ご主人は1時間ほど前から心拍数が上昇し、鼻血が出ました。鼻血にしては量が多いですが、出血は止まっていますし、心拍数も正常に戻りました」
「悪い前兆なのでしょうか?」
「わかりません… 佐藤さん、長谷川さんからいただいたテキストは読まれたでしょうか?」




