閑話:紬の違和感
私は長谷川さんを待っている間、糸井先生に質問をする。
「糸井先生、質問してよろしいでしょうか?」
「何でしょうか?」
「遥翔のように事故で目覚めない人は多いのでしょうか?」
「統計はありませんが、一定数はいます」
「寝言を言うのに目覚めないことも多いのでしょうか?」
「事例は少ないです」
「遥翔は目覚めるのでしょうか…」
「ご心配ですよね…」
糸井先生はPCを操作してレントゲン画像を出す。
「遥翔さんの脳は頭蓋骨の破片と血塊で右側の側頭葉が傷つきました。右側の側頭葉は聴覚処理や感情や状況の認識を行う箇所です」
「そうですか… それは、遥翔が目覚めても性格が変わるということでしょうか?」
「それは否定できません。何か気になることでもあるのですか?」
「…そうですね… 遥翔が喋る内容をAIで解析させたテキストですが、遥翔と少しイメージが違うのです」
「どうイメージが違うのですか?」
「表現が難しいのですが… 『オチ』です」
「オチ?ってお笑いの?」
「あのテキストは遥翔が話している感じとは少し違うというか、しっくりこないです」
「それは、内容が奥様の知らない内容だからでは?」
「…そうかもしれません」
糸井先生がテキストを読み返していると、ドアがノックされた。
「はい。どうぞ」
「失礼します」
私は長谷川さんが扉を開けるのを手伝う。
長谷川さんが椅子に座るのを補助し、松葉杖をひとまとめにして渡す。
「ありがとうございます」
「私たちに見せたいものとは何でしょうか?」
「少々お待ちください。重いのよねぇ…」と言いながら、リュックからA4サイズで厚さ2cmほどの白い箱?を取り出す。
それには、Appleのロゴが入っている。PC?
「電源はありますか? バッテリがダメになっているので電源がないと起動しないのです」
「ここに繋いでください」
「わかりました。ACアダプターも壊れていたので、代替品を買いに行っていたので遅くなりました」
と言いながら、ACアダプター?をコンセントに繋ぎ、色いノートPCを開き、ボタンを押すと、ジャーンとF# major?の音が鳴る。
分厚いPC…
「今のMacと変わらないですね」
「20年以上も前だもの。スペックは全然違うわよ。でもOSの基本は変わらないわ」
「長谷川さんはPCに詳しいのですか?」
「ええ。最近はコーディングをしていないけどね」
長谷川さんは白いPCを操作してテキストを表示して、「あったわ」と言い、糸井先生と私に見えるようにノートPCを私たちの方に向けてくれる。
「このテキストが見せたいものですか?」
「そうです。読んでください」
糸井先生と私はのーとPCを覗き込みながら読む。
これって…
「これは?」
「健一が書いた記録です。佐藤さんの寝言?に出てきたSun、Java、Sunnyvaleとか言われていましたよね? 佐藤さんの寝言って健一の記録と似ているなぁと思いまして…」
「確かに、一致する単語が出てきますね。事故前に、この記録の内容を佐藤様に話されたということでしょうか?」
「そうではないかと…」
「奥様は聞いていないのですか?」
「聞いていません。健一は佐藤建築事務所に何度か訪問しているしているので話したのではないか? それが、佐藤さんの寝言に関係しているならご報告しておいた方が良いとおもったのです。お役に立ちますでしょうか?」
「このテキストをいただいてもよろしいでしょうか?」
「はい。でも、ちょっと待ってくださいね。転送方法を調べます。何せ、古いですから…」
長谷川さんはiPhoneで何やら検索している。
「SMBで転送できそうね… MacをSMBサーバにして… iPhoneから取りに行けば… できたわ。佐藤さんはiPhoneかしら?」
「はい」
「では、AirDropで送るわ」
「お願いします」
「糸井先生にはどうやって送ればいいでしょうか?」
「こちらのメールアドレスでお願いします」
「わかりました」
AppleのMacOSはXになってからインタフェースの変化は少ないです。
96年にスティーブ・ジョブスがAppleに復帰したことにより、MacOSがNeXTベースになりました。
ジョブスの力でAppleは復活することになりますが...
95年はMacOSはNeXTとBeOSになるかもめていました。
NeXTのディスプレイポストスクリプトも面白いですが、BeOSの方が並列処理に優れていました。
MacOSがBeOSベースになっていたら、どうなっていたでしょう?
Appleは潰れていたでしょうか...




