帰宅
「はぁ。やっと着いた…」
鍵を開けて入ってもいいんだけど、チャイムを鳴らす。
「はーい」と優佳の声がして、ドアを開けてくれた。
「おかえり」
「ただいま」
「疲れたでしょ?」
「電車がぎゅうぎゅう詰めじゃなかったけど、電車で疲れたよ」
「さ、入って」
「あぁ」
「お風呂に入る?」
「翔は?」
「ソファよ」
「顔を見てからお風呂に入るよ」
「わかったわ」
俺は、ソファーに座っている翔に近づいた。
翔が手を伸ばして掴もうとする。
「あっ! 先に手を洗って!」
「ごめん。そうだね」
俺は洗面所で手を洗う。
「翔はご機嫌だね」
翔…
「うん。時間通りが好きみたい。夜もしっかり寝るわ。…どうしたの?」
「え? 何が? あっ翔にお土産があるんだ」
俺はスーツケースを開け、積み木を取り出し、翔に渡した。
翔は積み木を掴み、別の積み木を掴んで動かしている。
「気に入ったのかな?」
「どうかしら… で、私へのお土産は?」
「コスメを考えたんだけど、気にいるかどうかわからなかったから… チョコを買った」
「どれ?」
俺がスーツケースを見せると…
FERRERO ROCHERの山を見て、「会社の人へのお土産でしょ?」と言う。
「ま、そうなんだけど…」
「それは、私へのお土産は買ってないと言うのよ。はぁ、まぁいいわ。それより、お風呂に入らないの?」
「入るよ」
俺はお風呂に入り、日本のシャンプーにホッとする…
「どうして、こう言うのが作れないかなぁ」
「ねぇ。何か言った?」と外から声が聞こえた。
「後で説明するよ」
俺は上下スウェットでお風呂を出た。
「シャンプー最高!」
「シャンプー? 普通でしょ?」
「アメリカのシャンプーはマジックリンなんだよ」
「マジックリンで洗剤でしょ?」
「そう、髪の毛の油分を根こそぎ取るんだよ。絶対日本にシャンプーを買って持っていく!」
「それも日記に書いている?」
「日記?」
「アメリカでの生活を記録する話をしたじゃん」
「記録ね。しているよ」
「後で見せて」
俺はポールが立っているお店を思い出し、言葉に詰まった。
「え! あっ」
「何か、まずいことを書いているの?」
「えっ。そうじゃない」
「じゃ、見せて」
「はい…」
優佳は黙って俺が書いた日記? 記録を読んでいる。
怒ってる? 表情が読めない…
翔はあまり楽しそうに見えないが、積み木を積んでは崩すを繰り返している。
翔も積み木が好きだったな…
かける?
「健一? どうしたの?」
優佳が俺の顔を見ている。
「ん? あ? なんでもない」
「疲れているの?」
「大丈夫だよ」
「そう… 日記だけど…」
ポールのお店はちゃんと説明しないと! 俺は食い気味に説明する。
「優佳、あのお店はお昼を食べに行っただけで、やましいことはない…よ」
「ねぇ、健一ってモテるの?」
俺は予想外の質問に間抜けにも「は?」と返してしまった。
「なんか女性店員に話しかけられることが多くない?」
「え? そうかな?」
「ふーん。ま、いいわ。日記は面白いから、続けてね」
「はい…」




