閑話:疑惑
紬は家の扉を開けた。
女性の靴が2足ある…
1足はお母さんだけど、もう一足は誰?と思いながら、リビングに近づくと女性の声が聞こえる。
お義母様が来ている?
紬は扉を開け「ただいま」と言う。
リビングに置いてあるベビーベットの翔をお義母様とお母さんが覗き込んでいたが、揃って顔を上げる。
「「おかえりなさい」」とお義母様とお母さんの声が重なる。
「お義母様、ただいま戻りました」
「遥翔の容体はどうでした?」
「まだ、目覚めません」
「翔君が待っているんだから、早く起きなきゃいけないのに、何をしてるんだかねぇ」
「そうですね。お母さん、翔はどうでした?」
「翔君はいい子でしたよ。もっと手がかかって欲しいぐらいよ」
「ずっと、ご機嫌だったわね」
「そうですか。よかったです」
「どうしたの? 浮かない顔ね。病院で何かあったの?」と紬の母が聞く。
「何でもないわ」
「実は遥翔は容体が良くなかったの?」
「違います。お義母様」
「さっさと白状なさい」
「お母さん、白状って… お義母様、『ゆう』とか『ゆうか』と言う単語に心当たりがありますか?」
「『ゆう』?『ゆうか』? 遥翔がらみですよね?」
「はい」
「それなら、裕香ちゃんだと思うけど、どうして?」
「遥翔が寝言で『ゆう』とか『ゆうか』と言っていたそうです。裕香ちゃんというのはどういう方でしょうか?」
「裕香ちゃんはお隣で、遥翔の幼馴染ね。でも、紬さんが心配するようなことはないから安心して」
「幼馴染…」
「裕香ちゃんのお母さんもどこにいるのか知らないぐらいだから」
「いる場所を知らないって、裕香さんはどんな人なんですか?」
「どんな人って… 一言で言うと女王様ね」
「女王様?」
「小さい時は遥翔は裕香ちゃんの手下だったわ。大きくなったら相手にもされていなかったわ。今はいくつもの企業の社長で海外で生活しているらしいわ。これが写真よ」
お義母様が紬に携帯の画面を見せる。
そこには見ただけで気位が高いとわかる女性が写っていた。
「綺麗な方ですね」
「ものすごくモテるわよ。遥翔は裕香ちゃんとは正反対な穏やかな紬さんが好きなのよ。だから、気にしなくていいわ」
「…」
「気になるなら調べたら?」
「…調べる?」
「まずは携帯ね」
「でも、プライバシーもあるし…」
「気にする必要なんてないわよ」
「…はい…」
「遥翔の携帯はどこ? もしかして病院?」
「いえ、壊れています」
「遥翔はiPhoneでしょ? 新品のiPhoneを用意すればいいだけじゃない? 遥翔の指紋を使えばいいだけよ」
「でも…」
「どうせ、遥翔が起きたら新しい携帯が必要なんだから。明日、紬さんも病院に顔を出すんでしょ? 私がiPhoneを買って持っていくわ」
「紬、中途半端に疑うなら、すっきりさせたほうがいいわ」
「わかった… お義母様、よろしくお願いします」
「まかせて」




