新車
芝浜Americaはすべての机が胸の高さのパーティションで区切られた半個室だ。
俺はパーティションをノックしながら「愛さん、車を受け取りに来ました」と言った。
「早いわね」
「ちょっと楽しみだったので…」
「駐車場にあるから行きましょう。色はシャンパンゴールドよ」
私たちは駐車場に移動すると、愛さんが入り口の近くの車の前に止まり鍵を渡してくれた。
車はHONDA アコードだ。俺は車の周りを一回りして見た。
「ナンバーは4BSD167ですね! わざわざ指定したわけじゃないですよね?」
「この番号がどうしたの?」
「偶然にしてはすごいなと思っただけです」
「普通だと思うけど、何がすごいの?」
「このBSDはBerkeley UNIXなんですよ。しかも、Sun社のOSは4BSDをベースにしているんですよ」
「…へぇー」
あっ。理解するのを諦めたね…
4BSD 167はカリフォルニア大学バークレー校が開発したオーペレーションシステムのBSDのVersion4でビルド番号167って読める。
これは俺がよく使っていたバージョンだ。理解してもらえないよね…
「レンタカーを返す必要があるよね? 私も車で行くわ」
「よろしくお願いします」
愛さんが自分の車に乗りこんだので、俺はレンタカーに乗りこんでついていく。
無事、レンタカーを返して、愛さんの運転で会社に戻る。
愛さんの車に乗ると、小冊子を2つ渡された。
「車が届いたので、DMVに行って早く免許証を取ってください。免許を取得するための交通法規をこれで勉強してください」
「どういう試験があるんですか?」
「30問ぐらいのペーパー試験があるわ。試験は日本語でもいいけど訳が微妙だから、英語の方がいいわよ。合格したら、外人用の追加ペーパー試験があるわ」
「外人用?」
「アメリカの交通標識にはSTOPとか英語の単語が書いているものがあるでしょ? それが読めているのかを確認する試験ね」
「英語で受けても必要なんですか?」
「受けさせられるみたいよ」
「訳がわからないですね」
「そうね。その後は実技の予約をするわ」
「どんな実技をするんですか?」
「えっと、左に曲がるとかバックするとかの手信号をして、ウインカーやブレーキのライトがちゃんとつくか確認して、外を10分ほど運転して、縦列駐車やスイッチターンして終わりかな」
「それだけ?」
「それだけだけど… ペーパーで落ちる人はいないけど、日本で運転していた人もだいたい1回は落ちているわよ」
「運転で落ちるのですか?」
「心配しなくても、2回落ちても料金は変わらないわ」
「そうですか…」
料金は心配していないんだけど...
話しているうちに芝浜Americaに戻ってきたので、俺は、愛さんにお礼を言って車を降りた。
アコードの鍵を左の扉に挿して開け、運転席に座る。
座席の位置やミラーを調整して、エンジンをかける。
新車はいいねぇ。
メーターはキロとマイルの両方記載か… アメリカで生活するとキロはいらない。
標識の行き先表示にはマイルで記載されているし、制限速度もマイル。
マイルで統一されているから到着時間の予想も簡単だ。
次の休みは新車でどこか行こうかな。
ワイナリーのナパバレーがいいかな? ナパバレーは自然が多いだろうから、ピクニックできるだろうから、優佳が来た時がいいな。
Sun社はStanford University Networkの略だからスタンフォード大か… 近すぎるか。
やっぱり、この車のナンバーなら、カリフォルニア大学バークレー校だな。
次の休みに、俺はバークレー校でSather Towerに登り駐車場に戻ると、2人組が俺の車の前で何やら話していた。
『俺の車だけど、何か問題がある?』
『このナンバーいいね。写真を撮ってもいいかな?』
『いいよ』
バークレー校では、わかる人がいるよねぇ。
州を移動時のナンバープレート交換では、後ろ側のナンバープレートだけ返却でOKで、前側のナンバープレートは貰えるはず。
カリフォルニアに来たばかりだけど、州が変わる異動はないかなぁ。




