異国での一人生活
カリフォルニアの生活は快適だ。
日差しはきついがジメジメしていないから木陰に入るとひんやりする。
夜は寒いぐらい冷えるので気温差は激しいが、俺には合っている。
最もいいことは、日本との時差だ。
日本との時差で翔との会話ができないのが辛い。
だが、俺が勤める芝浜工業は日本の会社だから、時差の都合でメールのみだ。
日本の会社の会議の多さは信じられない。
これから解放されるだけでも天国だ。
もちろん、Sun社との会議はあるが、数が少ないし議題と終わりの時間がはっきりしている。
俺の英語力を周りが理解してくれると、議題はわかっているし、技術英語以外は簡単単語にしてくれるので会議が楽になった。
問題は日常会話だ。
日常会話は議題が決まっていないから、何を話されるのかわからないからだ。
『お前、日本人か?』
『そうだよ』
『俺は2週間東京にいたぜ』
『俺は東京から来たよ』
『あっ、質問があるんだ。東京でワーンワーンという雑音がしたが、あれはなんだ?』
『ワーンワーン? 犬?』
『犬じゃない』
『え? 季節は?』
『暑かったから、August』
ん? もしかして… そういえばアメリカにはいないのかな? 静かだな。
『東京の都心? 近くに木はあった?』
『Commonがあった』
公園?なら、たぶんセミだな。
『晴れていたろ? 夜とか雨の時は静かだろ?』
『ん? たぶん』
俺は、セミを英語で何と言うのか知らないから、電子辞書で調べる。
『cicadaだと思う』
『cicada?』
電子辞書の英英辞典でcicadaを引いて見せる。
『虫!?』
こんな連想ゲームだと、遊びで面白い。
だが、日本好きのガチ勢が来ると、お手上げだ。
黒澤明、三島由紀夫、村上春樹などがアメリカ人には有名らしく、好きなところを熱弁される。
熱弁されると、英語は速いし、簡単単語なんて使ってくれないので、ついていけない。
しかも、日本人は知っていて当然と思っているようだが、俺は表面的にしか知らないから困る…
外人? 俺の方が外人か? と会話したこんな内容を優佳に電話で話すが、優佳は笑ってはくれるけど、あまり面白くなさそうな気がする…
翔のことを聞いたり、優佳のことを聞くが盛り上がりに欠ける。
俺が楽しいことしか話さないからかもしれないが...
優佳と翔をアメリカに連れてきた方が良かったのかもと思う。
しかし、翔の体調が悪くなった場合に、アメリカの医療が心配だ。
アメリカは日本のような保険証はなく、自分で保険に入る。
だから、会社が代わりに入ってくれるから金銭面の心配は少ない。
だが、面倒なのが自分が入った病院が加入している保険の系列でないと医療を断られることもあるそうだ。
それに、英語で症状を伝えるなんてできるのか問題がある。
Sun社は個室で扉を閉めていれば、誰も話しかけてこない。
逆を言えば、扉を開けていれば話しかけてもOKという意味だが、ほとんど人は来ないから関係ない…
会議も少ないし、日本とは時差があるから電話もしない。
要は一人で考える時間が山ほどあるので、色々考えてしまう。
この環境に慣れない人はアメリカで生活できないんだろうなぁと考えていると、メール到着の音が鳴った。
メールを見ると、愛さんからのメールで、リースの新車が届いたから取りに来いという内容だった。
俺は、新車というのでウキウキして、芝浜Americaに向かった。




