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知りたくなかった事実1

うーむ、難しい。。


 夜、実家に帰り着いた俺は、そっと玄関のドアを開けた。

「あっ、誠!ご飯作ったのに帰って来なくて心配したのよ!……顔色すごく悪いわよ? 大丈夫なの?」


「お兄ちゃん、おかえり心配したんだからね!

……ほんとだ、すごく疲れてるみたい」

 リビングから顔を出した母さんと、美桜が心配そうな声を上げる。


「ごめん、母さん、美桜。ちょっとギルドの事後処理で疲れちゃってさ。今日はもう、先に休むよ」


 二人を安心させるようにそう告げて、俺は逃げるように自室へと向かった。


『マスター、現在の疲労度は限界値を超過しています。直ちに睡眠を取り、肉体の回復を優先すべきです』


『そうですよマスター! 今日は寝て明日から調査進めましょう!』

 脳内で冷静に警告するトラ子と、ゲームのシステム音声のようなノリで励ましてくるエク子。


 二人の気遣いはありがたかったが、俺は気力を振り絞って上半身を起こし、アイテムボックスから片桐ギルマスに借りた小型の魔導端末を取り出した。


「……休んでる暇なんて、ないさ。

このペナルティが明けるまでに、俺は『敵』の正体を見定めておかなきゃならない」


 俺は実家のベッドの上に胡座をかき、端末の電源を入れた。

 そしてギルマスから教えてもらったパスコードを入力する。


 画面にギルド本部のデータベース、【S級指定機密アーカイブ】のメニューが展開される。

 俺は血走った目で、キーワード検索に『大罪スキル』そして『嫉妬』と打ち込んだ。


 数秒のロードの後、画面にいくつもの極秘ファイルが羅列される。

 俺はその中で、最も古い日付の『特異能力調査報告書』を開いた。


「大罪スキル……やっぱり、ただのレアスキルじゃないみたいだな」


 画面のテキストを読み進めるうち、俺は息を呑んだ。

 資料によると、大罪スキルと呼ばれるものは全部で『八つ』存在するという。


 【暴食】、【色欲】、【強欲】、【嫉妬】、【憤怒】、【怠惰】、【傲慢】そして【虚飾】。


 ダンジョンがこの世界に現れた数十年前から存在し、歴史の裏側で度々確認されてきた力。


 取得条件は『一切不明』。誰が、どのような法則でそのスキルに選ばれるのかは全く解明されていない。


 ただ一つ、すべての大罪スキルに共通する恐るべき特徴が記されていた。

『――大罪の名を冠するスキルは、独自の【意思エゴ】を持つ』

「意思を持つスキル……」

『わぁっ、インテリジェンス・ウェポンとか、自我を持ったシステムAIみたいな感じですね!』

と』


 エク子の言葉に、俺は頷きつつ、ふと一つの疑問を口にした。

「……でも、それならなんで俺は『強欲』のスキルの影響を受けてないんだ?」

『影響、ですか?』


「ああ。【嫉妬】の男は、スキルに精神を歪まされてるような狂気を感じた。もし大罪スキルが強烈なエゴを持っていて、持ち主の精神を侵食するなら……なんで俺は正気を保っていられるんだ?」


 俺の問いかけに、脳内の二人が一瞬だけ沈黙した。

 やがて、エク子が申し訳なさそうな声で答える。


『それは、びと……えっと、詳しくは権限不足によりお答えできないみたいです、ごめんなさい!』

「権限不足……?」


『はいっ。でも、一つだけ確かなことを言えるとしたら……私たちこの『サポートシステム』は、【強欲】のスキルそのものとは『別物』で、その力により精神汚染を防いでいるということです!』


 別物。その言葉の意味するところは分からなかったが、今はそれ以上深く追求することはできなかった。


 ならば、あの日天道さんを黒い泥で飲み込んだ【嫉妬】のスキルにも、歪んだ悪魔のような意思が宿っていたのだろう。


 俺はさらにページをスクロールし、『嫉妬』のスキル保持者に関する個別ファイルを開いた。


『――対象指定:コードネーム【嫉妬エンヴィー】。

黒い燕尾服、顔を隠す奇妙な仮面を着用。

対象の精神と能力を簒奪し、己のコレクション(操り人形)として使役する……』


 間違いない。

 十数年前に俺と天道さんを襲撃した、あの男だ。

 俺の心臓が、怒りと憎悪でドクンと大きく跳ねた。


「トラ子、こいつの現在の居場所や、所属に関する情報はないか?」

『解析中……該当の男は、ある巨大な組織に所属していると記述されています。組織名は――【NULLナル】』


「NULL……?」

『はい。複数の大罪スキル保持者、および社会的に抹殺された特異能力者たちを束ねる闇のシンジケートのようです。

ギルド本部も過去に何度か優秀なスパイを潜入させましたが、ある程度の情報を送ってきた後、誰一人として生還できていないようですね』


 大罪スキルを持つ化け物たちが集う組織。

 ギルドですら手を出せない深淵。

 だが、怯むつもりはなかった。


 そこに天道さんが囚われている可能性があるなら、地獄の底だろうと踏み込んでやる。


「NULLに繋がる手がかりはないのか? スパイが全滅したなら、どうやってギルドはその組織の活動を把握してるんだ?」


 俺が端末の関連ファイルを漁っていると、ふと、一つの『監視対象組織リスト』に目が止まった。


 NULLが資金洗浄や、実験体となる「素材」の調達に利用しているとされる、強力な協力組織の名前。


 その名前を見た瞬間。

 俺の全身の血の気が、スッと引いていった。

「……嘘だろ」


 端末の青白い光に照らされた画面に、俺のよく知る――裏社会で悪名高い組織の名前が映し出されていた。

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