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リノアの魔道具トリップ   作者: とと


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悪意と憤怒 そして無上の喜び

読んでいただきありがとうございます。


ソフィア 視点 ( 最初の頃に出て来た、ジール侯爵令嬢です)



「今日はなんだか、騒がしいわね」


私はブドウを摘みながら、光の無い瞳でつぶやく。


「今日はルアナ王国の、第一王子殿下が、視察に来ているらしいわよ」


「あら、ラーシュ殿下のお姿もあるわ!」


お父様に捨てられ、修道院に来てから、どのくらい時間が経ったのだろう…。


私は、ただただイオ様を、お慕いしていただけなのに…それにしても、べらべらとうるさいわね。((修道女達))


「ねえ、あの黒髪で、長身の方はどなたかしら?凄い美丈夫ね」


「ラーシュ殿下とフレイア様と歩いてらっしゃるわね、きっと高貴な方よ」


「隣のご令嬢、なんて奇麗なの、あのつややかなブドウみたいな髪色、素敵ね」


私は作業している修道女をかき分け、視察に来た集団を注視する。


「…………イオ様」


私は久しぶりに見る、イオ様の神々しい光に、しばし見入る。


…………イオ様の隣には、あの女!


まさか本当に結婚したんやないでしょうね!


見つめる私の視界の中で、イオ様は愛おしそうに、目を細めてあの女を見つめて、そっと腰に手を回す。


見上げるあの女の手が、イオ様の髪に触れる。


「あの女さえ、いなければ!」


お腹の底から、ブクブクと湧き上がる怒りで、体が熱くなり、地に響く低い声が出た。


ブドウを摘むために持っていた剪定鋏を握りなおす。


消えてしまえ!


私はあの女目掛けて駆けだした。




✿ ✿ ✿



イオ 視点


「リノア、足元は大丈夫?」


畑のボコボコした通路で、リノアが転ばないように腰に手を回す。


「イオ。ありがとう。クリス様に進められて、ペチャンコの靴を、履いてきたから大丈夫よ」


そう言いながら、俺を見上げたリノアが、前にはらりと落ちた髪をすくい、俺の耳に戻す。


その時、背後に膨れ上がる、黒い感情を感じて、振り返る。


ソフィア!


落ちくぼんだ眼に、ギラギラとした悪意をまとい、髪を振り乱し、鋏を振りかざして迫りくる。


俺は咄嗟に、リノアを庇い抱きしめる。


同時にアルトとラノが、ソフィアを吹き飛ばし、転がったソフィアをバルドル様が足で踏みつけた。


ソフィアは気絶したのか、バルドル様に、何度も踏みつけられているのに、ピクリとも動かない。


気がつくと、リノアが眼を閉じていて、俺の腕から力なく、崩れ落ちそうになり慌てて支える。


「リノア、リノア!返事をしてくれリノア!」


リノアが全く反応しない。


一度ならず二度までも、リノアを傷つけようとするとわ!


許さない。絶対に許さない。


俺は破裂しそうな怒りに、身を震わせる。


「リノア、起きてくれ」


必死にリノアの顔を撫で、肩を揺らす。


(この馬鹿たれ!リノアを揺さぶるな!)

(イオ、落ち着いて、リノアは今、大切な時なのよ、私達が守るために寝かせているの)


突然、スパロー様とプロテア様の声が頭の中で響く。


「寝かせている?」


「そーだよ~。イオ! リノアは、あんなの見ちゃダメ」


「悪いのみたらだめ、リノアのお腹、ピンクと水色ビックリする」


「そうそう。驚いて、泣いちゃう」


アルトとラノが、頭の上を飛びながらおしゃべりしている。


ピンクと水色?


(イオ、よく聞いて)


またプロテア様の声が、頭の中で聞こえる。


「はい」


俺はリノアをぎゅっと抱きしめる。


(リノアのお腹に、昨日新しい命が来たのよ。まだ本人も、気がついていないわ)


俺は怒りから一転、喜びで体が震えた。


思わずリノアを抱き上げて、クルクル回る。


「イオ、悪い子!リノア大事大事」


ラノが叫び、アルトに頭をかじられる。


「いくらでも齧っていいぞ、俺は今幸せだー」




(*^▽^*)

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