久しぶりの魔道具づくり③
読んでいただきありがとうございます。
バーンズ公爵家に着く頃には日が沈みかけていた。
「夕食までの時間で少し設計図を書いてもいいかしら、使う布を見たらイメージが沸いたの」
「いいね。俺も付き合う」
イオと作業場に向かう。
「ウルーゾ王国は砂漠が多いのよね」
「そうだな、国の1/3は砂漠みたいだ、だから水や緑を大切にする」
「じゃあ。ハリル殿下の留め具は水をイメージする形にして、スカーレット様は何かウルーゾ王国の緑をイメージするような植物にしたらどうかしら?」
「それならデーツの実かな、デーツパームの実だけど、ホウキの房に黄色実がたくさんついた感じのだよ。こんな感じ」
イオがデーツパームと実の絵をサラサラと書き上げる。
「わあ。上手ね」
イオは得意げに胸を張る。
「この房を二つ重ねて、実を左右に分けてひねる感じにデザインできる?」
「こんな感じか?」
「すごくいい。この束ねるところをかわいくできないかな……かわいいよりは綺麗の方がスカーレット様には似合うかしら……そうだこのいくつも実の二つに色を付けて、温と冷のボタンにしよう!二人の瞳の色か髪の色で」
「いいな」
「ハリル殿下の方は、水をイメージしたこんな感じはどうだ」
またサラサラとイオがペンを走らせる。
瞬く間に魚が跳ねて水しぶきが上がるデザインが出来上がった。
「わあ。イオ 天才」
「こんなのも書けるぞ」
今度は、小さなピンク色の房状になった花が水面に落ちて水がはじける絵をさらっと書き上げる。
「う~ん。どっちもいい!悩んじゃう、この花はウルーゾ王国の花なの?」
「砂漠にも咲く花なんだ」
「素敵ね」
「男性だし、魚の方がいいかな」
「そうね。躍動感があるしこの水しぶきの粒をボタンにするのはどうかしら」
「いいな、ボタンの部分には宝石を使えば、婚姻の祝いによりふさわしくなるな」
「そうね。それにしてもイオはなんでも知ってるのね~。私ひとりじゃこんなに素敵なデザインはできなかったわ」
言い終わらないうちにイオに突然ぎゅーっと抱きしめられる。
「楽しい事も、困難な事も一緒に頑張って行こうな」
イオは私の耳元でぽそりとつぶやいた。
「うん」
私もイオの背中に手を回す。
しばらくそのままでいると、「こほん」と咳払いが聞こえて、二人して入り口を見る。
あきれた様子のアンナが立っていた。
「お夕食間までの予定ではなかったのですか?」
時計を見ると既に21時を過ぎている。
「あーアンナごめんなさい、でもね!素敵なデザインができたのよ、細かな設計図はこれからだけど、みてみて!」
「まあまあ。ワイアットみたいですね」
「ワイアットと?息子さんね、そうだこんな時間までお母さんを働かせてしまっているわ~。アンナ早く帰ってあげて」
「もう寝ている時間ですら、明日の朝しっかり抱きしめることにします」
「うぅ~。ごめんなさい」
「夕食をお持ちしましたから食べてください」
「アンナ、悪いな。片づけはしておくから帰っていいぞ」
「イオ様は私がいるとお邪魔ですか?」
「邪魔とかじゃなくて、ちょうど魔道具の構想が形になってきていたからこのまま形にしたいんだ」
「わかっておりますよ、シェフに作業しながら食べやすい形にしてもらいましたから、ちゃんと食べてくださいね。お邪魔虫は退散しますから」
「わあ。ちょうどお腹が空いてたのありがとうアンナ」
「じゃあ。夜更かしはダメですからね、お休みなさいませ」
アンナが帰っていき、私達は腹ごしらえをしてから作業に取り掛かった。
デザインを基にあれやこれやと相談しながら作業を進め、作業場にある材料でできるところまですべて進めてしまった。
気がつけば空は白々と明るくなり始めている。
「あとは、はめ込む宝石を探して、出来上がったストールとマントに組み合わせるだけだな」
「宝石はどうやって探せばいい?」
「家にある物を使ってもいいし、宝石商へ買いに行ってもいいな……買いに出かけようか」
「一緒にお買い物♪嬉しいな」
イオと魔道具を作るのは楽しい。
「あったかいお茶入れるね」
「ああ。お茶を飲んだら本邸で少し休んでから買い物に出かけよう」
私がお茶を入れて戻ると、イオはソファーに倒れこむように眠っていた。
「ふふ。かわいい」
毛布を掛けようとするとグイっと腕を引かれてイオの上に倒れこむ。
「イオ……起きてるの?」
イオはがっしりと私を抱えて寝返りを打つ。私はすっかりソファーの背もたれとイオに挟まれてしまった。
「イオ?」
スースーと寝息を立てて眠るイオはまったく起きる気配がない。
私もイオの暖かさと疲れで、すとんと眠りに落ちてしまった。
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