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複数回転生した生きのいい魔王は、今回百合百合しい女学園を作りたいと思っていたとか?  作者: くるま
ものづくりのおはなし

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ぺぷしん

「証拠集めたりする準備が終わっちゃったってか…」


 こんな時に畳みかけるんじゃなく、暇なときにしてほしい。

 ユウリが来てくれた巡り会わせよりも、見たくないもの見せられる感覚に沈むのがトキトだ。


「国の諸侯を内々に招集し会議を行ってペナルティの枠を作るか、代理の国主に証拠すべて揃えて与えたうえで采配を頂くか、直接問い詰めて内密に自害でもさせて納めるか…くらいなのですが」


「やべえ話になってんなぁ」


 王様に対して与えるって、口滑らしてるのはさておき。


「わん…」


 犬の真似させられてるレイが睨むようにして、それでも屈辱的なそれを続けている。

 代理とはいえ国王にすべてぶちまけるかの瀬戸際と聞けば、屈するしかないわけか、こいつでも。


「父も決断できるほど覚悟が決まってはいませんし、そもそも国の中の大きな決断に踏み切るような胆力もありません」


 さらりと言うには、血縁でもひどい。


 そこで、元々かかわっているナイン。

 それなりに教育は受けているポッテの家の兄弟と、これだけ細部を知って実務の動きができるうえ証人でもあるユウリ。

 ここあたりは、実態を詳細に把握するために常に誰かは必要になる。


 最終的にはヒメも顔は出さずに意見を出す形で、この事件の最適な着地点を模索していると説明された。

 いるはずのヒメがここに来なかったのは、今もそれをしてるからか。


 会っても知らないふり、しとこう。


 その一方、当事者の娘のレイが扱える位置にいて放置なので、クアヤ侯をいまだ泳がせたままの、段階的な手段の模索であるっぽいと推察された。

 つまり前段階で、そこまで決め打ちするよう仕組んでいるわけで、そこはなかなか肝が冷える。

 内戦や内部分裂を避けるために、最初から脅すか責任問題で一族郎党殺すつもりなんじゃ?



 トキト自身も娘をさらうという手段をとった張本人で、実働としてえらい大胆なことをしているわけではある。

 が、まぁ、単独でやらかしたトキトとしては、動きを封じるという策までしか実際考えていなかった。

 トキトが考えていたのは、マホから取った手紙があったのを含めての手。


 派手に別荘が壊れ、レイが家出したと匂わせる手紙が現場に残る。

 ワザと派手に、誘拐の取引所か何かと同じような痕跡を残して。

 トキトのプランとしては、それで、家出なのか娘の誘拐なのか脅しなのか、しばらくは判断できず、誘拐の一連の行動がしばらく止まるだろう、と。

 それから懐柔したレイを使うことで、内部を探りつつ誘拐の組織を根本的に止める話に、うまくすれば持っていけるのでは?

 そういった話を画策していた。


 だが、実際に動いている話は、もうクアヤ侯を処断するか公には体面を取り繕いながら自殺させるかだ。

 クアヤの領地を取り潰す話にまで及びつつある気配である。

 元王女の誘拐とまで絡むと、ここまで話がでかくなるのか。


「そもそも、ヒメ様は当人の継承を放棄しただけで、お子様が生まれれば正当な国王として最有力の人物になる国にとって最重要な方であることに全く変わりないのです、ご存命である限り」


「…あ!!」


 そうだね、その通りだね。

 それと、ヒメの素性はやっぱり結構な人がもともと知ってるのか。

 トキトとしては、わずかに悔しさも感じるところ。


「それでいて、べったりと関わったり保護をすれば、国政に協力者伝手で関渉、つまり条約に反したと言いがかりがつくので、何かのついでを言い訳にでしか支援もできない、辛いお話なんです」


「わたくしとしても、父様が姫様の国外逃亡でなく売却を考えていたのであれば、真意を問いたいと今の話の中では思うところです…我々が地位を失うこともあるのでしょうけど、それどころではありません」


「おまえらどっちも、聞くだけで心が痛いくらいは引っ掻き回されてるな…」


 ヒメが売り物の中に入ってたことは、知らなかったのかな?

 口ぶりからすると。

 どちらにしろ、意外と真剣だったんだね、犬の真似してたのに。


 トキトの予定とは違うが、レイも自分の考えで、これから事件の解決に使われることになるのだろう。


「ま、わたしとしてはあの置物のほうがましの代理王に直訴など以ての外なのですが」


「そこだけは同じですのね」


「貴族側の固定スタンスってことか…」


 ま、ファーストなスタンスが国民保護でも国の安定でもなく、他国のために働くのを公言してる国王なんて、侵略者扱いなのはわかる。


「ですが、事態によっては面会することになりますので、一応捧げものをもって首都に、場合によって父の名代として動くよう待機する構えになりまして」


「そのための特産品を持っていると…」


 しばらく首都に滞在するのかな?

 別荘が首都にあるっぽい話は、そういえば意識がない間の状況報告で聞いた気はする。


「荷物の一部は最初から、ナイン様のご助言もあってトキト様にお渡しするつもりでしたから、ご自宅に寄ったところにカナさんが慌てて話しかけてきたので、本当に運命だと思いましたわ、愛する方のお役に立つための…」


「そこはちょっと議論の必要が…あるかなぁ」


 何が何でも、今日もアレさせようと誘導している会話のムーブを感じる。

 トキトも、何かに強く巻き込まれている。

 情勢以外のところで。


「ちなみにですが、この平民になりかけのお嬢様の足についているのは、お話に聞いた薬なのですか?」


「あ、そうだった、炭酸まだ抜けないで残ってるかな…」


 聞いたって誰にだ。


「使えるのであれば、ヴェルグルさんたちのご厚意も生きます」


 水から引き上げた、昨日の箱を開ける。


「おお~、このサワーっとした音、いいねぇ」


 隙間すらないほど入れていたのがよかったのか、外からも密閉度を水増ししたのがよかったのか、ガスはぜんぜん抜けていない。

 実験大成功である。


「では、少し汲み取ってあちらに入れますか」


「…氷!?」


「我々の領地の特産のものですが、やり方の説明書込みで、ナイン様がぜひ持って行ってと、申されまして」


 ヴェルグルが桶にどんどん白い粉を入れながら、合間合間に水も足す。

 ユウリが密閉したビンを持っていくと、ヴェルグルは手を止めてその氷水に瓶を浮かせた。


「魔力は感じないけど、できるんだ…」


「ヴェルグルさんたちに混ぜてもらうと、冷えるみたいですね…大変そうで少し心苦しいですが」


 どんどん入れていたものは、おそらくは天然硝石の結晶に似た効果の物体である。

 塩硝などとも呼ばれ、ほとんどは火薬の材料として主に生かされるはずだが、水に溶かすことでトキトが元居た別の世界では、化学反応により吸熱。

 繰り返せば氷点下の液体も生み出せるという代物。

 これ自体を飲むことはできないが、これを使い物を冷やすのは不可能ではない。


※ただし火薬の材料であるからにはこれも可燃物なので、実験などで気軽に行うのは割と許されない危険物でもあります。


「冷えましたら、これをグラスに移し替え、私の持ち込みました疲労回復の薬液と、今回は呪霊樹の砕いた汁も入れまして…」


 トキトに手渡される。


「…すごい…懐かしい味がする…」


 感動。



 ただ感動。



 この甘ったるさ、そして、混ぜすぎて黒っぽくなってしまった微妙な後味の炭酸。

 取り返しがつかないことになりそうと思いながら、それでもユウリに抱き着きたくなるトキトがいた。


「まだ国が何の騒ぎもなかったころ、うちの領地で王に献上していた、控えめに言っても国宝と呼べるだけの秘伝の薬です!お気に召しましたかトキト様…きゃ!?」


「これだよう…これが日本だよ…」


 名前は出しませんが、たぶんトキトの頭の中にあるそれはアメリカで生まれたものです。

 あまりに感動したのか、もはや我を忘れてユウリに抱き着く。


「あらあら、まあまあ…この役得なら、労力の百倍くらいの価値、本当にありましたわねぇ」


 どさくさでいろいろユウリが撫でまわすが、それも気にならない。

 そのくらいにはトキトの充足感があった。


 ミウノコタツにも、これは酒の勢いも加わったため大満足で、味わったことがないと称賛される。

 さらにカナの思い付きで、先日余った激アマ鍋も炭酸に混ぜてお出しする。


 もう止まらないミウノコタツ。


 自分の国の王にお出しすると持ち帰る話にまで発展。

 排水に関しても、これを我々に出すためのものなら仕方ない、とまで言い出した。翻訳を通してだが。



 現金な話だ。


 こうして、様々ないいことと悪いことが重なり。

 適当に、人間とミウノコタツの友好を勝手に危うくし、勝手に取り持ち。

 ミウノコタツたちは、元々話を持っていく予定だった、川の上流のエルフにも帰りに立ち寄って酒を渡したり、いろいろ計らったらしい。

 そんな話、一切我々は知らないし聞いていなかったのだが。

 

「ソレであの……ワタシタチにコワいことをするのですか?」


 落ち着いたところで、ヴェルグルがトキトに話しかけてくる。

 おそるおそる。

 七色の髪が、改めて見ると奇麗ではあるものの、やっぱ馬鹿だという印象しか持てない。

 でも、記憶力くらいはあったらしく、交渉でやらかした時のトキトの言葉はちゃんと伝わって、覚えていたらしい。


「もうそれも面倒だわ、忘れよう疲れたし」


 トキト視点では、わかるようにこいつらに説教するのも、その内容を考えるのもカロリーかかりすぎる。

 気持ちよく炭酸飲める今の気分で、そんな嫌なことをしたくないという感情だけの結果だ。


「オヤさしい、ですね」


「どういたしまして」


「ソレにしても、トキト様はオーラはアクマそのモノナのに、どうして、こうモ争いを避けたがるのでスカ?」


「近くに見える好きな人が傷つく理由と可能性は低いほうがいい、それならこれでいいじゃないの」


「ショウジキですね、あなたは」


「ありがと」


「…あ、いたわね、厄介なことばっかりする子供」


「ウブくんか、もう今日は何もやんないぞぉ、お疲れ」


 脱力モードしかないトキト。

 今更そっちを向きもしない。


「ほら、私の槍に巻き付けてた服、返しとくわ」


「絶対もう着れないだろ、穴も開いてるしさ~誰かのせいで」


 武器ではないと言い張るため、潔くトキトが服を脱いで、槍の刃物をくるんだ序盤の行動を知る者はいない。

 ずっと下着姿以下の着衣だったのも、もうこの際どうでもいい。


 すると。

 服がトキトの横に置かれると同時に。


 ぎゅっ。


 手を握られた。


「……お礼、だから」


 その一言を残し、ウブは走り去る。


「青春らしいナニだと思わないかね?ああいうのが世の中いっぱいになってほしいわけよ、ヴェルグルにはわからないと思うけどさ」


「…すこしワカりますよ、信頼されているとイウコトは」


 ヴェルグルが、少し珍しい顔で笑ったのも、トキトは特に見てはいなかった。


 その後。


「どうして、ヴェルグルがあたしの部屋で自由にくつろいでるの…」


「シタニ様カラ、怪しいから今まではトキトサマの部屋ニ近寄ルナと言われてマシタ!」

「ガ、全面的に許可が出マシタ」

「ソイネモキョカデス!」

「ケイビシマス!」

「アヤシイヤツカラマモリマス」

「ラブデス!」


「でてけ」


 また何か勘違いされた。

 たぶん。


 これにより、想像以上にこの近辺が亜人まみれになる事態が発生しだす。

 ミウノコタツが、酒と炭酸欲しさに意味もなく立ち寄る状況まで出だしたためだ。

 さらに、エルフもそのうちやってくる気配。



 あとは、些細なことながら。

 魔王を倒すこと、という項目が正式に約束としてミウノコタツから広められたことに、トキトたちは今は気付いていなかった。

【登場人物紹介】


トキト


異世界から転生して、その名で呼ばれている女の子

だいたい二歳か三歳と思われるが、魔法により基本は年頃の女性に変化をしている

前世は「近藤 まる」、さらにその前は「ナノ」という名であった



ヒメ


国王の実子ながら、王家のとある儀式に失敗したためか幼くして国外追放

その後唐突に連れ戻された末に継承権放棄の書面にサインさせられ国政から永久追放

あげく拉致されて国外に奴隷としてさばかれる直前まで来ていた王女

という何気に重い過去を持つ女性

当人はそれをさほど気にしていないので割と明るい

トキトと何気なくかわした「約束」がヒメにもトキトにも大きな転機を生む

刷り込みのようにトキトが懐くのは、トキトの肉体の記憶にはヒメに育てられた記憶が大半のためらしい

トキトに手を出したり傷つけるものは何人たりとも許さない構え。



ナイン


貴族令嬢誘拐の一連の事件以降トキト、そしてヒメに同行するようになる女性

ヒメより見た目は少し年上

ヒメのサポートをよく行っていて「ですので」が専らの口癖

警戒心が強く、よく他人を怪しんでいるが、怪しいのは常にお前だ



カナ・シーナ


貴族令嬢誘拐の一連の事件以降トキト、そしてヒメに同行するようになる女性

安易な鬱設定!の宝庫

当人の性格そのものはさほど暗い性格ではないが、トキトによく殴られる

ただ、常に控えめで、下手に出る性格ではある

妹がいて、名前はタノ



ウブ・キツカ


貴族令嬢誘拐の一連の事件以降トキト、そしてヒメに同行するようになる女性

正義感が強いが粗暴で、さらにそれを表にはあまり出さないのが持ち味

いわゆるツンデレ

傭兵家業の血筋を自称していて、武器の扱いにたけている



レイ・イバヤク・クアヤ


誘拐事件の実質首謀者とされクアヤ侯の元から拉致された一人娘

上流階級のプライドと作法、顔の広さでは誰にも負けない自信を持っているらしい

数々の恨みとばかりに人災天災を問わず襲い掛かる苦難の果てに彼女の明日はあるのか



マホ


国営大図書館の司書

趣味は防犯トラップである疑似空間の静かな環境で本を読むこと

トキトやヒメと出会ったことで自堕落なお役所仕事を改める気になっていくらしい



ユウリ


貴族令嬢誘拐の一連の事件で最初にトキトに魔力を吸われたのが彼女である

それによって何かに目覚めた

らしい

基本的にレイとの仲は悪い



ミウノコタツ


海中に王国を作り特殊な文明を築いている知性体種族

触手のようなものが頭から生えている以外はすこし身長が違うくらいで人間と見間違う容姿をしている

ただ、乾燥に弱く、水中でしか発声ができず、性別は存在しないという身体特徴を持つ

トキトが川に流す工業排水によって人間と遠巻きのスタンスを転換することとなる


地上には団長プラナルフ

続いてデハイナ、トゥーマ、ノテスデとクハスデの姉妹?を主に使節として派遣している



ヴェルグル


謎の多い小人の種族

繁殖期になるとおおよそどんな動物とでも繁殖できるが女性のヴェルグルしか子供は生まれないという

その一代だけ強く親の能力の影響を受ける特性と生物としての特殊さからお互い人と距離を置くことが多いようだ

トキトたちのそばには十二人の集団が一緒に生活している

全員が同じ集落から人間にさらわれ、トキトとヒメに助けられたことで、それなりの恩を感じているようだ

食べ物の誘惑(とくに呪霊樹の実)にはとにかく弱い


リーダーの名前はシタニ


以下 ノマニ タコビ テイ イツ ワレ チデ ラハ カテ トタ ナッ スヨ の順に群れの地位が高い

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