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複数回転生した生きのいい魔王は、今回百合百合しい女学園を作りたいと思っていたとか?  作者: くるま
であいのおはなし

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12/28

おとなの

「助けてください!見逃してください!私はここに…」


 若い女性の悲しい叫び。


「てめえは一度売られてるんだ!金だけ払われて自由なんて道理があるわけないだろうがあ!」


「た、助けて……」


「誰も助けてくれる奴なんていねえんだよお!!」




「いるさっ!ここにひとりな!」


 目立つようにわざわざ高台からポーズをとり、颯爽と助けに入る一人の影!

 当然ながら、トキトである。


「誰だあ!?勝手なこと言いやがって!」


 ぱちんぱちんぱちん。


 こっちとは会話の必要はない。

 さっさと弾き飛ばして、回収するのはほかの奴らに任せる。


「後始末が雑で悪いね、こういうことしてると嫌われるのはわかってるんだ」


「いえ、助けていただいてありがとうございます…」


「もう来させないように、それなりに頑張ってみるよ」


 何も聞かないでくれるのはありがたい。

 こっちは、尻尾をつかむのに、ある意味確実に利用しているのだから。





 事の始まりは、ナインからだった。


「皆様含め、貴族を主にさらおうとしていた組織らしいもの、なんですが、実家に帰ったユウリさんの父上含め、何人かが大変お怒りでして」


「身代金まで取られた上に、実際は外に売り飛ばす契約済みで返す気はないわ、あげくあの劣悪環境だもんね」


「ですので」


「聞いたら怒るわ、それが跡取りの話じゃなくても」


「ユウリ様の父上のポッテ侯は、ついでの勢いのように領地の子女にも被害を出しておりますので、特に面目をつぶされたとばかりの大変なお怒りだそうで」


「…よく知ってるもんだなあ」


 むしろ、どっちからの情報網なんだ、こいつは。

 そう思い、今もいまいち信用はできないトキト。


「実家に戻った娘の動向を、帰宅後も少し様子を知る機会がありまして、その中の娘に再び攫われた疑いがでた、その流れでポッテ侯の話も漏れてきました」


「超が付く大事件だよ!それうちらに!」


 ちゃんと助けたんだろうね?その人は。


「ですので、ユウリ様の安全確認ついでに、ポッテ侯の持った情報が嫌でもこちらに漏れてきていまして、内情がだんだん掴めてきています、ユウリ様ご自身から」


「とはいっても、そのユウリも、よくこっちに情報流すねぇ、こっちはただの市民じゃない」


「ポッテ侯は私情を絡めつつ、スパイが中心にいると確信もしていて、出し抜く形で今回の始末をつける手柄を独り占めし、王家にさらに取り入りたいようでして、内々の協力者と実働部隊には金を払う、と、いうお話も…」


「なるほど、うちらが楽して暮らせるように、恩返しついでに金策の合法手段を流してくれたわけか」


「はい」


 ユウリという人物が、もし自分の家と、自分の出世まで考えて私たちまで利用しようとしているとしたら、むしろ大したものである。

 野望で身内すら道具に使うキレモノを直に見てみたいという意味でも、関わる楽しみはある。


「うちらの安全にもかかわるし、信じてくれるなら、ちょっとは手を動かすのは…礼儀、だよね」


「……ですので」


 悪い顔を、たぶんしている。

 ふたりとも。


「私の掃除と飯当番以外の時間なら、まあ、動くよ」


「みんなで行くのではないのですか?」


 そこにきて、今まで話していて初めてナインの側がペースを乱した気がする。


「図書館でこの国の地図見たけどさ、あの山の辺の縮尺で考えるならこの国結構狭いからね、私の転移で何とかなるよ」


「そんなに!?」


 トキトの見立てた縮尺で言うなら、おそらく九州より広いか程度だ。

 行き帰りで精神や魔力が枯れるレベルじゃない。

 なんなら、吸えるのも確認してるしね。


「小遣い稼ぎなんだから、今の生活崩すのは悪手だよ」


「トキトさんが、そういうことまで話してくれるとは、正直思っていませんでしたので…」


「能力の出来る出来ないは、私としては隠す気はないから安心しろい」


 大嘘だ。


 この世界で使う術の能力コストがわからないので、移動も含んだ術や物質付与などのいくつかは見せているが。

 役には立つだろうが、使いたくないものも、見せる気がないものもある。

 トキト自身が、他人の精神力という電池が必要な時のために、提供してもいいと思わせるだけの有用な力を見せている、見せ技でしかない。

 意地は悪いが、そこは徹底している。


 全ては、この世界そのものに、あの平和と安心感がないからゆえである。

 そこは、内緒で許してほしい。




 と、そんなあれこれあって。


 暇を見て。


 そして時には、狙われている子がいる情報を受けて。

 トキトは、その時暇な何人かと組んだり、単独だったりしながら一味を狩るバイトを開始することとなる。


 顔も見たくないそいつらは、主にナインを通じてポッテ侯に引き渡され。

 拷問なのか何なのか、それらから得た情報はユウリを通じて、トキトたちに入る。


 ならず者だったり、賞金首だったり、たまに異国の名うての殺し屋だったり。

 いろんなのが、次々出てきたりしたが、トキトの目に留まった瞬間、みんな投獄される予定のエリアに作業のテンポで島流しだ。


 トキトの術で、地図の精度を上げたものを利用しての行き来も確立されてくると。

 もう、負担にもならない普段の生活の片手間の様相すら呈してくる。




「また襲われそうになっちゃいましたよトキト様!」


「わるいねえ、何度も怖がらせて」


「いえいえ、お役に立てるなら幸いです!」


 とんでもない危険が迫っているのに、もう慣れたものである。

 何人か、一緒にとらえられていた当時の人間たちとも新たな気分で顔なじみになり。

 同窓会の気分で人さらいを叩いて潰す、そんな日々。



 そして。



「ポッテ侯が、我々を狙っていたころを含め、狙い目になる女性のリストを入手したようですね」


「これでようやく、みんなが再度狙われるってクソみたいな現状は無くなるのかな?」


「相手に出回っているリストなので、ユウリ様が、その人物にポッテ侯の配下を配置して見張らせる手は取らせるようですが…」


「うちらが定期巡回する手間が、少し減るならそれだけでも感謝だけど」


「ですので、それについてなのですが」


「うん」


「ユウリ様から、どうしても直接お話ししなくてはいけない事があると、言伝を預かっておりまして…どうします?」


「いや、そんな距離感ありそうな事でもなくない?」


 言われてみれば、話を毎度聞くわりに、あれから顔は一度も合わせていなかった。

 ずっと情報くれたりの協力をしてくれている割に、こっちは彼女自身には何もしていない。

 思い返せば、非礼と言われても反論はできないのか。


「ま、いきなりこの流れで恨みは買ってないでしょ?行くよ」


「出来るならいつでもいい、とは、言ってくださっています」


 なら今でいいや。

 そう、軽い気持ちで、会いに行く。


「やっぱ立派なもんだぁ」


 特にアポも取らず、ポッテ侯の別邸らしい屋敷に突入。


「て…これ…あの時の?」


 魔法の置物。


 もとい、人口魔法生物の四本足たちだ。

 ぱっと見で四匹ほど。

 少しおびえたが、トキトに襲い掛かる様子は全くない。


「あの時の方!」


 その時、初めて聞く声ではない声が、した。


「あの時助けてもらったご恩、ずっと忘れていませんわ」


「…あ、見覚え……ある……なぁ」


 あの人だ。

 トキトは声とともにはっきり思い出した。


「あの時は、むしろ、失礼した、ねえ……」


 けっこう目が泳ぐトキト。


「わたくしもです」


 唇に指を置き、ちらりと頬を赤らめている気がする女性。

 えらい豪奢なドレスをまとっているが。


 間違いない。


 あの時、最初に力を使った後、生命力をトキトが半ば無理やり吸ったお嬢さんだ。


「またお会いできるのを、ずっとお待ちしていました」


「二度と会いたくないと言われなくて、少し安心はしてるよ…こっちも……うん」


 やったことがやったことだ。


「あの時のせいなのか、この子達に…」


 置物たちにその子が触れると、少し置物が身震いをして、伏せをする。

 馬くらいの大きさがある、それが、きわめて従順に従う、その姿は迫力を感じる。


「私からも命令のようなものが出せるようになったらしく、このように、使わせてもらっています」


 それ、こいつらに栄養をやってるんだよ。

 性格の一部みたいのが生き写しになってるから、自分とは仲良しになっているだけだ。

 トキトは色々説明したい気持ちもあれ、なくても別に困らないだろうしと踏みとどまる。


「では、お部屋に参りましょう?他に話せない大事なとこが、たくさんありますの」


 すっと、トキトの手を引き。

 流れるように屋敷の中に引っ張っていく彼女。


 ユウリであるのは確かなはずだが、となりにいるはずのナインは目に入っていないし、紹介や思い出話もすっ飛ばしだ。



 何かが抜けているような、そうでもないような。



 そのまま、広間を通り、自室らしい部屋に、トキトと彼女は入った。


「本当に」


 部屋のドアを閉めた彼女は、嬉しそうに呟く。


「…本当に、待っていたという一言では、足りません」


「……そう、なんだ……」


 雰囲気が、全くわからない。

 トキトは、話の切り出しを色々考えていた。


 が。


「してください、あの時みたいに」


「…………は?」


「……忘れられないんです…だから早く……」


「え……」


 振り返った彼女、ユウリは、その時にはすでに胸元の飾りを外し。


「…吸いつくして……!」


 ドレスの上を引き破るように開いて、トキトを一心に見つめていた。

【登場人物紹介】


トキト


異世界から転生して、その名で呼ばれている女の子

だいたい二歳か三歳と思われるが、魔法により基本は年頃の女性に変化をしている

前世は「近藤 まる」、さらにその前は「ナノ」という名であった



ヒメ


かわいいものとトキトを何より愛すると言ってはばからない、誰もが笑った顔以外ほぼ見たことがない程にポジティブを凝縮したような女性

ただ、トキトに手を出したり傷つけるものは何人たりとも許さない。

大人のトキトと同じか少し上くらいの年齢のようだ

交渉上手だったり多彩な才能をのぞかせるが、自分語りは基本避ける傾向がある

トキトと何気なくかわした「約束」がヒメにもトキトにも大きな転機を生む

刷り込みのようにトキトが懐くのは、トキトの肉体の記憶にはヒメに育てられた記憶が大半のためらしい



ナイン


貴族令嬢誘拐の一連の事件以降トキト、そしてヒメに同行するようになる女性

ヒメより見た目は少し年上

ヒメのサポートをよく行っていて「ですので」が専らの口癖

警戒心が強く、よく他人を怪しんでいるが、怪しいのは常にお前だ



カナ・シーナ


貴族令嬢誘拐の一連の事件以降トキト、そしてヒメに同行するようになる女性

安易な鬱設定!の宝庫

当人の性格そのものはさほど暗い性格ではないが、トキトによく殴られる

ただ、常に控えめで、下手に出る性格ではある

妹がいて、名前はタノ



ウブ・キツカ


貴族令嬢誘拐の一連の事件以降トキト、そしてヒメに同行するようになる女性

正義感が強いが粗暴で、さらにそれを表にはあまり出さないのが持ち味

いわゆるツンデレ

傭兵家業の血筋を自称していて、武器の扱いにたけている



マホ


国営大図書館の司書

趣味は防犯トラップである疑似空間の静かな環境で本を読むこと

トキトやヒメと出会ったことで自堕落なお役所仕事を改める気になっていくらしい



ユウリ


貴族令嬢誘拐の一連の事件で最初にトキトに魔力を吸われたのが彼女である

それによって何かに目覚めた

らしい



ヴェルグル


謎の多い小人の種族

繁殖期になるとおおよそどんな動物とでも繁殖できるが女性のヴェルグルしか子供は生まれないという

その一代だけ強く親の能力の影響を受ける特性と生物としての特殊さからお互い人と距離を置くことが多いようだ

トキトたちのそばには十二人の集団が一緒に生活している

全員が同じ集落から人間にさらわれ、トキトとヒメに助けられたことで、それなりの恩を感じているようだ


リーダーの名前はシタニ


以下 ノマニ タコビ テイ イツ ワレ チデ ラハ カテ トタ ナッ スヨ の順に群れの地位が高い

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