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複数回転生した生きのいい魔王は、今回百合百合しい女学園を作りたいと思っていたとか?  作者: くるま
であいのおはなし

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どくほん

「殺っちゃったのヒメ!?」


「ま、まだ間に合います!!」


「ちょっと、いくら何でも埋める場所ないわよここ!」


 口々に、やって当然くらいの犯罪目撃をあらかじめ覚悟して同居人がやってくる。




「「「あっ」」」



 ところが。


 集まってみれば、特に変化も見られない。

 それどころか、むしろ普通に話しているっぽいのを見て、こっちが驚かれた。


「何もしてないですよ?」


 わざわざ怪しく言うな、図書館職員。


「これに手を出したの?」


 少し悲しげな眼のヒメ。


「そんなわけはないだろ」


「だよね」


 すごい納得。


「うわ、通じ合ってる空気で私さみしいなぁ」


 マホが茶化す気満々で二人を眺めてくる。

 真面目っぽい雰囲気だったのはどこに行ったんだ、お前。


「そもそも、よくここが判ったもんだね公務員」


「と、言われましても…」


 確かにわかるようにしておくとは言った。

 いったが、あれは嘘だ。

 そもそも、不法侵入して盗みに入っているのである。

 追ってこられたら、普通は逮捕だろう。

 だから適当なことを言ったのだが。


 今、来てる。


 いかにも、何事もないように。


「何人か隠して、おとりで出てきたりしてない?」


 すこし、不審を持っているような態度を見せてみる。


「そこは大丈夫です、確認済みです」


 なんでだよ、なんで言い切ったナイン。


「……なにかしたのトキトちゃん…」


 あんたの反応を気にして、ちょっと、あからさまにしたのに、普通の反応されたら傷つくでしょうが!

 トキトが内心で、愚痴を漏らす。


「…むしろ、最近引っ越してきた人で調べて、即引っかかると思いませんでした……市場での目撃情報も多いし…」


「……あ~ね…」


 目立つはしゃぎ方はしてたよ、確かに。

 もしかして、近所でも怪しいか、目立つ家として認識されているのか、ここ。


「とにかく、怪しまなくて結構ですよトキトさ……さん」


 そのわりに緊張してる?


「むしろここは死守する構えです、私は味方と思っていただいて、むしろそれ以上の関係と思っていただいても…」


 キッ。


 即時、きつい視線がまた発生する。

 そこはちゃんと怒るんだね、ヒメ。


「「まぁ冗談だが」」


 きれいにトキトとマホがハモる。

 仲のよさアピールに見られないか、内心二人とも困惑している。


「ヒメ、さん…ではなく、トキトさんに、探していたという本を私は届けに来ただけなんです」


「それだけでこっちは家中引っ掻き回すような大騒ぎだよ…」


 トキトだけにしても、心を穏やかにする暇が、ひと時すらない。

 ヴェルグルが戦いの予感でも感じているのか、わりと警戒で黙り込んでいるのが、救いといえば救いだ。


「…ですので、むしろ、どうしてマホ?さんとトキトさんが知り合えたのかが我々としては謎でもあるのですが」


「……そこはおいとこう」


 恥ずかしい。

 トキト、思い返すととても恥ずかしい。

 ナインがわざわざ疑問を口に出すのも、何かしら作為を感じないでもないが。


「ま、まぁ、私にくれるっていうのなら、貰うよ、うん」


「私を?私をですか?……という冗談はさておき」


 マホも、言ってる途中ですでに洒落にはならないものであることを察知できるレベル。

 漫画なら、『ゴゴゴゴゴ・・・』みたいな背景の中で会話している場面になること、請け合いである。


「一つだけお伝えしますと、おそらく、思っていらっしゃったことは、無理です」


「…あぁ、まぁ、わかってた」


「ああいった空間の転移を、たとえ無限にしても、この世界の内側を超えることは……おそらくは、できません」


 トキトにその言葉の意味は、重い。

 図書館のあのトラップの設備を、怪しくはトキトも思っていたのだ。

 国が作ったという、でかい設備のわりに、やることのショボさが釣り合わないに程があった。

 何やら空間の実験を、過去に大規模にしていて、それをやめて、こんな規模にしたのではなかろうか?

 マホが、わざわざ自分でこの結果を言いに来たのは、言わずにしまっておいた疑問の答えなのだろう。

 思いつく力の限りを使って、無限に近い距離の移動を試み。

 そして、やりたいことを軒並み失敗したのだろう、と。


「ま、ありがとうね」


「いえいえ…では、この本、大事にしてくださいね」


 少しだけ、寂しそうにマホが笑ったようにも見えた。


「決して、誰にも渡したり、読ませたりすることのありませんように」


 意味深な注意を残し。

 お礼ということで、作ったお守りを渡されてマホは帰っていく。


 トキトぶんは、好きな時期に自分で、また、すぐ作れるということで一つ。

 早く帰れ、という辛らつな言葉とともにヒメのひとつ。

 覚えがあったら秘密を守る方向で、という怪しげな一言とともにナインがひとつ。

 合計三つがマホのもとに。


 さらに数を作る手間は、トキトの重石に。


「どうせなら、私のは、心のこもったトキトちゃんの特別製にしてもらいたいもんねえ~」


「ですので、ここにひとつだけ、宝石のご用意がしてあります」


「共謀かよ……」


 作らないわけはないので、従うわけだが。




 そうして。


 その日は、読めない本を懸命に眺めながら。

 かつ、嫉妬にダメージを受けた、と、思ってもいないこじつけでずっと抱き着いて眠ったヒメの侵入をベッドまで許可しながら。

 夜通しでトキトは考えを巡らせた。


 理由もある。

 一部だが、魔王と言われていた時代の、前の前の世界の文字。

 これが、本にあるのだ。

 細切れのようになっているのは、おそらくは写本。

 つまり、だれかが原本を元に書き写したもののため。

 母国語の翻訳が混じり、数を経て翻訳だけが残り…と繰り返されたけっかだろう。

 重要なのは、この世界に、知っている世界の技術が確実に前もって入り込んでいることと…。

 転生者、という何かが、自分の前にいた証明を手に入れたことである。

 とんでもないことだ。

 



 そこに、さらに翌日。



「引っ越し、決めようか」


 ヒメが、とうとう決心した。


 トキトを呪いがかかった王都に居続けさせるという現実にいつまで目をつむるか、とはみんな思ってはいたが。

 決断は思った割ずっと早かった。



 楽しい思い出は変わらず作れたであろうに。



「場所は全く決まってないけど」


「時間は未定だけど、だと、しばらく変わりませんでいいんじゃないの?」


 ウブが、なかなかの切れの突込みをしてくれる。


「土地決め、かぁ……私は専門外なんでお任せだね」


 トキトはこれに関しては、口を出すような情報量もない。


「そこは、本当に、おいおいかもね」


 財布の内情も知っているヒメに一任するほかないだろう。


「そこで私からも一つお話しできることが」


 ナインだ。

 何をあらたまって。


「実はですね、みんなを攫った多重の組織と資金元、というのが、だんだん割れ始めていまして」


「ほうほう!」


 トキトの目が、この上なく輝いた。

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