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しゃにむに魔法使い  作者: 鉈の蛇


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4/5

4:ムシ

 昼食の時間になると生徒たちは食堂に集まる。

 料理に関する魔法使いは多い。大抵は町中で飲食店を営むものだが、中には学校や会社などで料理を作る仕事に就く者もいる。


 食事をもらうのに金は必要ない。

 買うのではなく無償で提供してもらうのだ。


「昔はこれを給食って呼んだらしいな」


 文吉が呟いた。

 興味を持った想太は彼の言葉に反応する。


「俺も聞いたことあるけど、給食って給食費が必要なんじゃなかったっけ?」

「そうだな。だから厳密に言えば同じじゃない」


「システム的にってことか」

「昔は魔法が存在しなかった。だから資源が有限だったし、資源を手に入れるためには金を払う必要があった」


「今じゃ魔法で無から有を作り出せる。物々交換が主流になったし、必要なものは申請すれば政府が渡してくれるからな」


「今時金を集めてるのは一部の好きものだけだ」

「でも昔は旅行とか行けたらしいし、どっちがいいのかな」


 広大な食堂には多くの生徒がいた。

 カウンターへ向かい、食べたいものを注文すれば大抵のものは出てくる。

 料理を受け取り、席を探そうとしたところで想太は声をかけられた。


「せんぱ~い! こっちで一緒に食べましょ~!」


 ぶんぶん手を振って佐々木ヶ原雫が手を振ってくる。

 やれやれという気持ち半分、嬉しくもあって、想太が彼女の方へ向かい出すと当然という顔で文吉もついてきた。


「あ、きつねうどん。ほんと好きですね~」

「そうだよ。何回食べても飽きないの」


 空いていたので想太は雫の隣に座る。

 その直後、笑顔の雫によって対面にいる女子生徒を手で示された。


「紹介します。友達の石田(いしだ)静希(しずき)ちゃん」

「は、初めまして」

「あ、どうも。よろしく」


 見るからに大人しそうな黒髪ロングの美女だ。人見知りしているようで想太が来た途端にガチガチに緊張している。

 間髪入れずに雫は、自分の対面にいる女子生徒を示した。


「こっちは黄間ヶ時(おうまがとき)琴音(ことね)ちゃん。二人ともこの学校で出会ったんですよ」

「どもー」

「おぉ……すごい苗字」


 もう一人は少し小柄で金髪おかっぱ、たれ目でどこか不思議な雰囲気を感じる。

 こちらは緊張していない様子で気楽にひらひら手を振ってきた。


 三人を改めて確認して、みんな可愛いな、と想太は思った。

 彼はそこそこ知り合いが多いと自覚しているが、改めて冷静に考えれば変わり者が多く、ひとまずノーマルに感じる彼女たちにほっとしている。


「雫と静希で似てるからって呼び間違えじゃだめですよ?」

「いやそもそも苗字で呼んでるから……いきなり名前で呼んだりしないって」


「でもこうなると名前呼びした方が面白くないですか? 間違えるか間違えないかのチキンレース的な」

「人の名前呼ぶときにチキンレースしたくないんだよ」


 想太にとって雫の態度は普段通りだが、静希は驚いて目を丸くした。

 想太に話しかける勇気はないため雫に質問する。


「えっと、二人は幼馴染とかなの?」

「違うよ。最近出会ったとこ」


「そうなの……? すごく仲が良さそうだから」

「んなこと言ったら私らもでしょ」

「そうそう、みんな仲良し!」


「佐々木のこの感じはやっぱり全員に対してなのか」

「というかお前、普通に流してるが何も思わねぇのか」


 隣に座っている文吉が声をかけてきて、想太は反応した。


「石田といえば1年三傑の一人だぞ」

「あっ、もう勝手に呼び名つけてる」


 文吉の興味は、彼女の美しさや魔法などの一点ではなく、総合的に見た石田静希の評価。おそらく好かれるつもりもない。

 彼の言葉に反応して雫が言う。


「あぁ~、やっぱり噂になってるんですねー」

「さ、さんけつ?」

「ケツがでけぇ三人の内の一人って意味だよ」


「ええっ⁉ そそそそっ、そんな⁉」

「違うちがう! そういう意味のあれじゃないから!」


 琴音が適当なことを言って静希が顔を真っ赤にして慌て出した。

 彼女を気遣い、咄嗟に想太が否定しようとするが、同時に雫がにやりと笑う。


「ん~でも静希はスタイルがいいし、ふむふむ、なるほど……」

「なっ、何を見てるの⁉ そんなことないよ! お、大きくないから!」


「いやでけぇはでけぇだろ」

「わぁ~んっ⁉」


「だ、大丈夫だから! えーっと、えー……大丈夫だから!」

「あははは! 先輩たじたじですねぇ」


 何はともあれ和やかな雰囲気であった。

 静希が恥じらっているものの、そこまで悪い空気ではない。

 ちょうどそんなタイミングで警報が鳴り響いた。


 市街地の外は危険が多いとされているが、警報が鳴ることは珍しい。大抵の脅威は町の外で排除されるからだ。

 警報が鳴るということは、外にいるムシが入り込んだということ。

 町と外とを隔てる壁を越えたことを意味する。


 想太はふと雫との距離が近くなっていることに気付いた。

 見れば不安そうな顔をしている。


「なんか……良くない感じですよね?」

「大丈夫だよ。ムシが侵入してきても結局は軍が――」


 言い終わる前に天井が破られ、何かが降ってきた。

 いくつもの悲鳴が上がる一瞬にそれは着地する。


 骨格は人間。二本の足でしっかりと地面を踏みしめている。

 だが見た目は昆虫人間といった様子で、バッタのような顔をしていた。

 人でもなければ純粋な虫でもない。外宇宙から来たそれは様々な呼び名が与えられているが口頭では大抵“ムシ”と呼ばれる。


「うわー……ほんとにムシですね」

「だねぇ……でもまあ、魔法使いはたくさんいるから」


 ムシは人類にとって脅威とされている。

 それ故にムシに遭遇した場合は魔法の使用が推奨されていた。

 戦うにせよ逃げるにせよ、全力を尽くせというのが通例だ。


 誰よりも早く魔法を使用したのは静希だった。

 何かする前に制止しなければならないと咄嗟に判断したのである。


 彼女がキッと睨みつけた瞬間、ムシの頭部が石化した。一切の予兆を感じさせずに外から内まで石になってしまい、もはや思考することも動くこともできない。

 すでに勝負は決していた。

 ほとんどの生徒が何が起きたかを理解できていなかっただろう。


 もう一人、誰かが魔法を使った。

 空間に裂け目が生まれてムシの体を放り込むと消してしまう。

 誰が使ったかわからない。問題は早くも解決された。


「終わったなぁ」

「ほんっとに魔法使いって……逆にかわいそうになりますよ」


「しょうがないよ。やらなきゃ攻撃されるんだから」

「ほんと世知辛い世の中ですねー」


 呆れた口調で言う雫に言い返す言葉がない。

 想太も同意しつつ、自分以外の魔法使いの恐ろしさを思い知った。

魔法名:石

石を生み出すことができる。

見たもの・触れたもの・息を吹きかけたものを石化できる。

一片でも石化できれば内部まで石化可能。

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