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なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話  作者: TB
ダンジョンの真実

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第87話 SS 永倉新八

 この世界にダンジョンが現れて既に三年が経った。

 この時代の中で俺は新選組の隊士として、二番組の組長として生きてきたが、そんな物はとっくに消え失せていた。


 俺は、三年前に土佐藩の坂本竜馬と岡田以蔵が密会しているとのタレコミがあったので、二番隊を率いて現場を急襲し捕縛をする為に屯所を出発した。


 岡田以蔵は土佐藩の藩士で、武市半平太の命令により、多くの要人暗殺に関わっていると目されており、新選組の捕縛対象としては、薩摩藩の中村半次郎と共に『人斬り以蔵』『人斬り半次郎』と呼ばれ、最上位に置かれていた。


 当然捕縛手段としては、生死を問わずだ。


 今日のタレコミによると、以蔵は武市の命令で坂本から、活動資金を都合つけて貰うための、密会であるらしい。


 坂本竜馬は、ここ数年国内において暗躍している武器商人だ。

 土佐訛りが酷いくせに、妙に人を引きつける巧みな弁舌により、様々な勢力を丸め込み、この時代の最新鋭艦で有る黒船を唯一民間で所持し、武器を売ることで莫大な財を為している。


 こいつのたちの悪い所は、新選組の後ろ盾でもある会津藩とも繫がりがあり、表立っては敵対できない所だ。


 更にこいつの顧客は国内全域に渡り、戦をしている藩の装備は、敵味方ともに坂本が準備しており、ぶっちゃけて言ってしまえば、坂本が勝たせたい方に、より良い装備を売りつけている。


 今の日本は坂本の掌の中で弄ばれているようなもんだ。


 それ故に今回の以蔵との密会のタレコミは価値がある。

 以蔵の捕縛に巻き込まれた形にしてしまえば、始末をしてしまっても、『しょうが無かった』で片付けることが出来るからだ。


 情報によると、坂本は北辰一刀流の免許皆伝で腕も立つらしいが、誰も坂本が実際に刀で立ち会う姿を見たものは居ない。


 俺自身は、神道無念流の免許皆伝であり、剣の腕では隊士の中でも誰にも負けないほどの自信はある。

 唯一俺と匹敵するほどの腕だった芹沢鴨は、先日近藤局長との、派閥争いに敗れて暗殺されている。


 沖田は強いがまだ若く経験が足らない。

 あの才能は後数年の時間があれば、俺よりも強くなるであろうが、最近は体調を崩していることが多く、もしかしたら長くないのかも知れない。


 話は戻る。

 タレコミの会った場所は、坂本がよく利用する料亭だ。

 俺達は以蔵と坂本が中に入っていたのを確かめると、二番隊の隊士を半分に分け、外での包囲をする組と、突入する組とに分けた。


 そして、俺自身は突入組として踏み込んだ。

 その時だ。


 部屋の中心部に、黒い霧が立ち込めた。

 

 「妖術か?」と思ったがどうやら違ったらしい。


 そこには洞窟が現れていた。


 坂本と以蔵は洞窟の中に飲み込まれたようで、俺達も突入することにした。


 中に入ると見たこともないような魔物が存在している。

 子供のような背格好だが、凶悪な顔つきの生物が、脇差を一回り小さくしたような刃物で襲いかかってきた。

 俺は難なく退け、袈裟斬りに切り裂いた。


 すると再び黒い霧が現れ、霧が晴れた後には、何も残されていなかった。


「いまのは何だったんだ?」と、思い周りを見渡すと、隊士の叫び声が聞こえた。

 柔らかい半透明上の生物? なのかは解らぬ物体が何かを吐き出し、それを被った隊士の身体が、見る間に煙を上げて溶けて行く様子が見えた。


「全員離れろ」と命令を出し、俺はその半透明の物体に向かった。

 周りを見渡すとかなり大量の同じ様な物体が居るのが解る。

 俺が倒した子鬼のような、生物も結構な数が見て取れる。


 液を浴びてしまった隊士は、既に事切れていた。


 坂本と以蔵の姿を探すと、奥の方で子鬼達と戦っている事が確認できた。


 どうやらこの洞窟は彼奴等とは関係ないらしい。


 それよりもこの半透明の物体だ。

 良く見ると、中心部分に赤い光がみえる。

 恐らくあれが弱点だろうと思い、隊士の持っている槍を借り受け、一突きした。

 無事に赤い石のようなものを砕くと、再び黒い霧に覆われ消滅していった。


 全員に指示を出す。


「真ん中にある赤い石が弱点だそこを狙えば倒せる。くれぐれも溶解液を浴びることのないように、気を付けて当たれ」


 敵の倒し方さえわかれば任務のほうが優先だ。

 俺達は以蔵の捕縛に向けて進んだ。


 坂本と伊蔵が魔物と戦っている周りを取り囲む。


「以蔵おとなしく縄につけ、多くの要人暗殺についての嫌疑がかかっている」


 と伝えると、坂本が言葉を発した。


「以蔵だけかい? 俺は捕まえないのかい?」


 と聞いてきたので、俺は本音で伝えてやった。


「抵抗してくれれば、一緒に斬捨てて面倒が省ける」


 その間にも廻りで、魔物が発生してこちらに向かってくる。

 それを倒しながら包囲網を狭めていく。

 坂本も魔物を倒しながら、俺への注意を逸らさない。


 全部で三〇匹ほどの魔物を倒した頃に、坂本の立っていた辺りから、光の柱が立ち上がった。

 それとともに、鎧武者が現れた。


 この国の鎧とは違い全体が金属質の鎧だ、以蔵が反射的に斬りかかって行ったが、刀があえなく折れた。

 坂本は、以蔵に体当たりをし、鎧武者から距離を取らせた。

 俺は坂本の方に向かい坂本と以蔵を牽制しながら、他の隊士に指示を出す。

 その頃には外で包囲に当たらせていた隊士も、こちらに来ておりこちらは、二〇名ほどの戦力になっていた。


「八人で取り囲んで、一斉に槍と刀を突き入れろ、関節部分なら攻撃も通るはずだ」


 隊士が八人で取り囲み武器を構えると、鎧武者も武器を構えその場で横に二回転ほど振り回した。


 一瞬にして取り囲んだ八人の隊士の胴体が上下二つに分断されてしまった。


 俺は激しく後悔した。

 この鎧武者の実力が全然解らなかったが、俺達が相手をできるような存在では無かった。


 その後は酷い展開だった。

 俺の目には確認できないほどの速度で鎧武者は次々と仲間を倒して行く。

 瞬く間に坂本と俺と以蔵の三人を残し、全員が殺された。


 その段階で、坂本が胸元から、拳銃を取り出し鎧武者を撃った。

 その弾丸は何故か問題なく鎧武者の眉間を撃ち抜き、それとともに、俺達三人は洞窟から外に出された。


 坂本が呟く「始まっちまったな」


 俺は坂本に尋ねる「今の現象が起こることが解ってたのか?」


「解っていたぜよ、これからは日本だとか、倒幕だとか言う話をしてもしょうが無いぜよ、ここで一緒に居たのも何かの縁だ、あんた名前は?」

「新選組、二番隊組頭、永倉新八だ」


「そうか、永倉さんあんたこのまま新選組に戻っても、二〇人の部下を失った責任取らされて切腹させられるだけだろ、俺に付き合え」


 それから三人でダンジョンの討伐を始めた。

 何故か坂本は様々な知識を持ち合わせていて、スキルやJOBと言った知識、装備品等を用意しながら、俺と以蔵を鍛えた。

 坂本自身はほとんど戦闘に参加しない。

 もっぱら戦闘は俺と以蔵が担当した。


 世界中で同じ様な洞窟が現れて、人々を襲って行くらしいが、坂本の話では、この時代では相当の運に恵まれない限り生き残れることはない。

 と、言い放ち実際に三年が経った時には、俺達三人以外の人間を見る事すら無いような状況になった。

 世界中何処に行っても見かけるのモンスターばかりだ。


 坂本が「最終ダンジョンが現れたから、そっちで待つぞ」と言いだしたので「何を待つのだ」と思ったが、今更そんな事を気にしてもしょうがねぇかと思い従う事にした。


 ダンジョンの中に入ると、懐かしい姿が出迎えてくれた。

 近藤さんだ。

 だが俺の世界の近藤さんでは無いらしかった。

 それでも俺は、久しぶりの懐かしさから近藤さんと合流することにした。


 以蔵は自分の実力を試したいと言い出し、近藤さんと戦う選択をした。

 近藤さんはそれなら、俺が認めてやる階層まで降りてきたら、戦ってやると言い俺を連れて最下層に転移した。


 結局、以蔵は八十層まで坂本と一緒に降りた時に、近藤さんに相手をして貰えたらしい。

 一撃で破れてそれからは、近藤さんを慕い付き纏っている。


 このダンジョンの中には、様々な世界からその世界を代表する強者が集まっている。

 これだけの者を集めて何をする気なんだろうと思うが、下層の方では、一般の人も生活しているし、退屈はすることがないから、まぁいい。


 ……毎日、何気なく過ごしながら、既に2500二千五百年の時が過ぎた。

 一般の人達は当然寿命もあり何十と言う世代を、超えてきている。


 俺は、歳を取ることもなく、二千五百年を剣の修業に当てている。

 しかしこのダンジョンに入ってからは、レベルを上げることが出来ない、剣技は洗練されて来たとは思うが、レベルアップをする事に比べれば微々たるものだろう。


 たまに会う坂本は、飄々と過ごしている。

 他の世界から来た幕末志士達とつるんでいることが多い。


 坂本が言っていた「最終ダンジョンで待つ」の言葉は何を待つのだろう?


 新選組の連中は、三つの世界から集まっていた。

 合わせれば結局実力者上位8名だが、近藤さんの能力が高すぎるのが気になる。


 ◇◆◇◆ 


 そして、坂本が待つ者たちが現れたようだ。

 圧倒的な力を持ち、どんどん【D155】を攻略してくる。


 八十層で出迎えた俺も一撃で倒されるほどの奴らだ。

 もしかしてこいつらは、近藤さんよりも強いのかも知れない。

 二千五百年の時をダンジョンの中で待ち続けた俺は、久しぶりに外の世界を見たい事もあり、こいつらに付いて行く事にした。


 外の世界は実に楽しい。

 俺の居た時代より遥かに進歩した世界で、飯もうまいし、酒もうまい、女性達もとても美しい。

 しかし俺が訪れた家にいる十三人程の女性は、みんな岩崎さんの嫁らしかった。


 唯一、死ねと思った瞬間だ。


 まぁこの家の外に行けば、美しい女性はいくらでもいる。

 気にしないことが一番だ。


 翌日には、晴明と信長もこの進化した世界に連れてこられた。


 それから一週間ほどの内に、信長は随分この世界に馴染んでいる。

 既に見た目の服装や髪型もこの世界に合わせ、毎日討伐部隊の斉藤和也と遊びに行ってる。

 スマホを操り新たに知り合ったこの世界の女性達との、チャットを楽しんでいる姿をよく見かける。

 羨ましい、俺も習いたい。


 そして、遂に近藤さんが倒された。

 近藤さんに後で聞いたら、予定調和だと言ってた。

 俺が感じていた違和感、土方と、沖田と、斎藤一が実は近藤さんのスキルで居るように見せかけていただけで、岩崎さんに、倒された事で、やっと本来の姿を取り戻し実体化出来たらしかった。


 今まで俺が見ていた土方達は、あくまでも近藤さんがイメージした土方達であって、人間臭さが全く感じられなかったが、岩崎さんにより復活させられた土方達は、俺の記憶にあるままの、クソ真面目な土方、笑顔が爽やかな沖田、バカ騒ぎの好きな斎藤がちゃんと自分の意志で行動できている。


 これなら、俺も昔のように仲良くできそうだ。


 色々世話になったし、侵略者との戦争は俺と新選組が片付けてやる。

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