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なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話  作者: TB
ダンジョンの真実

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第88話 SS 柳生十兵衛

(柳生十兵衛)


 俺は将軍家指南役として、柳生新陰流を高め最強と呼ばれる事のみが、生きがいであった。


 ダンジョンと呼ばれる存在が現れるまでは……


 ダンジョンは家光公の御前で行われた、当代の武芸者を集めた御前試合の当日に突然現れた。家光公が座している場所が、いきなり黒い霧に包まれ霧が晴れた跡には、洞窟が出来ており家光公の姿はなかった。


 この御前試合が始まる前に、真田の生き残り共が家光公を狙っているとの情報をもたらされており、恐らく奴らの仕業であろうと予想した。

 しかし真田も手練だが、こちらも服部半蔵が万全の体制で警備にあたっていた筈だ。


 俺の目からは、真田の連中より半蔵と奴が率いる影の軍団のほうが一枚上手だと感じていた。

 どうやってこの警備をくぐり抜け(おとし)めたんだ。


 しかし、当代の武芸者が勢揃いしたこの場での凶行は、生きて帰れると思っての行動ではないだろうな。

 洞窟の中へその場に集っていた武芸者が揃って向かう。

 その場には既に事切れた家光公の姿があり、その側に居たのは織田信長と名乗る者であった。


 伝説に聞く大大名である。


 この幕府の開祖、家康公ですら絶対に逆らうことの出来ない人物で、志半ばにして部下の明智光秀に因って本能寺で討ち取られた筈の信長公が何故この場にいる。


 しかも、かなり若年に見える。


 享年で50に届いていたはずだが、この場で信長を名乗る人物は精々、30代に差し掛かろうかという程度の年齢でしか無い。

 しかし体から発する圧倒的な強者の雰囲気が、言葉が嘘ではない事を感じさせる。


 俺達が信長公を名乗る人物と対峙してると、入り口が急激に騒がしくなった。

 半蔵達の軍団が他の忍者集団と戦いながら、洞窟の中に飛び込んできた。


 そいつらも既に事切れた家光公とその前に佇む信長公を見て動きを止める。


 その時だ。


 廻りに黒い霧がかかり、小鬼のような化け物とブヨブヨの寒天のような塊が現れ、襲いかかってきた。

 

 小鬼は問題無く斬り伏せた。


問題は寒天のような奴らだったが、信長が手から炎を発生させ一気に焼き払った。


 忍術なのか? と思ったが、忍術とも少し違う気がする。


 信長が口を開いた。


「俺は、魔物と戦っていた時に、呑み込まれて気がつけばここに居た」


 家光公を指差し「こいつは俺にいきなり刀で斬りかかってきたから、返り討ちにしたが誰だこいつ?」


 唯一、生前の信長公を見かけたことが有った俺の父、柳生宗矩が「信長公、お久しゅうございます。石舟斎が子の、柳生宗矩でございます。私が若年の頃のお姿と変わらぬお姿で一目で分かりましたぞ」


「で、あるか。宗矩は覚えておるが、何故じじいなんだ?」


 どうやら、本物の信長公であるらしい。


 その後何匹かの魔物が現れ、それを倒している内に光の柱が立ち上がり鎧武者が現れた。


 総勢50人程居たこちらの手勢は見る間に20人ほどが倒されたが、真田の忍者軍団と、半蔵の影の軍団が協力して足止めをした所を、信長公が再び炎を操り焼き倒した。

真田の連中は、信長公に与する事が生き残る道だと判断したようだ。


 すると、全員の視界が一瞬途切れ洞窟の外に出された。


 元通りの屋敷となっていた。


 将軍をいきなり殺された事で現場は騒然としたが、相手が信長公とあっては、どう扱ってよいかここに居る人間たちでは判断ができない。


 結局は、父、宗矩の差配で家光公は急病による逝去として扱われ、信長公は柳生家が世話をする事で話が落ち着いた。


 それから、信長公の話を聞きダンジョンというものの存在を知らされ、再び江戸の町に五番目のダンジョンが現れた事で、一気に話が現実味を帯びた。


 信長公は発想がとても柔軟で、寛永御前試合の場でダンジョンマスターに就任したらしく、多彩なスキルと言われるものを身に付け、俺達には聞こえないダンジョンコアなる者との対話により、様々な知識を授けてくれた。


 日本の国だけでなく世界中に現れるダンジョンを、結局は御前試合に参加していた人物を中心として信長公が纏め上げ、俺達もいくつかのダンジョンの討伐で順番にダンジョンマスターへと成っていった。


 そして三年が過ぎた頃には俺達の廻りでは、なんとか生き残っていた人物も居たが、日本の国以外では何処に行っても、モンスターしか見かけることの出来ない世界へとなっていた。


 信長公と共に南極と言われる場所に向かい、【D155】と呼ばれるダンジョンに突入をした時に、そこで現れた近藤と名乗るものにより、永遠とも思われるダンジョン内での生活が始まる事となる。


 俺達の世界が終焉を迎える時もどうする事も出来なかった。


 何百年に一度か新たなる世界の者が訪れるが、大抵は実力も足らず切り捨てて終わった。


 何組かの見どころのある連中は、俺達と同じ様にこのダンジョンの中で、永遠の時を過すことになる。


 しかし、今回の奴らはちょっと違った。

 まず人数が桁外れに多い。

 何故ここにそれだけの人数を育て上げた上で辿り着けるのだ? それに一番前に居る奴らが、明らかにおかしい雰囲気を出している。


 まるで初めて信長公や、このダンジョンの近藤にに会った時のような絶対的な自信が見える。

 信長公、近藤そしてこの岩崎と名乗る人物は、俺から見ても別次元だ。


 近藤からは「無理して倒す必要はない、十分な実力があると思えば通してやれ」と言われているが、戦ってみたい気持ちは抑えられない。


 俺達に相対したのは、東雲と名乗る美しい女だった。


 小次郎、東郷、松山、そして武蔵までもが、東雲一人に退けられた。

 半蔵が登場したことでようやくこの女の快進撃は終了したが、この女より以上に強そうな雰囲気を持った者たちがまだ5人ほど居る。

 その中では一番相手をしやすそうな奴が俺の相手となった。

 前田慶次と名乗る男だ。


 俺の記憶でも聞き覚えのある名前だ。

 戦国武将として名を残した傾奇者の名のはずだが、何故こいつらの中にいるのかは解らぬ。


 そいつは十尺はある朱槍を振り回し、襲いかかってきたが冷静に見極め、槍を叩き切るつもりで刀を振り下ろした。


 信長公に作ってもらった自慢の刀だったが、槍は更に業物だったようで刀が折れてしまった。

 しかし慶次も槍を取り落し、俺に向かって素手で殴りかかってきた。


 俺も体術を駆使して迎え撃つが、このレベル千五百五十に達した俺の攻撃すらも凌駕する体力を持っていた。

 結局勝負は引き分けた。


 これは見届ける必要があると思い同行を願い出た。

 信長公も既に同行者と為っていたようだったことには驚いたが、きっと信長公の事だ。

 全力を出す前に勝負をやめて観察することにしたのだろう。


 そして、迎えた最終層でも圧倒的な実力で、近藤すらも撃破してみせた岩崎と言う人物。

 四千年の時を超えて、再びダンジョンの外での行動が出来る事も嬉しいが、岩崎殿以上の実力を身に付け必ず最強の座を手に入れると心に誓う。


 岩崎殿が俺のために刀を用意してくれた。

 以前の信長公に作っていただいた刀以上の力を感じる。


 この刀『真影』に誓って俺は今度こそ世界を守る。


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