第82話 D155⑦
七月十日 八時
北九州特区のホテル街でも最高級のスイートルームで朝を迎えた。
卑弥呼と紗耶香が一緒にいる。
何故か卑弥呼が二人で一緒がいいと言い出したためにこうなってしまった。
俺は凄い良かったんだけど、初めてがそれで良いのか? 卑弥呼……
今日は1LDKマンションの建設を予定している。
三人で朝食を食べ家に戻った。
既に、建築資材は運び込まれていたので、早速マンションを建てることにする。
澤田さんがインフラ関係の業者を従え、図面を持って話しかけてきた。
「岩崎さん、今日はこの後の予定は決まっているんですか?」
「いや、別に決まってないぞ。何か急ぎの仕事とかあるのか?」
「関東の広域防衛都市の開発が、中々予定通りに行かずに、困っているんですよね。整地だけでも手伝って頂けませんか?」
「範囲広いからなぁ、解ったよ今日の午後は出来る限りやってしまおう」
関東広域防衛都市は、内部に既存の防衛都市を十五箇所も抱えているため、北九州のような効率的な街並みに出来ないのが少々残念だが、東京を有するこの地域の復興は、日本全体に活力を与えるためには後回しに出来ないとの政治判断がされている。
整地した後の瓦礫は、理以外にはただの産業廃棄物なので、九州の開発に利用させてもらうことで手を打った。
そして俺は4LDKマンションに隣接する場所でスキルを発動した。
【土木錬成】
いつものように図面を読み込み素材を指定すると、敷地が激しく光り輝き二十階建て各階六部屋の1LDKマンションが出来上がった。
早速待機していたインフラ関係の業者が、外部との繋ぎ込みと内部の電気設備の確認などに、慌ただしく動き始めた。
その光景を見ていた、新八、信長、半蔵、卑弥呼、ジャンヌは初めての出来事に口が開きっぱなしになったまま眺めていた。
翔達のパーティーも見学に来ていて、今は翔と省吾は男の一人暮らしで4LDKを使っているから、勿体無いので1LDKに引っ越したいと言って来たので、許可をする事にした。
萌と桜は家族が一緒なのでそのままで良いそうだ。
現状、理の家に住み込みになってるマイケル達も1LDKに引っ越してもらい、ルドラ達と【PU】の討伐班の4LDKをシェアして使っている連中も、全員1LDKに引越す事になった。
新八、信長、晴明、半蔵、ナポレオンは1LDK、卑弥呼とジャンヌは4LDKの部屋をそれぞれ与えた。
翔達のパーティは、最近は翔の装備製作ですごく稼ぎが良いみたいで、4LDKマンションの二階にある事務所をパーティの事務所として使い、そこで装備製作をやっているそうだ。
夢さんが子供達の面倒を見てくれている保育施設の隣だから、桜と萌が、夢さんのお手伝いをしに行きやすいので、この場所にしたそうだ……
昼食後に、俺は澤田さんと藤崎さん、紗耶香、東雲さんを伴い関東に向かった。
都市計画図に従いどんどん整地をしていく。
大量の瓦礫はとりあえず阿蘇のカルデラの中に仮置する場所を作り、転移門で繋いだ。
夕方七時位までを費やし、東京都と、神奈川県の部分の整地を完了させ今日の仕事を終えた。
この関東広域防衛都市は、完成後は三千万人の人口を抱える世界でも最大規模の都市へと生まれ変わる予定だ。
◇◆◇◆
七月十日 二十時
「今日は関東の整地をやって貰ったそうだな、助かった。ありがとう」
「恐ろしく広域の整地だっただろう? ちゃんと工事費は出るからな。澤田と藤崎がきちんと算出するから安心してくれ」
颯太と達也から、今日の整地に対してのお礼を言われた。
「その辺は一度も心配したことなんか無いぞ」
新八が明日の予定を聞いて来た。
「岩崎さん達はもう百三十五層まで進んだんですね、明日で百五十層まで行く予定ですか?」
「あーその予定だな、なにか気になることでもあるのか?」
「新選組で一番危険なのは芹沢鴨です。あの男は手段を選びません。気を付けて下さい」
「芹沢鴨って初代の局長だよな? 今は近藤の中ボスをやってるのか?」
「当然違う世界から来ているんですが、あの男の性格上近藤さんに従うのがどうしても納得行かないんですよね。近藤さんが何故許しているのかも解らないんですけど、しかも芹沢鴨の世界から一緒に来ているメンバーが、組み合わせ的に不思議なんですよね、共闘する訳がないメンバーと言うか」
新選組
山南敬助
伊東甲子太郎
薩摩藩
西郷隆盛
大久保利通
中村半次郎
長州藩
桂小五郎
高杉晋作
村田蔵六
土佐藩
武市半平太
中岡慎太郎
庄内藩
清河八郎
このメンバーと共に、近藤さんの元に現れてるんですよ。
世界が違うので関係性が違うのかも知れませんが、私の世界だと顔を合わすだけで、モンスター討伐より先にお互いが殺し合いを始めてしまう組み合わせです。
「幕末だけで三つの世界から集まってるのか?」
「俺と以蔵と竜馬の組が一つ、芹沢鴨の組が一つ、近藤さんの世界の組が一つですね」
「それだけ人の思いのパワーが大きい時代だったんだろうな」
「ただ…… この組み合わせの中に俺と一緒に来た、坂本竜馬を放り込むと不思議と機能するんです」
「新八の話からすると竜馬は魔道具や武器も作りそうだよな?」
「その通りです」
その話を聞いて鹿内さんが竜馬に対しての予想をした。
「なんだか坂本さんって、岩崎さんにすごく近い気がするわね、きっとその人戦闘力も恐ろしく高いと思うわ、何かの理由で隠してるのかもね」
「明日行ってみれば解るさ、俺は展開が楽しみだ」と、達也が楽しそうな表情をした。
◇◆◇◆
七月十一日 九時
百三十六層からの攻略が開始された。
【D155】の討伐を始めてから仲間になった人物の中では、ジャンヌのみが唯一中ボス扱いにならず、戦うことも出来た為同行している。
十兵衛も引き続き見届けたいと言い付いて来た。
この辺りの敵になると最前線の三十名以外では、討伐が難しくなる為五百名は大阪城で待機させることになった。
百四十層に到達した。
江戸時代の長崎出島を思わせる光景であった。
「この光景に関係しそうなやつは、恐らく竜馬だな」
中心部分に広がる扇形の人工島に、大きな外輪船が停泊していた。
人の姿は見当たらないので、外輪船の中に入って行く。
船内に入ると大きなテーブルを囲むように十人の人物が見て取れた。
「下の階層に向かいたいんだが、出来ればこのまま通して欲しいが構わないか?」
「久しぶりのお客さんだ。このまま素通りなんてつれない事を言うなよ」
「丁度お客さんを、どうやってもてなすのが良いのかを話してた所だ。しかし思ったより早かったのぉ」
達也が少し挑発的な態度で返事をした。
「戦うでいいのかい?」
「ちくっと聞かせて欲しいんじゃがの、ここに来るまで倒してきた奴らは殺したのか?」
「誰一人殺してねぇな、モンスターは別だぞ」
「そいつらはどうしたんだ? ここには十兵衛しか来てないようだが」
「この中じゃレベルも上がらねえから外の世界で鍛えてもらってるぞ」
「仲間になったって事か?」
「その通りだ」
「ほぉ、実力は十分あるんじゃろうな、それだけで一番下がどうにか出来るとも思えんがの」
「のんびりしてる気も無いから通してくれねえんなら、力づくで通るぞ」
「そっちの代表は、お前さぁで良いのか?」
そこで俺は達也を下がらせて前に出た。
「俺だな、あんた坂本さんだろ? 条件を言え。俺は出来れば仲間になってほしいと思ってる。このダンジョンは俺達にとっては通過点だ。この先に備えたい」
「ほぉこの先を理解してるのかい? それを知った上で先に進もうとするとは凄いな。俺はこの先に待っている滅亡を回避するために、ここで全てを止める道を選んだんだが」
「ここで止めるとはどう言うことだ? 」
「この【D155】の討伐がされちまうと、侵略プログラムが起動するって事だな」
「討伐しなければ、この世界は助かるのか?」
「この世界と次の世界は無理だな、だが始まりの世界は残る可能性が高い。絶対では無い所がわしも迷っとるとこじゃ」
「俺はこの世界も次の世界も守ると決めた、一緒に来てくれ」
「面白いのぉ、西郷さん、桂さん、武市さんどう思う?」
「おいどんは、出来れば争いはなかほうがよか」
「私は、近藤を本当に倒すだけの力があるのならそれも又良しだ」
「以蔵さぁと半次郎さぁに勝てるなら見てみたいな」
その言葉を受け返事をした。
「解った、こっちも二人でいいかい?」
「全員でも相手にならんさ、死ね」
そう言うや否や斬りかかってきた以蔵を、TBが瞬時に最大化して踏み潰した。
肉球の間に挟まってジタバタしてる以蔵に声をかける。
「まぁいきなりの攻撃が卑怯だとか言う気は毛頭ないが、お前じゃ弱すぎる。一番強いのは坂本さんだろ? 俺が相手するよ」
「何故そう思う? 俺は刀なんかもう2500年以上抜いたこと無いんじゃがのぅ?」
「勘?」
「いいだろう、俺が相手をする」
竜馬がずっと手を突っ込んで居た胸元から、手を出すとリヴォルバーの拳銃が握られていた。
それを真上に放り投げると、ビットのように頭上に展開し100丁ほどに分裂して一斉に理をめがけて攻撃を開始した。
アダマンタイン製の銃弾とミスリル製の銃弾が一斉に襲いかかってきて、ミスリル弾は、更に各種属性攻撃に変化し、一瞬で一万発ほどの攻撃を放ってきた。
「この程度の攻撃が受けれんようじゃ、話にならんぜよ。無駄に殺したくないから残りのやつは帰ったほおがええぞ」
辺り一面を覆っていた煙が晴れると、理が何事もなく立っていた。
「面白い武器だな、一緒にもっと凄いの考えようぜ、気に入った」
と、言ったかと思うと、上空に攻撃を受けながら展開していたアポロンから竜馬の足元に向けて特大の攻撃を放った。
一瞬で乗っていた外輪船は蒸発し、全員が海に投げ出された。
理だけはTBが瞬時に拾い上げ出島に着地させた。
その後で、重力操作を使い全員を出島に拾い上げ、生活魔法で乾かした。
「まっこと桁外れぜよ、どうやって防いだ? 結界程度じゃ防ぎきれんはずじゃが」
「内緒だ、仲間になったら教えてやるかもしれん」
「まぁしょうが無いぜよ、ついて行こう。西郷さぁ達もええかの?」
「行きもっそ」
「私は今は保留だ、最後まで見届けてから結論を出す」
「俺は異論はない」
西郷、桂、武市がそれぞれ返事をした。
◇◆◇◆
取り敢えずは一行に幕末志士達を加え、下層を目指す。
「理、もう少しスマートな方法は無かったのか?」
と、颯太が話し掛けて来た。
「あったけど、インパクトがデカイ方が良いかと思った、中途半端だと半次郎さんとか絶対止まらなさそうじゃん、高杉さんも気の短い人のイメージあるしさ」
俺が攻撃を躱した方法に興味を持った達也が聞いて来る。
「俺の能力と同じ様な感じか? さっきの攻撃を受けた方法は?」
「もっと簡単だがな、転移門広げただけだ。前から来るって解ってたら大した問題じゃない」




