第81話 D155⑥
七月九日 八時
今日と明日は、ダンジョン攻略は休みだ。
1LDKマンションは資材の関係で明日になるから、今日の午前中は武蔵さん達の武器でも作ろうかな。
朝食の時に武蔵さんに希望の武器を聞く。
「拙者は、とにかく頑丈な武器を望む、大小のバランスは脇差を少し長めに頼みたい」
「ちょっとこれを持ってみてくれ」と言って理が使っているプルートと脇差を持たせてみる。
「この刀は何だ、持っただけで力が湧き上がってくるのが解る。凄いな。刃渡りも厚みも申し分ない、脇差はもう少し尺が欲しいな。だがこれも凄い業物だ」
「イメージ的には大体解ったよ。颯太や東雲さんの剣は他の人が持っても装備の性能が発揮されないようになってるが、俺のプルートは誰でも使えるからな、この刀は成長装備に為っていて、装備する人間のレベルが上がると、それに応じて刀自体の攻撃力が上昇するんだ」
「理殿は武人としてだけでなく、鍛冶師としても最高峰に位置されるのだな」
「大工さんとしても世界一ですよ。私の旦那様としてもね」と、鹿内さんが突っ込んできた。
「岩崎殿は一体何人の妻を持たれておるのだ? 羨ましいでござる」と聞かれた。
「妻は十三人だけど、俺が色ボケな訳じゃないからな、今日は武蔵さんと十兵衛の刀を作ろうと思うから楽しみにしておいてくれ。もう一つだけ聞かせてくれ、武蔵さんの覚醒JOBはなんだ」
「俺の覚醒JOBは心眼師だ。見えなくても問題なく戦えるJOBだな。自分に対する悪意に反応できるんだが、お陰で嘘をつかれたりすると勝手に解ってしまって結構不便な事もある」
「中々便利そうなJOBだな、解った」
それから素材を準備してURの大小を作り上げた。
通常の日本刀では三尺三寸、百センチメートル程度が基準だが、今回武蔵に用意したのは大太刀と呼ばれる五尺、百五十センチメートルの大刀に三尺の脇差だ。(通常なら三尺は大刀のサイズ)
素材はヒヒイロカネをメインに使った。
URで作ると折れる事は無いので、厚みはそこまで無い。
青黒く光る刀身は重厚感がある。
マスターソードを融合錬成してMR装備に進化させた。
続いて、十兵衛用の大太刀これは刀身は四尺120㎝程の物を造る。
武蔵の物より反りが少なく若干肉厚だ。
もう一振り小次郎用の大太刀も打つ。
先反りの大太刀だ。
二メートルに近い六尺六寸の細身で厚みも薄い。
アダマンタインの特性で硬度が高いが、URなので欠ける心配はない。
それぞれMR装備に進化させた。
ここまでで昼になったので、今日の鍛冶は終わりにした。
昼食を食べた後で武蔵に早速作り上げた大小を渡す。
「どうだ武蔵、名前をつけてやれば、覚醒するぞ」
「凄い、この刀を俺が使えるのか。銘は二天龍と二天虎だ」
青黒く重厚な刀身は更に深い色合いに変わり、深海を覗いているような気分にさせる。
「気に入って貰えて何よりだ。これから宜しく頼む」
それから武蔵を伴い【G.O】に乗り、一度藤吉郎の世界の大阪城に向かった。
慶次に案内させて、十兵衛と小次郎の元に行きそれぞれの刀を渡す。
「これ程の刀が存在できるのか……銘は『真影』だ」刀身は漆黒に染まった。
「見事だ。銘は『燕空』」スカイブルーの波紋が浮かび上がった。
武蔵も自分の刀を十兵衛たちに披露し三人で【D154】に潜っていった。
「半蔵さんいるかい?」と誰も居ないはずの空間に呼び掛けてみた。
「ここに居る」
「気配消し過ぎだって、半蔵さんがどのタイプの武器が良いか解かんなくてさ。直接聞いたほうが良いと思ってな、ちょっと俺達の世界へ遊びにきなよ、半蔵さんみたいに何でも出来る人には、固定観念で考えるより、新しい何かを見つけるほうが良いと思うからさ」
「ではお言葉に甘えよう」
理は再び【G.O】に乗り込み半蔵とともに家に戻った。
信長さんが出てきた。
この数日ですっかり現代日本に馴染んだ信長さんは、髪型も現代風なオールバックに整え、どこから見てもナイスミドルな現代人だ。
「俺は武器は今のガトリング砲があるからな、坂内さんの使ってる精神が上がる装備のようなのが欲しいな」
「信長殿、その変貌ぶりはどうしたんだ」
「細かいこと言うたらあかんがね、半蔵もここに五日も居たら考えに余裕ができるで、取り敢えずわしに付き合うたらええがね」
「じゃぁ半蔵は信長さんに任せたぞ」
◇◆◇◆
七月九日 十四時
紗耶香に溜まっていた仕事の確認をすると、鹿内さんもずっと俺と行動してたせいで、銀行関係からの仕事も入ってきてなくて、意外に溜まってなかった。
それでも熊本特区と九州の整備は残ってるいるので、現場に確認に行くことにした。
何故か卑弥呼も着いて来る事になった。
熊本に到着して現地を【G.O】で一度上空に上がってから俯瞰してみる。
気になるのはやはり阿蘇山の存在だな。
すぐ噴火することもないだろうが、噴火した場合の被害を考えると、この対策をしないままの、都市建設は危険がある。
なにか良い手段はないだろうか?
「火山の噴火の危険を考えてるの?」と卑弥呼に聞かれた。
「そうだ、なぜ解った?」
「内緒、でもそんなに難しいことじゃないわよ、大地の精霊にお願いすれば、大きな事故を起こさないように、環境をきちんとコントロールしてくれるわ、この世界では、一般的な考え方じゃないみたいね? 私の世界はこの世界みたいに科学が進歩することはなかったけど、自然と調和しながら精霊との対話で世界が運営されていたわ。私が従えている四聖獣も、地震は玄武が、火山の噴火は朱雀が、天候は青龍が、私の願いを聞き届けて、自然災害から民を守ってくれていたわ」
「白虎は何をしてくれてたの?」
「モフモフ?」
「それは大事だな」
「基本そうね、ちゃんと敵が襲ってきたら守ってくれてたわよ?」
「モフらしてくれるなら、それで十分だ」
「ですよね、私の周りには中々それを解ってくれる人居なかったけど、岩崎さんは大事な事を解ってるね」
「じゃぁさ、火山の心配はしなくて良いって事?」
「私をちゃんと、岩崎さんが面倒見てくれるんなら、そこは心配する必要ないわね」
「じゃぁ問題ないですね、一緒に岩崎君と楽しい時間を過ごしましょうね!」と紗耶香が言ってきた。
「それって、ローテーションも増えるって事?」
「当然そうなるよね? 卑弥呼には色々聞かれたから、既に女性陣の間では納得済みですよ?」
「今日は早速私の番にしてもらったから、よろしく頼むね。私経験ないから優しくしてよね?」
「いやいや、そんな問題なのか? 貞操観念が低くないか?」
「私がそうしたいと思ったからそれでいいの」
「うーん、まぁ今更か解ったよ」
熊本から鹿児島にかけて【G.O】で確認した後に、熊本地区の計画図に基づき、範囲の確定をして防壁の設置と整地までをすべて終わらせ帰宅した。
◇◆◇◆
七月九日 二十時
「九州内の防衛都市を除く土地に関しては、既に本土と無人島は、全て取得済みです」と、鹿内さんから報告を受けた。
「モンスターが結構溢れ出してるだろ? それはどういう対処をしていけばいいんだ?」
「魔核の採集は結構大事なことですが、敵の強さ等が管理できるダンジョン以外では、問題も多いんですよね」その言葉を受けて達也が反応した。
「それに関しては、世界中で同じ問題に直面しているが、結局は防衛都市から外に出る以上は自己責任だ。一攫千金のチャンスもあるが代償は自分の命だな」
「そっかぁ、少しでも防衛都市の領域を広げて行くしか無いな」
「当然国としても取り組むが、現実問題として国の力を総動員して一つの防衛都市を作り上げる効率が、理に任せた場合の百分の一にも満たないからな、理なら一月かからず既存の防衛都市程度なら作れるだろうが、既にモンスターに廃墟にされた場所を、今までの方法で防衛都市化するには、【PU】の五万人単位での防御の中で防壁の設置、内部の整地建造物の建設だけでも十年単位の期間はかかる」
「でもさ、俺にお金が集中しすぎるだろ?」
「それだけの事をやってるんだからしょうが無いさ。国内が収まったら世界中をなんとかして行きたいが、それにはまだまだクリアしなければならない問題が多すぎる。藤吉郎の世界みたいに言う事聞かない国は攻め込んで無理やり何て事は流石にできないからな」
「そう言えば信長さん? 藤吉郎の世界には戻る気はないのか? 大殿なんだろ?」
「あんな仕事は猿のほうが向いておる、わしはこの世界で家庭を持ちたい」
「信長ってそんなキャラなのか? 覇王のイメージは何処へ行った?」
「それは、他の奴らが勝手にわしを評価してるだけだ。今は和也と一緒に合コンに行くのが楽しくてしょうが無い。半蔵にも楽しみ方を教えてやろうと思っておる」
「和也! 信長に何教えてるんだよお前は」
「人数合わせに誘ってみたら、すっかりハマっちゃってさぁ、ポイズンキュアがあるから討伐に影響残して無いからいいだろ?」
「信長程の者が、楽しいと言うその合コンなるもの、この服部半蔵も是非参加してみたい」
「私の半蔵さんのイメージが、壊れていく……」
「まぁ子供じゃないんだから本人に任せるのが良いさ。そのほうが自由な発想も身につくと思うぞ」




