第67話 討伐再開
十一月二日 二十時
いつもの様に食事をみんなで楽しみながら、昨日の今日で国内最大の銀行の買収を成し遂げた鹿内さんと遠藤さんに対して、東雲さんが賞賛の言葉を掛けていた。
「鹿内さんの行動力って凄いですよね。昨日言ってたかと思ったら僅か一日で国内最大の銀行買収してきちゃうとか、私には絶対に出来ないですよ」
「それはね、口に出したのが昨日だったってだけで、前から計画はずっと立ててたからだよ、関係者への根回しも既に終わってたしね。岩崎さんの資産はこの先も増える一方だし、ちゃんと管理して有効に使う手段を用意してあげるのも、私たちの仕事だと思うのよね、でも昨日の総理の一言で国も出資してくれたから、お陰で私は経営者として堂々と、岩崎さんのお手伝いが出来る。【DIT】の職員である事は辞めたくなかったから、出向の形が取れるのは助かるわ」
「私は、国内最大のメガバンクの頭取にいきなりなってしまって、自分でもびっくりしています。将来の夢ではありましたが、この歳で為し得るなんて思っても見なかったですね。実際問題として今現在、銀行を取り巻く環境は過去最悪と言う状況ですが、ダンジョン関連に特化した融資計画を立てれば、直ぐにでも業績はV字回復する目算はありますので、楽しみです」
颯太と達也もそれぞれに意見を言った。
「銀行の内部にずっと居る人間では、貸してしまったお金をどうやって取り立てようとか、下落しきった株式や土地の値段を誰の責任にして、やり過ごそうとか、必要の無いことばかりを考えるからな。回復を本当に行いたいなら、トップは外部から迎え入れなきゃ駄目だ」
「今抱えてしまってる不良債権を取り戻す事は不可能なんだから、思い切って切り捨てて、次の一歩を踏み出すしか再生の可能性は無いからな、恐らく後三年後には国内の銀行は一社に集約されるぞ。他の銀行は、遠藤と鹿内に買収される以外に再生の道筋を立てることが出来ないだろう」
「私としては、国民向けの融資を専門に行う部署として各防衛都市に、信用金庫は残して行きたいですね。個人融資は信用金庫の専業とさせていきます。銀行は法人融資に特化させ、信託銀行は不動産管理に特化させる事で、誰にでも解りやすい銀行業務を行えます。当面は傘下の信用金庫に北九州特区の住宅建設ローンを融資させます。一気に建築ラッシュが起こりますよ。楽しみです」
「私は、銀行業務以外の部署をほぼ掌握しましたから、一番大きいのは人材ですね、国内においては、岩崎さんが広範囲で土地を取得できる場所に関しては、劇的な変貌を遂げる事が出来るので、有能な人材はいくら居ても困りません。
私の仕事は適材適所に能力のある人間を振り分け、国内を最速で復興させる事ですわ。
明日からすべての社員と直接話し、見極めてどんどん仕事を振り分けていきます。
今までと大きく違うのは全国何処でも、転移門でD特区と繋がっているので、転勤を嫌がる理由が存在しない事ですね。
それでも断る方は責任の大きな仕事を、振り分けなければ良いだけですから」
なんか、話しの規模が大きすぎて俺はピンとこないぜ、何度も言うがダンジョンが現れるまでは、俺は時給千二百円の派遣だからな。
「なぁ颯太、俺の資産って今いくらあんの?」
「理の資産か、ざっとで言うと五十兆円くらいだな、でもこれは毎日凄い勢いで増え続けてるし、北九州特区が完全に動き始めたときには、倍くらいになってるぞ」
「例えばだが今回は銀行の買収をしただろ、この銀行の時価総額はダンジョン発生前では4兆3千億程だったが今回取得に必要だった金額は1兆5千億だ、実際には経営が赤字転落していたから、赤字分の8千億円を被ると考えて、2兆3千億で買ったようなもんだな。それを遠藤と鹿内が差配すると一年後には黒字になり、上場廃止だから市場価格は正確には出ないが、以前の水準の倍以上になるのは間違いない、ざっとで考えて、十兆円くらいの価値になるだろうな」
「理屈で考えてそうなるって解ってるなら、何故それを誰もやらなかったんだ?」
「すべては、岩崎さんが居る事が前提の試算だからよ、他の人では無理だわ」
「理解の範囲を超えてるぞ、俺は自分の出来る事だけを、ぼちぼちやってくだけで十分だから、難しい事は任せるぞ」
◇◆◇◆
山野さんが、ペット区域の報告もしてくれた。
「動物病院も今日から一般開放されて、予約の患者さんを千人対応したんですが、トラブルは別段無かったですね、ただ、今日更に申し込みが増えて、予約の患者さんだけで一万匹を超えてるんですよね。今日の状況で、一日に診察できる数は、二千組くらいまでは増やせる見込みが立ちましたけど、当分は混雑が続きそうですね。
それよりも一般開放エリアの来場者が凄い事になってたわ。今日ペット地区に訪れた方は、一万人を超えてたわね、この勢いが続くなら、この地区単独での収益もプラスになるわ。
最初に保護センターから来たワンちゃんや猫ちゃんは、みんな手術も終わって解放されたけど、明日以降も、毎日百匹づつ引き取る予定になってますので、まだまだ大変です」
「猫達がさ、何千匹にも増えてきたら、どうやって識別してんだ?」
「最初に診療をする時に、ICチップが仕込んであるんですよ、ごく小さい物だからまったく猫ちゃんたちの負担にならないようになってます。勿論個体識別も出来るし、ワクチン接種等の情報も登録されているので、計画的に健康管理も出来ます」
◇◆◇◆
十一月三日 八時
今日は、商業地区のホテルとショッピングセンターを建てる予定だ。
区画は綺麗に整備されているので、設計図にそってスキルを発動するだけだが、出来上がり予想のパースとかを見ると、どのホテルも独創的で完成したときの街全体を想像するとワクワクするな。
夕方までかけて今日は八十件ほどの建築物を作った。
ショッピングセンターの規模は、駐車場だけでも一万台を超える。
専門店街には、500を越えるショップが入り、オープンしたら凄く賑わうんだろうな。
ホテル街に国際的な有名ホテルが五十件以上も立ち並ぶ姿は圧巻だ。
二週間後にはすべてオープンできる予定だ。
◇◆◇◆
十一月八日 八時
今日から又、藤吉郎の居る世界に向かい、ダンジョン討伐を進める。
昨日の夜には外国人のメンバーや【D9】コアの西山も戻ってきている。
向こうの世界では、アメリカ大陸は文明的に北より南のほうが進んでいるらしい。
街の成熟度合いが高い場所ほど早めにダンジョンが出現する傾向があるので、恐らく南アメリカ大陸は、番号の若いダンジョンが多いだろう。
【D13】【D41】【D42】【D60】【D80】が、該当する。
この五つのダンジョンは、こちらの世界ではスタンピードを起こしていてモンスターを吐き出し続けているが、【IDCO】非加盟国なので、手がつけられない状況だ。
モンスターには国境など関係ないので、ユーラシア大陸全体の危険度が一向に下がらない。
早速、以前のメンバーから鹿内さんと前田さんが入れ替わった状態で、藤吉郎の世界へと向かう。
【G.O】で大阪の街に到着すると、いつものように慶次が迎えに来た。
藤吉郎のところへ顔を出すと、そこには翔たちのパーティも一緒に居て話しかけてきた。
「父さん久しぶり、こっちの世界凄いね。毎日が新しい発見で楽しかったよ。お陰でさ、俺たちの装備の開発も答えが出せたから、今日戻るときに一度一緒に連れて帰ってね、父さんにも是非意見を聞きたいから」
「おう、自分なりの答えが出たなら良かった。じゃぁ又帰りに寄るな」
藤吉郎が「岩崎様。久しぶりじゃの。翔君たちにも色々向こうの世界での知恵を授けて貰ったで、随分と助かりましたぞ。もう討伐に向かう連中も揃っておるで、よろしく頼み申すぞ」とお礼を言ってきた。
◇◆◇◆
藤吉郎の世界のメンバーを加えた三十人体制で南アメリカ大陸に向かう。
西アフリカのダカールのダンジョンを以前討伐していたので、まず転移門でダカールに行き、そこから【G.O】で南アメリカを目指す。
マップで確認をしたところ、南アメリカ大陸の東の端の町、俺たちの世界ではブラジルのナタールに該当する部分に、ダンジョンが確認できたのでそこに向かう。
恐らく、以前はそれなりに栄えていただろう街は、見渡す限り廃墟になっており、たまにモンスターを見かける以外は、生物らしき姿が無い。
「なんだか私達の世界のモンスターとは大分種類が違うみたいですね、人っぽいて言うか獣人ぽい感じのモンスターが多いし、これはどう言う事なんでしょうね」
と、前田さんが言った。
「確かになんか変わった雰囲気だな、モンスターがこの国の住民たちを取り込んで進化か変化を起こしたような、そんな雰囲気を感じる。スタンピード後のモンスターは、異種交配で自らの進化を進めているのかも知れねぇな」と、達也が考えを話す。
颯太と達也は日本でも一番難しいとされる大学の出身だし、恐らくは達也の予測通りなんだろうな? とおぼろげながらも思う。
「もしそうだとしたら。私たちの世界でも長い事連絡を取り合えてない、ロシアや北朝鮮のモンスター達が危険な進化をしている可能性が高いですね」
「どちらにしても倒すしかないな。とりあえずダンジョンに潜ろう」
そしてダンジョンに入り、とりあえず確認をする。
「ナビちゃん。ちょっといいかな」
「いかがなさいましたか? 理様」
「ここは何番目なの?」
「【D13】でございます」
お、ここがそうだったのか、これで取りあえずエルサレムを消滅させる事が出来るな。
このメンバーで【D13】は別段大きな問題は無く、討伐自体は三時間ほどで完了した。
モンスターの種類が特徴的で、悪魔形のモンスターが多く、レベルの割には随分と強く感じた。
俺たちのレベルには有効なダメージにならなかったが、魅了などの精神攻撃を仕掛ける物が多く、レベルが低い時に入って居たら苦労したであろう。
マスターを倒し、地上に戻される。
「【D13】魅惑のダンジョンが討伐されました。報酬をお受け取り下さい」
ネームドダンジョンだったんだな、ちょっと話してみるか。
「【D13】コア居るかい?」
「始めましてマスター。何なりとお申し付け下さい」
「このダンジョンの周りに居るモンスター達って、外に出て勝手に変異していったモンスター達なの?」
「私の役目自体が、新しい種の創造でございましたので、勝手に変異したと言う訳ではなく、そういう意思を持って行動したと言う事です」
「それは誰かの指示?」
「【世界を統べる存在】の指示にございます」
なんかこいつ、随分核心に近い事知っていそうだぞ。
一回戻ってじっくり話を聞こう。




