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なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話  作者: TB
第三章 俺の守りたいもの

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第64話 関東防壁

十月十六日 二十時


 今日は明石先生と村松先生が訪れている。

 颯太が北九州の進捗具合を確認して来た。


「北九州の開発は問題なく進んでるみたいだな」

「ガレキでも素材としてみれば同じ物だからな、都市設計図を今日はじめて確認したが、公園が多いのと、動物を保護飼育するエリアがあるのが俺は気に入ってるぞ。猫や犬たちが自由に幸せに暮らせる空間があるだけでも、俺はあの街に価値を感じる」


その案を出したであろう山野さんが、嬉々として話し始めた。


「私も保護動物の問題に関して以前からずっと取り組み方を模索していましたから、今回のペットエリアに関しては、かなり力を入れて取り組みました。

魔導テクノロジーを利用して、糞尿などの臭いや、泣き声の問題をクリアできた事も大きいですが、全国から引き取っても余裕のある敷地や施設を、岩崎さんじゃなければ用意できないですからね。

日本中のペット好きの建築家が協力してくれたのも大きいですが、ワンちゃんエリアも猫ちゃんエリアも凄く楽しそうです。

その地区の勤務希望者も募集かけ始めたばかりですけど、既に定員の十倍の競争率になってます」


「でもさぁ犬と猫を保護して、人を使って管理して採算は取れるの?」

「決して大きな利益を出す事業ではありませんが、世界中のペット好きの人が最新のペット用品や、最高レベルのペット医療が揃った都市に必ず関心を示すと目算しています。主要事業は飲食店ですね。飲食を楽しみながら、店舗の壁面や天井を強化ガラスで覆ってある中で自由に遊ぶ犬や猫を愛でながら楽しむスタイルの店舗が立ち並び、勿論触れ合える場所もありますよ」


 今回アニマルセラピストとして参加を決めた明石先生からも意見を貰った。


「今回のこの企画は私も凄く効果が高いと思って期待しています。今は何よりも家族や愛する方々を失った悲しみを癒す要素が必要な時なんです。流石に税金の投入で行うと反感を買いそうですが、資本が岩崎さんから出るのであれば何も問題ありません」

「まぁ別に儲かる必要は無いけど、従業員の子達とか暇だと飽きちゃう可能性が高いから、そこが心配だっただけだから」


「その地域で育てられた猫ちゃんたちは、希望者には里親とか出せるんですか?」

「当然、飼育環境に問題ないと判断されたお宅には、お譲りする事も可能です」


「ペットに特化した動物病院も区域内に作られるし、動物に対してのポーションの有用性も確認されているから、世界中のペット愛好家からの注目度も凄く高いぞ」

「今回は犬と猫だけに限定してあるけど、他の動物も面倒みろとか言い出す市民団体とか出てこないのか?」


「そこは、あくまでも岩崎さんの個人施設ですから、税金使ってないのに市民団体は関係無いで済ませます」

「国はあくまでも必要な部分の施設を理から借りてるだけのスタンスだからな、結構逃げ道が多い」


「俺の名前が前面に出るのだけは、勘弁してくれよ」

「向こうの世界じゃ唯一神なんですから、それに比べたらいいじゃないですか?」


「また俺のSAN値を削るような発言しやがって……」


 ◇◆◇◆ 


 動物保護区の話が一段落つく頃には、いつもの様に御馳走が並んだ。


「今日は高知から戻り鰹と土佐あかうしが届いてます」

「やっぱり鰹は初鰹より戻り鰹のほうがうまいな、脂ののりが全然違うぞ」


「初鰹は、時代的にカツオが近海に近づかないと取れなかった時の名残で有難がられてる要素が強いからな」

「鰹も旨いけど、この、土佐あかうしのローストビーフがすげぇな、どうやったらこんなに柔らかくなるんだ?」


「愛情をたっぷり注げば、美味しくなるんですよ! でもそれは当然だから、このローストビーフは先に調味料をしっかり擦り込んで、表面をフライパンで焦げ目が付く程度に焼いた後に、パッキングして、60度に調節したお湯に40分程浸けたんです。そうするとこんなに柔らかく出来るんですよ」

「調理法も確かに大事だけど、この土佐あかうしは、普通の牛肉に比べて脂の溶ける温度が低いんですよね、赤身の部分も旨みに感じるアミノ酸の量が、黒毛和牛の倍近いですからこんなに美味しいんですよ」


「牛肉も色々あるんだなぁ、全然知らなかったぞ」

「今日の料理には、やっぱりこいつだな、高知の辛口の旨い酒だ」


 ◇◆◇◆ 


「今日、前田さんにものまねで作ってもらった転移門なんですが、北九州特区内で二百セットほど使用させて頂きますが、残りの三百セットはこちらで優先順位をつけて販売させて頂いても大丈夫ですか?」と、藤崎さんが聞いて来た。


「俺は構わないぞ、でも今までと原価とか全然違うからいくらにするんだ?」と、聞くと颯太は強気な発言をした。


「当面は今まで通りだ。この値段で申し込みが殺到してるんだから下げる必要も無いだろ。その分国内を充実させて、それが落ち着いてきてから徐々に安くしていく方が良いだろう」


「いくら簡単に出来ても、価値自体が変わるわけじゃないからな、収納バッグみたいに扱いの難しい商品もあるしなぁ」

「だが、収納バッグはそろそろ、一般開放しても良いかと思ってる。犯罪に使われる可能性が減ったわけではないんだが、ポーターJOBの持ち主が結構多くてな、実質規制する意味も無い感じになってきた」


「そうなんだな、ポーターでどれくらい持てるんだ?」


「レベル1のポーターだと体感無しの部分は十キログラムだな。レベル五十で百キログラムまで体感重量無しで持てるのが確認できてる」


「容量は微妙なんだな、犯罪に使われる可能性は容量に関わらずあるのか。レベル五十でやっとNのバッグと同等なら、値段的には変わらない感じかな?」

「仮に売りに出せば、価値はもっと高くなるだろうな。どちらにしてもSR以上の品は一般に販売するには危険が大きすぎる」


「URの収納バッグの作成は、俺でも成功確率が1%も無いからな、でもURバッグ作ったときにSRとRのバッグが大量に出来てるからそれは納品しとこうかな。ペット保護区の当面の運営費用には十分だろ」


「ちなみにSRのバッグ何個くらいあるんですか?」


「SRで二百個かな」

「一個三百億円じゃなかったですか?」


「前はそうだったな」

「ペットエリアの資金に六兆円使うつもりなんですか?」


「ちょっと多いか?」

「価値は確かにあるが、予算的に全部引き取るのは無理だな。総理と相談してみるが海外政府にSRまでは開放するのもありかもしれん」


「あーそれとな、念話機。これSRで女性陣の分作ったから、一つずつ持っておいてくれ、残りのR以下の分は颯太に預けるから、必要な分自由に使って良いぞ」


「マリッジ替わりかな?」


 お揃いのデザインで仕上げられた指輪型念話器を見て、女性陣を代表して鹿内さんが聞いて来た。


「照れくさいから言うな、まぁそんな所だ」


 ◇◆◇◆ 


十月十七日 九時


「昨日お願いした通りで、今日は関東一円を囲う形で防壁の作成をお願いします。ここは岩崎さんの土地では無いので、正式に国からの依頼として工事費が出ます。防壁一キロメートル当たり二億円です。通常のゼネコンに頼んだ場合で一キロメートルで三億円の見積もりと、【PU】の部隊一万人規模での護衛、工事期間一年という試算が出ていましたので、随分安くやっていただく事になりますが、良かったでしょうか?」


 と、朝から澤田さんに連れられて訪れた関東広域防衛都市の説明を聞いた。


「まぁたまにはそういう仕事もしておいてやるよ。大泉総理にも色々世話になってるし、東京の復興は後回しに出来ないだろうしな」

「すいませんが、よろしくお願いします」


 西は平塚からぐ真っ直ぐ北上し、熊谷まで進む、そこから東に向かい、つくばを通って土浦まで行き、霞ヶ浦沿いに南進して成田を通って、茂原市まで進み、西に向かって東京湾アクアラインの木更津まで総延長二百キロメートルを少し超えるほどの距離だ。


 流石にこれは一人じゃ大変だけど、まぁやるしかないか。


 結局十九時まで掛かったが何とかやり遂げた。

 明日以降は、【PU】がURバッグを使った殲滅作戦で、そう遠くない内に、関東地方を解放するだろう。


 しかし今日防壁を設置した内部には、防衛都市が既存の物だけでも十箇所以上ある為に、北九州のような機能的な都市再生は難しいだろうな。


 転移で家に戻ると翔が来ていた。

 隣に住んでるのにめったに顔出さないよな。

 省吾と萌と桜も一緒に来ており、相談があるらしかったから書斎で話を聞くことにした。


「うちのお母さんが、桜ママに先越されたから、なんか張り切ってましたよ。絶対に同級生で赤ちゃん作るって」

「パパのお陰でうちの母さんは毎日幸せそうですよ」


 と、義理の娘ポジションに落ち着いた桜と萌が話し掛けてきた。


「俺、心から岩崎のおじさん尊敬してますよ、あれだけの女性を全部、惚れさせた上に、ちゃんと責任を持つところが、俺の生涯の目標です」

「省吾はハーレム作りたいのか? 俺は父さんのする事に、別に反対は無いし反抗をする気もないけど、一気に弟とか妹とか、同級生だけどちょっと先に生まれてるからって、姉気取りが二人とか、メチャクチャな展開で結構驚いてるぞ。大体みんな義母さんになるの? それとも名前で呼んだほうがいいのかでも迷ってるよ」


「翔、そこは何かスマン。俺もこんな予定では無かったんだが、誰かを選ぶとかこの状況じゃ無理だった。なんかな、萌や桜の母さんたちも本当に一生懸命だったから、心が打たれちまったぞ」

「娘の私が言うのも変だけど、うちの母さんが萌ママと一緒に毎日どんどん若返りながら、恋する乙女になって行く姿を見て、私たちは凄い感謝してますよ。よろしくお願いしますね」


「それでね父さん、相談の内容なんだけど、この資料をちょっと見て欲しいいんだ」


「おぅなんだこれは?」


「俺たちさ、今、成長装備を作ろうと思って色々研究してるんだけど、今日データベース調べてたらこのリビングアーマーっていうモンスターの装備がなんかそれっぽい効果ありそうなんだよね、鑑定を持ってないから、はっきりは解らないんだけど、五つのダンジョンで、それぞれ違う階層で確認されてるんだけど、強さがレベル以上に上がってる感じなんだよね。これってもしかしたらマスターと同じような効果の装備身につけてるんじゃないかなと思ってさ、父さんの意見聞いてみたかったんだ」


「そうだな。まず外見からしてマスターと似てるし可能性は高いな。ドロップは手に入れてるのか?」


「それがさ、全部三十階層以下のダンジョンで確認されてるもんだから、俺たちじゃもう出せないんだよな。ウルもレベル五百超えちゃったし、五十五層以下のダンジョンで、出るとこ知らないかな? 五十層以下はまだデータベースで発表されてないし」


「確か、どこかで見かけたな、ちょっとナビちゃんに聞いてみる」


『ナビちゃん。ちょっといいかな』

『いかがなさいましたか? 理様』


『リビングアーマーが五十五層以下で出るところって何処だったけ?』

『【D101】の六十四層でございます。後六十五層の中ボスもリビングアーマーの進化種でございます。成長装備なら、六十五層の中ボスが倍率が高いのでお勧めです』


「ありゃ答え出ちゃったよ。ナビちゃんありがとう助かった。翔お前の予想は正しかったぞ。成長装備だそうだ。【D101】六十五層の中ボスがお勧めだそうだが、中ボスだからレベル九百八十あるし現状だと倒すのは厳しいかな? その手前六十四層にも出るらしいが、こっちは普通のやつで、装備の倍率が低いらしい。そっちなら倒せそうだな」


「【D101】って【D特区】に設置してないよね?」


「あ、そうだ。【D101】は向こうの世界の大阪に設置しちまってたな。行ってみるか?」


「良いの?」


「転移門一つ貸してやるから、危なくなったら直ぐ脱出するって約束するならいいぞ。どうせ今は学校行ってないんだろ? 三週後に俺たちが行くまで、別世界旅行でも楽しんで来いよ」


「俺は行ってみたいけど、みんなはどうだ?」と、翔が三人に確認した。


「「「もちろん行きたいに決まってるよ」」」


「じゃぁ明日の朝出発だ六時半集合な」

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