第32話 どこだよここ?
九月五日 十七時三十分
『冷たいニャ早く出るニャ』
TBの緊張感の無い声で俺は意識を取り戻した。
アビスワームの中から放り出されて水の中に落ちたんだ。
TBと一緒に岸に上がり生活魔法で身体と着衣を乾かす。
「どこだよここ?」
天井の高い大きな鍾乳洞だ。
ダンジョンのようだが、周りに魔物は居ない。
こんな時は……
『ナビちゃん。ちょっといいかな』
『いかがなさいましたか? 理様』
『ここってどこかな?』
『ダンジョン内でございます。【D120】の六十層でございます』
『めっちゃやばいよねそれ……』
取り敢えず出よう。【エスケープ】……発動しない。
『ナビちゃん。エスケープ使えないけど何でかな?』
『【D120】ダンジョンはまだ理様の居た世界に顕現していない為に、エスケープで出る事は不可能でございます』
『どうやったら出れるのかな?』
『最下層まで行けば、現在このダンジョンが顕現している世界に出れます』
『元の世界に戻るにはどうしたらいいの?』
『時空間を渡るスキルの取得。又は魔導具によって可能になります』
『今はどっちも無理そうだな。取り敢えず下を目指すしかないのか。でもさここって六十階層なんだよね? 敵のレベルって六百くらいでしょ、普通に無理じゃね?』
『理様の身体強化は特別な力がありますので、レベルの十倍に近い力を発揮できます。武器もUR武器なら大抵の物は、問題なく斬れる筈です。それに、レベル差の大きい敵を倒されますと、レベルも飛躍的な速度で上がって行きますので』
考えてもしょうがないか……とりあえず頑張って下を目指すしかないって事だね。
でも颯太たち無事に【D5】討伐できたのかな?
取り敢えず魔物探知をかけてみるが、レベル差がありすぎて感知できない。
目視で探すしかないか。
「TBにはちょっときついと思うから、小さくなって、俺のポケットに入っててね」
『解ったニャ』
モンスターを探して歩き始める。
「この鍾乳洞ほんとでかいよな」
壁の光るコケが幻想的な雰囲気を醸し出している。
すると、牛頭と馬頭の半獣人のようなモンスターが現れた、鑑定をかける。
名前は見た目のまま牛頭がゴズ、馬頭がメズだった、どちらも物理耐性を持つ、レベルは五百九十五だ。
弱点は特にないみたいだ。
大量のゴブリンナイフを取り出し、雷属性を付与し、忍者技能の手裏剣投げで二頭を滅多刺しにしていく。
「中々倒れないな」
馬頭が凄いスピードで突っ込んできて戟を一閃。
見えなかった。
簡単に俺の脚は切り飛ばされた。
ポケットからTBが飛び出し、巨大化して、俺を咥えて全力で離れる。
なんとか逃げれたみたいだ。
滅茶苦茶痛い……
これなんとかできるのか? レベル差五百五十は話にならないな。
「TBありがと、やばかったよ」【回復】を発動し身体を治療する。
『ちょっと焦ったニャ』
このままじゃ無理だな、作戦考えるか……
俺の持ってる能力だと一撃で倒せる様なのは無い。
だとすれば、攻撃を受けないようにじわじわ削っていくしかないな。
んー……よしちょっと試してみるか。
再び、牛頭と馬頭の居た方向へ向かう。
土木練成で二匹の周りを取り囲む巨大な壁を造る、更に錬金でセラミック化する。
中で二匹が暴れてるが、何とかセラミックの壁が耐えてる。
囲まれた中に水分補給で、ひたすら水を流し込み完全に二匹が浸かりきったところで、サンダーを連発していく。
五十発ほど撃った所でようやく黒い霧に包まれて二匹が消えていった。
やったな。
効率は滅茶苦茶悪いが倒す事はできた。
身体を強烈な高揚感が襲う。
レベルがかなり上がった気がする。
【ステータスオープン】
岩崎理
LV100
JOB
【剣士】 LV40
【シーフ】 LV40
【黒魔術師】LV40
【鍛冶師】 LV20
【薬師】 LV19
【付与術師】LV 5
【忍者】 LV10
ポイント 150
HP 1550
MP 1745
攻撃力 279
守備力 155
敏捷性 549
精神力 244
知力 105
運 496
所持スキル
【アイテムボックス】LV5
【鑑定】LV6
【転移】LV10
【エスケープ】LV3
【身体強化】LV10
【回復】LV6
【錬金】LV5
【生活魔法】LV6
【メイク】LV3
【テイム】LV2
【魔道具創造】LV4
【土木練成】 LV4
【ステータスオープン(TB)】
TB 黒猫
LV90
HP 2480
MP 100
攻撃力 184
守備力 158
敏捷性 108
精神力 100
知力 100
運 100
スキル(無し)
特技
サイズ調整Ⅸ(10%~9000%)
身体強化Ⅲ(+30%)
二体倒しただけでレベルが四十五も上がったぞ、これならいけそうだな。
身体強化かければ単純なステータスも上回れるはずだ。
TBもめちゃ強くなってるじゃん、サイズ調整Ⅸってどんだけなんだ?
「TBちょっと最大サイズになってみてよ」
「やってみるニャ」
十トントラックくらいの黒猫だ。
もうなんて言うか、ニャジラだな。
だが顔は子猫なんで、相変わらず迫力に欠ける。
JOBで大賢者が取れるな、絶対この99ポイント職は特別な意味があると思うんだよな。
だって勇者でさえ70ポイントだったし。
大賢者取得
初期特技は【魔導の極み】精神、知識が倍になる。
生産職の成功率が二倍に上昇する。
強力な攻撃魔法を期待したけど、こっちの方が汎用性は高いからまぁいいか。
よし、頑張ってLV上げするか。
それから、この階層でひたすら狩り続けた。
一週間が経過する頃になりようやく、この階層のモンスターを通常攻撃で倒せるレベルまでになった。
このフロアではユニーク固体で銀色に輝くスライムも出て、想像通り凄い経験値をくれたりもした。
だが何度も手足を吹き飛ばされながら、回復で治療するような壮絶な日々だった。
大賢者レベル5で結界構築の特技を覚えたので、その中で生産も行った。
JOBもステータスの上乗せがあるから、取れるだけ片っ端から取っていった。
魔導鍛治師を取得してTBのアクセサリーも作った。
遠距離武器も作ってみた。
弾丸を打ち出すのではなく魔法を直接撃ち出すタイプの銃だ。
賢者で属性魔法は全て使えるようになったが、センスの問題なのか魔法の発動にちょっと時間がかかるんだよな。
だから武器にしてそこから打ち出すイメージならどうかな? とやってみたら結果は想像以上にいい武器ができたぜ。
オリハルコンとミスリル鋼にヒヒイロカネを使った躯体から、イメージをしただけで属性を切り替え射出できる。
魔銃【ヒュペリオン】て名付けてみた。
なんとなく厨二臭の漂う颯太好みの名前にしたぜ。
勿論UR装備だ。
防具も馬頭の皮をベースにアダマンタイトで補強した。
コードヴァンバトルスーツSR 防御 +100 敏捷 +20 重量 10
かなり高性能だ。
そろそろ下に降りるか。
「TB行こうぜ」
「了解ニャ」
TBが馬より一回り大きいくらいのサイズになって、俺を背中に乗せてくれる。
「TB、黒王って名前に変えたほうが良いか?」
「ご主人様がラ〇ウに改名するなら考えるにゃ」
「何故そのネタを知ってる……まだ生後三カ月くらいだよな?」
「ご主人様の知識は何となく理解できるニャ」
凄い乗り心地が良くて、手綱なんか無くても落ちる事はない。
TBのバランス感覚が凄いから、ジャンプしようが走ろうがまったく揺れを感じない。
フロアの中心部分に到着する。
神殿がある。
やっぱり5の倍数の階層だし中ボス出るんだろうな、1.5倍とすると、レベル900の敵のはずだ。
俺が現在レベル450 TBがレベル440まで上がっている。
やってみるか。
扉を開けて神殿の中に入ると、十mサイズの魔獣が現れた。
【鑑定】
ベヒーモス
LV900
HP 36000
MP 0
攻撃力 1800
守備力 1800
敏捷性 1800
精神力 0
知力 0
運 0
スキル(無し)
特技
ファイアブレス
身体強化Ⅹ
強いんだろうが、なんとかなりそうだな。
最大化したTBは、ベヒーモスを上回る体躯を誇り、その巨体でトリッキーな動きを使い翻弄する。
俺は、ヒュペリオンで属性攻撃を浴びせ続ける。
最後は直刀URを眉間に突き立て葬り去った。
下に続く階段が現れ六十一層に向かった。
「ご主人様その刀にも名前付けてあげニャイのかニャ?」
「ん? なんで?」
「んーきっと名前上げたらもっと強くなる気がするニャ」
「そっかTBがそう言うならきっとそだろうな。折角だから今のベヒーモスから出た魔核を付与して名前付けよう」
直刀URに付与錬金を施すと、問題なく成功した。
直刀UR
攻撃力 250
重量 3
付与:氷属性、攻撃強化Ⅴ(50%アップ)
よし決めたお前は魔剣【プルート】だ。
冥王星の極寒の世界をイメージしたぜ。
その言葉と共にプルートは一瞬輝いた。
青白く更に洗練された印象に変わった。
【鑑定】
魔刀【プルート】
攻撃力400
重量 3
氷属性
攻撃強化Ⅴ
「すげーなTBありがとー、目茶強くなったよ。」
ちょっと確認してみるか。
『ナビちゃん。ちょっといいかな』
『いかがなさいましたか? 理様』
『武器に名前付けたら目茶強くなったけど、これはどういう事なのかな?』
『素晴らしい質問でございます理様』
『UR装備品に関しては、名前をつける事でその装備の持つ本来の能力が開花されます。名付は誰にでも出来る訳では無く、装備の製作者又は製作者から正当に譲渡された所有者のみが、その装備に対して一度限り可能でございます』
『そんなシステムがあったんだな』
『強く意識する事で出来るようになる事は、まだ沢山ございます』
よーしどうせまだまだ百二十層に着くまでは時間掛かるし、装備も色々造って行くか。
◇◆◇◆
九月十九日
【D120】に落ちて二週間が経過した。
現在階層は六十七階層まで降りてきた。
「颯太や東雲さんたち大丈夫かな? 困ってなければいいけど」
まぁ心配してもどうしようも出来ないからな「頑張れ!」と声に出して叫んでみた。
その声に反応したモンスターがわらわらと集まってきて、あわててTBに飛び乗り逃げ去った。




