第23話 ギルドカード
理は朝から【DIT】の本部に来ていた。
達也に念話で到着した事を伝える。
『おはよう。来たぞ。どこいけばいい?』
『早いな、執務室に来てくれ』
『了解』
達也の執務室の前に立ち扉をノックする。
「どうぞ」と言われたので入室する。
「昨日は、ご馳走様でした」と、部屋に居た上田さんが言ってきた。
「俺は何も準備してないですよ。場所が俺の家だったってだけです」
「まぁそれでも律儀にお礼を言ってくれるのが、上田さんクオリティーだ。今日は【DPD】の初期メンバーの選抜を始めててな、全国の警察官から二百名を選抜して教育する」と、達也がやる気満々になってる。
「二百人ってずいぶん多いな、そんなにいるのか?」
「恐らく登録者は百万人を越えてくる。二百名じゃ全然足りないくらいだよ。ダンジョンで能力を上げた人間が全国に存在するようになれば能力を使って起こる犯罪も当然増える。それに対応できる組織を作り上げるのは俺の当然の責務だ」
「自分の周りしか見えてない俺と、日本を見据える達也の根本的な考え方の違いだな。やっぱり凄いやつだよ達也は」
「理が褒めるとか珍しいな。何か頼みでもあるのか?」
「俺ってパンピーだからさ、銃の実物なんて使った事ないんだよ。それでちょっと頼みなんだが、威力を試したいから、後で実働部隊と一緒に潜らせて貰いたくてな。出来れば実射もさせて欲しい。開発する武器のイメージを作るのに必要だ」
「通常だとありえない要望だが、これは十分に必要な事だと判断できる。後で相川さんから連絡してもらっておくよ。【D2】の二層が今のメイン訓練地だから帰ったら庭に行けばいい」
「今日のメインのギルドランクカードの相談だが、まず欲しい機能を書き出しておいた」
①ベースはIDカードを利用。
②本人の名前、生年月日、性別、血液型がIDカードと相違が無いかのダブルチェック機能。
③倒したモンスターの記録機能。
④所属パーティ名
⑤獲得JOB
⑥ランキング機能(ステータスの合計値と各項目毎で全てのギルドカード所持者を格付け出来る)
⑦認定ランクの登録 【DG】のみが変更できる。
「カードとしての機能はこの内容で、ランキング機能を【DG】本部で常に把握できる様にしたい。今後中ボスとか出現するようになると、討伐とかでレイドパーティの要請をする事も見据えて搭載しておきたい機能だ。常に理や颯太が対応できる保証も無いしな」
「概ね内容は理解できた。出来るかどうかはやってみないと解らないけどな。でもさ、俺が直接カード作ると全員分俺が作らなきゃならなくなっちまうから、カードに能力を付与する魔導具の作成になるな」
早速やってみよう。
【魔導具創造】
【IDカード能力付与機】
素材 IDカード スライムの核 溶解液 魔核2000ポイント
成功確率 N 50%
ロスト50%
今までと違うパターンの確率表示だな。
出来る能力を指定したからなのかな?
まぁ取り敢えず【作成】
ロスト
(げ、失敗した。後ポイント500しか持ってないぞ)
「達也、失敗した。一回に魔核2000ポイント使うから、DITから魔核貰って来てくれ」
「解った何ポイント分だ? 一回二千ポイントなら余裕持って一万ポイント分位持ってきてもらうか」
達也が内線で連絡すると、今井さんと山野さんが魔核を台車に乗せて運んできた。
「魔導具の作成をするのに使うって言ったら、今井さんが是非現場を見せて欲しいと言ってきたので、一緒に見せていただいてもいいですか?」
「まぁここの人達の前では、別に隠すような事でもないから構わないよ」
「ありがとうございます。私は、魔導具関連の部署を担当する事になりましたので、是非後学の為に勉強させてください」
「それじゃもう一回!」【魔導具創造】
今度は成功した。
【IDカード能力付与機】
【DG】IDカードに能力が付与できる。
一枚あたり魔核10ポイントの消費。
カードリーダーにIDカードを挿入し、本人の血液を登録する。
カード表示項目
①氏名、生年月日、性別、血液型
②倒したモンスターの記録機能、総数、種類別
③所属PT名
④獲得JOB
⑤ランキング機能 (ステータスの合計値と各項目毎で、全てのギルドカード所持者の順位付けを行う)
⑥認定ランクの表示
【管理権限者】メニュー
登録カード枚数
総合順位の一覧表示
ステータス毎の順位一覧表示
検索機能
ランク認定登録
まぁ指定した通りだけど、コンビニのATMにしか見えないな。
「山野さんIDカード借りてもいい? 早速付与してみよう」
「どうぞ」
「血液登録か、どうやるんだろ? これか。指紋認証機の様なところに指を置くだけみたいだ。血採られちゃうみたいだけどいいかな?」
「大丈夫です。どうせ全員やら無きゃならないですし」
機械に指を置き、モニターのタッチパネルで採血開始を押す。
「一瞬ちくっとしただけで、傷跡もありませんね」
採血終了から十秒ほどでカードが出てきた。
見た目は表も裏もそのままだ。
どうやって表示させるんだろ? ダンジョンシステムのルールで行けば、強くイメージすれば表示されるかな。
「山野さんカードに触れた状態で、表示をイメージしてみて?」
「やってみます。【表示】」
①山野 美紀・1984/3/16・♀・O
②総数650 種類別-
③【DIT】
④槍術士、薬師、白魔術士
④Rank 1 HP 1 MP 1 攻撃力 1 防御力 1 敏捷性 1 精神力 1 知力 1 運 1
⑤認定ランク-
完成だな。
「値段交渉してなかったな。達也これいくら? 」
「おう、すぐ値段提示できないから、今日の夜までに決めておくな。それと一台じゃ対応しきれないと思うから、ここにある魔核分あと四回頼んでいいか?」
「解った」
結局失敗と成功二回ずつだった。
スキルレベル上げてからやればよかったな……ちょっと失敗した。
「凄いです。こんな機械を創造出来てしまうなんて、私も頑張ってJOBを習得します」
今井さんが凄く感動していた。
「ありがとうな、助かったよ。これであとは受け入れ態勢を整えるだけだ。じゃぁ夜に又行くから」と、達也も気に入ってくれたようだ。
俺もIDカード登録をして自宅に戻った。
◇◆◇◆
九月二日 十五時
今日は【DIT】本部から戻った後【D2】二層で狩をしていた、実働班の第五班にお願いして実弾射撃での討伐を体験してみた。
既に魔法のほうがだいぶ威力がある。
これは、銃装備を作るのは無駄でしかないかな?
銃弾で討伐をしようと思うと、魔核を正確に打ち抜かないと駄目らしい。
この階層のクワガタなんかは、装甲も硬く腹側から打ち抜かないとダメージすら入らない。
二層でこれだと、国外にダンジョンが現れても、ほぼ討伐不可能だよな?
唯一の女性班長である森本さんは、小柄でかわいらしい人だが性格は結構豪快だ。
戦闘鎚を振り回して、モンスターを叩き潰している。
めちゃスプラッターだ。
TBはこの階層では、既に無双出きるくらいになってた。
爪で一撃で切り裂いていく。
TB用の新しいアクセサリーのドロップが欲しいな。
鍛治師のJOBではアクセサリー作成は出現しないようだしな。
アクセサリーの作れるJOBを覚えるか、それともスキルを狙うかだな。
よしここはJOBにしよう、【付与術師】でいけると思うけどな?
【忍者】も取得しておこう。
忍者の初期特技は二刀流だった。
付与術師は、付与レベル1……よく意味が解らないな。
『ナビちゃん。ちょっといいかな』
『いかがなさいましたか? 理様』
『付与レベル1って何ができるのかな?』
『付与は付与する道具を指定して、魔核を使用して発動します。使用した魔核を所持していたモンスターの性格を色濃く引き継いだ能力を、装備に付与する事が出来ます。レベルはそのまま効果の上乗せですね」
『ありゃ……これじゃアクセサリーを作ることは出来なかったの?』
『その通りでございます理様。アクセサリーはドロップもしくは、スキル、JOBであれば魔導鍛治師が作成できます』
『魔導鍛治師って70ポイント職じゃん。当分無理だな』
『因みに付与できる回数は、元になる装備のレアリティに依存します。Nなら一回HQなら二回という風に増えます』
◇◆◇◆
九月二日 二十時
『今日は、ビールだけでなくてうまい日本酒持って来たぞ』と、颯太が大事そうに酒を抱えて来た。
『お、嬉しいな。俺は日本酒党だ、ワインはどうも味の違いが理解できないからな』
今日は相川さん、山野さん、今井さんの3人が一緒に来ている。
達也が、今日のIDカード能力付与機の査定を伝えて来た。
「理。今日はありがとうな。お陰で明日発表になるがDGが正式に探索者の募集を出すことが出来る。それとな、驚け。IDカード能力付与機の価格だが一台三十億だ。戦略兵器などと比べての価値観で決まった金額だ。もう振り込んだぞ九十億」
と、達也があり得ない金額を伝えて来た。
「そんな金額、俺使い方が見当つかないぞ……」
「当然この金額は、守秘義務も込みの額になるし、同様の機械を別の組織に提供する事は原則禁止になる」
「まぁ颯太と達也以外に、魔道具を提供する事なんかまず無いから大丈夫だが、そんなお金あっても使う暇もないぞ」
「土地を買えよ。この施設に隣接する場所を広範囲に買っていくのがいいと思うぞ。それと収納のバッグな、あれも基本作った物は全て【DIT】に卸してくれ。値段も決めて来た。
N 五十万円
HQ 三百万円
R 三億円
SR 三百億円
の価格になる。重さ体感無しで、百トンの荷物を運べるとか、国家間の争いなら簡単に相手国を滅亡させれるくらいの装備だからな。くれぐれも、【DIT】以外に渡さないようにな」
「びっくりするような値段だな。でもさ、ポーターJOBの所持者なんかは、アイテムボックス機能使えるんだろ? それはどういう対処をして行くんだ?」
「ダンジョンに潜る人間は、少なくとも国内ではDGカードの所持が義務付けられるから、ポーターJOBの所持者は解るしな、それとポーターJOBの所持できる量を知ってるか?」
「いや、自分で持ってないJOBの情報は全然解らないな」
「初期能力で10キログラムしか持てないし、JOBレベルが5になって20キログラムだな」
「メチャ少なくないか? それだと収納バッグのNの能力でさえJOBLVで50が必要って事になるよな?」
「そこまで上げてる人間が居ないから、言い切る事は出来ないが、恐らくその予想で間違いないな。そのくらいの容量しか入らないと、兵器を持ち運んだりは出来ないから、脅威度は下がる。懸念された麻薬の密輸等の心配は、ポイズンキュアで完治できる事が、既に確認されたから麻薬取引は今後自然消滅するだろうな」
「話は変わるけど、この家っていつまで住んでいいんだ? 別に思い入れがあるわけじゃないから、引越し先が準備できたら俺はいつでもいいぞ」
「先に家を建ててからだな、まぁ俺たちが居る事多いじゃん。一応セキュリティー上の問題って事で、あんまりみすぼらしい家に出来ないからな。希望の間取りやデザインがあれば今なら聞けるぞ」
「颯太たちが居るのが前提なのかよ……俺は、別に希望は無いぞ。この家くらいの広さは欲しいかな」そう言うと急に山野さんが立ち上がって
「岩崎さん、私に任せてください!! 素敵な家デザインしますよ」と、俄然やる気になっていた。
すると今井さんが「岩崎さん、きっと山野さんだけに任すと、後で東雲さんや坂内さん達から文句言われると思うから、明日ここに集合でみんなで意見出し合うって事にしたほうがいいと思いますよ? 勿論私も参加しまーす」
「しょうがないか。じゃぁそれで」と、山野さんも妥協したけど……
「ちょっ、何でそんな話になるんだ? 俺の家だろ?」
「なんででもです」
と、言い切られた……
その会話を聞いていた相川さんが
「何とも羨ましい様な、怖いような話ですね。岩崎さん。ちょっと私からもお願いがあるので聞いていただけますか?」
「どんな話ですか?」
「実働部隊も今月中に大幅増員になる事が決まって、今の三十名が全員班を率いる様になりますから、岩崎さんには装備の事とかでお願いしなければいけないので、よろしくお願いします。明日から私は人員の選定が終わるまでは寝る暇もなくなりそうです」
「ちょっと俺からも話をさせてくれ」と、颯太が口を開いた。
「【DIT】の実働部隊は対外的には、【DIT】だけで問題ないが、内部呼称は変えようと思う。(Production unit)だから【PU】の呼称を使う。明日の朝礼で統一しよう」




