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なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話  作者: TB
第一章 ダンジョン黎明期

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第16話 エリクサー

 十一時十分に俺は木曜日に拠点登録しておいた東京駅の傍に、自宅から直接転移で移動した。

 少し早いので、近所のカフェでコーヒーを飲みながら、メイクを起動してステータスを戻した。


 なんと裏技を発見してしまった。

 

 メイクでステータスを動かすとHP、MP共に満タン状態に戻っっちまったよ。


 これは使えるぜ!


 人々の会話に少し聞き耳を立てると、みんな昨日の緊急放送の事を話してた。

 日本中で同じ光景なんだろうな? と思いを馳せる。


 カフェを出てタクシーで警察庁に向かった。

 玄関でスマホから島内閣官房長官に電話をする。

 周りの職員から胡散臭い感じで見られて、めちゃ居心地悪いぜ。


 三分ほどで東雲さんが迎えに来てくれた。


「昨日振りですね、【DIT】本部へようこそ」と微笑みかけてくれた。


 東雲さんってめちゃチャーミングだよな、笑顔が尊いぜ!


「今日からは豊橋に移転するんですけどね」と言いながら、島官房長官の元に案内してくれた。

「よく来て下さいました。先方の病院には連絡が入れてありますのですぐに向かえますか?」


「そうですね、ここにいると職務質問とかされそうで、落ち着かないからすぐ出ましょう」

「本日一緒に同行させていただくのは、東雲と山野です」


「お初にお目にかかります。『山野美紀』です。本日は、よろしくお願いいたします」

「こちらこそよろしくお願いします」

 

「一つお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「なんでしょう」


「岩崎さんが持っていらっしゃっているアイテムがエリクサーである事は、何でお解かりになられたのでしょうか?」

「俺は鑑定スキルを持ってるからねー」


「本当なのですか? それはどの範囲の鑑定まで出来るのですか?」

「物であれば、何でもですね」


「たとえば美術館に飾ってある絵画の真贋などは、確認可能ですか?」

「それは出来ないですよ、素材名が表示されるだけです。例えばモナリザを見れば、油絵、油絵の具、キャンパスって感じですね。宝石などは見分けられますよ」


「鑑定スキルは簡単に手に入れられるものなのですか?」

「この世界のスキルは、同じ物は世界に一つしか存在出来ないらしいです。ただしJOBに付く事で似たような特技が発現するらしいですよ」


「それは、どこからの情報なのですか」

「あー俺はダンジョン討伐してるから、ダンジョンコアと意思の疎通ができるからね。そこから情報です」


「解りました」


 なんか山野さんって優しそうな顔してるのに質問が鋭いなと思いながら病院に向かった。


 ◇◆◇◆ 


 病院に到着した。

 山野さんが受付に向かい「村松先生をお願いします」と申し入れた。


 村松先生は俺達を待っていたようで、すぐに姿を現した。


「本日は【神の奇跡】が見れると伺ってますが、事実なのでしょうか?」


 と、聞かれたことに対して島官房長官が返答をした。


「【神の奇跡】なのかどうかは人々の判断に委ねるとして、事実として欠損部位の再生が行われます」

「それは、野口さん以外のたくさんの方々にも、処置できるのでしょうか?」


「現状ではこの一つしか【エリクサー】は見つかっておりません。今後発見されるのかこれ一つで終わりなのか誰にも解りません」

「野口さんの状態はどうなのですか? 意識は戻られているのでしょうか?」

 

「昨夜遅くに意識を戻されましたが、足の事などで気を病まれて、何もお話が出来ない状態です」

「その状態で伺っても大丈夫なのですか?」


 そこで東雲さんが発言した。


「村松先生、少し私に任せていただけますか? 野口さんと二人きりで話をさせて下さい」

「解りました。ご案内します」


 ◇◆◇◆ 


 東雲さんが病室に入って行く。

 防護服等は相手に拒絶されやすいので、敢てそのままの格好で入っていく。

 野口はうつろな瞳で壁を見つめていた。


「そのまま聞いて頂戴、返事をしなくてもいいわ。今から魔法使いさんが貴女の足を直しに来ます。絶対に直すからここに来てもらってもいいかな?」

「本当なんですか?」と呟いた。


「良かった喋れたね。大丈夫だよ。信じるも信じないも貴方次第でございます」と笑いかけた。


 野口も少し笑顔になりうなずいた。


「じゃぁ魔法使いさん呼んでくるね」


 外に出た東雲さんは手で大きな丸を作りながら「魔法使いさん出番です!」と伝えてきた。


 どんな話をしたら俺が魔法使いさんなんだよ。

 その言い方だと三十年間清い体で過ごした男みたいで、周りの目が気になるだろ!

 まぁ魔法は使えるから嘘では無いんだけど……


 全員で室内に入った。


「野口さん。これから世界で始めての奇跡が起こる。人々の希望の為に奇跡の様子を記録させてもらってもいいですか?」

「大丈夫です」


 試験管状のビンに入った普通のアセロラジュースを渡し「この薬を一気に飲んで、ゆっくり目を瞑ってください」と声をかける。


 野口さんが言われた通りに薬を飲み目を瞑る。

 

 俺はスキルを発動した【回復】


 淡い光が野口さんを包み込みゆっくりと晴れていく。

 

 足の欠損は見事に完治していた。

 四日間も寝たままだったので体も強張っている筈だが、そんな様子も無い。


 村松先生が呟いた。


「神の奇跡は、存在したんだ……」


「これほどとは……凄い」

 

「感動しました……」


 東雲さんが野口さんに話しかけた。


「どう? 魔法使いさん凄いでしょ?」

「うん……凄いです。ありがとうございます」


 思い思いの感想が聞こえる中、野口さんの目に涙が溢れていた。


 ◇◆◇◆ 


「今の映像、俺映ったりしてないよね。映ってたら絶対駄目だからね」


 病室から出た俺は、村松先生にしつこく確認していた。


 村松先生は「大丈夫です映ってないですよ」と、画像を確認しながら伝えてくれた。


「しかし世界中から凄い数の問い合わせが来るのは間違いないでしょうね。エリクサーの入手方法の」

「そこはDITにすべてお任せです」


「ダンジョンでの直接的な被害者は渋谷の二名だけなので、これでダンジョンに対しての悪い感情が少しは薄れてくれたらいいんだけどね」

「それには理由があるんですか?」と、島官房長官が聞いてきた。


「人々のダンジョンへの思いが悪いほうに傾くと、モンスターがより凶悪になるらしいですよ」と、ナビちゃんから聞いた情報を伝えた。


「そんな事があるんですね、情報統制は私たちの領域ですから注意を払っておきます」


 島官房長官が山野さんと東雲さんに、今日の予定の指示を出していた。


「私は今から総理のところに行って、先程の映像を総理に確認して貰いながら、どう使うのが効果的なのかを検討してくる。山野さんと東雲さんは、本日十六時には【DIT】本部を豊橋に移行する為の準備で、サポートチーム全員で、新幹線で向かってください。実働隊はトラックに必要機材を積みこみ、準備の出来た班から順次出発するように指示を出しておいて下さい。現地に到着したらすぐに地域住民の説明会が開かれるので、その会場にサポートチームは全員参加でお願いします。私も総理との調整が終わり次第向かいます」


「「了解しました」」


 ◇◆◇◆ 


 俺は一足先に自宅に戻った。

 メイクのお陰でMPはすぐに満タンに戻ったから、帰りも転移で戻ったぜ。


 TBとじゃれあいながら(うち)にも届いていた地域住民の説明会の案内を見ていた。


「公権力の本気って、こんなに仕事が速いんだな。昨日の今日で地域全員に通達出すとか凄いよな。防護壁内部の住民は五百人くらいだけど、殆どは農家の高齢者世帯だから反応はどうなのかな?」


 ◇◆◇◆ 


(総理官邸 十四時)


「こちらの画像をご覧下さい」


 先程の病院での出来事が映し出される。


「凄いな、世界中の医師の夢が現実になった瞬間だ」

「エリクサーはこの一つしかないという事だが、それは事実なのか?」


「現状では、岩崎氏の言葉を信じる以外、確認の術はありません」

「彼一人にあらゆる力が集中しすぎている現状では、彼が善人であり続ける為のサポートが【DIT】の最重要任務となりそうだな」


「世界が彼の存在に気づいた時に、彼の置かれる状況が恐ろしいな。しかしこの映像を発表する事の衝撃は計り知れない。あらゆる国、宗教、犯罪組織が動くだろうな」

「今日明らかになった話が一つあります。彼は【鑑定】スキルを所持している事を明言しました。しかもこのスキルという物は、世界に一つしか存在出来ない物という事です」


「ただし、劣化版鑑定能力はJOBの獲得で特技として発現する事がある。とも言っていましたので、そこは【DIT】のメンバーにレベルを上げてもらいながら、サンプル件数を増やすしかありません」


 大泉が島に声をかける。

 

「颯太も岩崎氏に負けないくらい強くなって、負担軽くしてやったらいいじゃないか。お前なら人前に出るのも平気だろ?」

「現代の英雄の役回りを演じてみろ。と言う事でいいのですか?」


 と、確認をすると、総理が小さくうなずいた。


「俺も取り敢えず防壁が完成するまで、士気向上の為に現場にいる事にしたから付き合うぞ」と、斎藤が言ってきた。


 ◇◆◇◆ 


(理の家 十七時)


 必死で錬金とアイテム製作を続けてたら結構いい感じで出来た。


ポーション   N 30個 HP10%回復 傷の回復

ミドルポーションHQ 20個 HP25%回復 亀裂骨折まで回復

ハイポーション R  10個 HP50%回復 複雑骨折 靭帯損傷まで回復

エクスポーションSR 1個 HP75%回復 内臓損傷まで回復


ポイズンキュア N 15個 毒回復

ストーンキュア HQ 5個 石化回復

カースキュア  R   3個 呪い、アンデット状態回復


 エクスポーション成功時に声が聞こえた。


『ミッションクリアおめでとう御座います理様! 世界で始めて”SR品質以上のアイテム作成の成功”達成です。50ポイントが付与されました」


 ちょっと嬉しい。

 アイテムはRの時ポイント無かったから、SRでも無いと思ってた。


 しかしこれだとエリクサーはURアイテムって事だろうな。

 どれくらいの確率になるんだろ。


 回復スキルだと結構早い段階で病気の治療が出来たんだけど、ポーション系に病気回復効果が出ていないな。

 別系統であるんだろうか? 聞いてみよう。


『ナビちゃんちょっといいかな?』

『いかがなさいましたか理様』


『ポーションでさ病気回復系に効くのってあるのかな?』

『毒消し系統のSR品に万能薬がございます』


『そうなんだぁ、ありがとう』


 ちゃんとあったんだな。


 ◇◆◇◆ 


 そろそろ時間かな、説明会の会場に向かおう。


 会場の小学校に着くと、五百十人の住民のうち五百五人が集まっていた。

 後の五人は入院中だそうだ。

 ほぼ100%って凄いな。


 この小学校はこのままDITの仮設本部になるらしい。


 市役所から人員を動員して一軒ずつ全戸に直接迎えに行ったらしく、俺は見落としてたけどちゃんと案内書に迎えに来ると書いてあった。


 住民たちの両サイドに、DITのサポートメンバーが全員整列していた。


 今日の進行役は副市長さんが行うようだ。

 まず昨日の首相の緊急演説がビデオ放映され、この事態を乗り越えるための対策として必要な事を説明していた。


 俺は実情がわかっているからまーいいんだけど、土地の所有権は一括して国が実勢価格で買い取る事が通達され、この地域内に残る場合の条件として、ダンジョン関連施設の清掃や調理等のサポート業務に就職する事、もし残った場合も土地の所有権は国にある事が通達されていた。


 区域内から外部への通勤勤務は認められない事。

 また外部から区域内への通勤勤務も認められない事。


 区域内への出入りは、空港の税関のような設備を使っての出入りになる事が説明された。


 待遇は決して悪くないが自由は少ない。

 高齢者でも出来る仕事も用意する。


 それが嫌な方は区域外への転居と説明された。


 以上の事項は決定事項であり、八月末までに完了していない場合強制的に退去になり補償も減額されるとの事だ。


 通常なら質疑応答となるのだが、国としての決定事項であり今の話は通達であると締めくくられた。


 まぁ地震で津波に呑み込まれた場合に、同じような条件が出たりするのか? と言えば、決して出ないので納得するしか無いんだろうな。


 ◇◆◇◆ 


 参加住民の中に佐千原さんがいて、説明会の終了後に声をかけてきた。


「ちびちゃん元気ですか? 大変な事になりましたよね。岩崎さんはどうされるのですか?」と聞かれた。

「俺は残るよ。仕事辞めてたから雇用があるならいいかな? って感じだねー。佐千原さんはどうするの?」


「私も残ります。なんだか逆に時代の最先端の情報に触れれるのかな? って思って少しワクワクしてます」

「そうなんだね、ではまた会う事もあると思うからその時はよろしくね」


 と言って別れた。


 みんなが帰り始めようとした頃、運動場にヘリコプターが着陸した。

 斉藤防衛大臣と島官房長官が現れ、住民たちに一声かけたいと壇上に向かった。


 深々と頭を下げ……


「重大な国難に立ち向かうために、みなさんのお力をお貸し下さい」


 と、だけ告げて壇上をおり、二人で出口に立ち、一人ずつ全員と握手をして見送っていた。


 流石だ。

 俺には絶対あんな真似出来ないな。


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― 新着の感想 ―
ドロップしたポーションふ固定値回復だったのに、生成したポーションは割合回復なんですね
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