第12話 俺の事情と国の事情
さらっと爆弾発言した。
「今、聞き間違えでなければダンジョンがここに存在してると聞こえましたが、事実でしょうか? 」
「うん、そう言ったよ。今の時点では世界中でここにだけダンジョンがある」
「はあ……解りました。これは今日はちょっと話が長くなりそうですね。うちの職員の女の子を外に二人待機させてるままなので、呼んでもいいでしょうか? 出来れば一緒に話を伺いたいのですが……」
ちょっと考えるそぶりを見せたが……
「構いません。どうせ隠してもそのうち知れ渡るような事になるし、早い段階で国が対応できるだけの知識や強さを持ってもらわないと、俺で何とかなる範囲なんてすぐ超えてしまうから、態々官房長官がここに来ているんだから、国が対応するって事でしょ? その為に必要なら一緒に聞いてもらっても構わないよ。でも俺を拘束しようとしたりは、考えないほうがいいですよ。その時点で一切の協力を拒みます」
「解りました。早速二人を呼びます」
外に顔を出し坂内と東雲を招き入れる。
「二人も一緒に話を聞いてください」
「「了解しました」」
「まず伺いたいのは、ダンジョン発生に岩崎さんは関係しているのですか?」
「発生には、関係してないですね」
「岩崎さんは何故ダンジョンを討伐できるほどの強さを持ち、あの日渋谷へ来てダンジョンを討伐する事が出来たのですか?」
「話は八月十五日まで遡りますが、その日の十一時十一分に【始まりのダンジョン】が出現し、偶然討伐してしまった形になったのが全ての始まりです」
【始まりのダンジョン】の討伐をして、ダンジョンマスターになった事。
【ダンジョンコア】と呼ばれる意識体と会話が出来るようになった事。
討伐したダンジョンは、討伐者の任意で入口を作れる事。
ダンジョンはこれから一週間毎に発現し、百五十五週間その現象が続く事。
ダンジョンは六週以内に討伐をしないと、ダンジョン外にモンスターを排出する状態になる事。
毎週現れるダンジョンは一層づつ深くなり続け、敵も深さに応じて強くなって行く事を伝えた。
「日本にのみ出現するのですか?」
「世界中に出現する可能性があります。ダンジョンコアからの情報では、人々の思念により現れる為に、文化的にダンジョンを認識しやすい環境がある日本に主に出現するようです」
「人類の力で阻止は可能だと思いますか?」
「今のままではとても無理ですね」
「どうして行けば良いと思われていますか?」
「俺には解んないね。それを考えるのは国の仕事じゃないのかな? 俺は目の前に救えるものがあるなら、自分の手の届く範囲で行動するくらいしか出来ないし、責任を持った行動みたいなのはする気もないし無理だからね」
「ありがとうございます。一度持ち帰って協議した後にこれからの事を考えます。少なからず協力をお願いする事も出てくると思いますので、その際は前向きにお願いします」
「もう一点、ここにあるダンジョンは、安全なのですか。周囲に被害とか出た場合は、岩崎さんを庇う事が出来なくなりますので、確認させて下さい」
「今は俺しか入る事が出来ない設定になってるから大丈夫だよ」
「その言葉を信じるしか無さそうですね。坂内さんと東雲さんは聞いておきたい事とかないですか?」
「ダンジョンを攻略してモンスターとの戦いを続けている岩崎さんは、どの程度の強さになっておられるのですか?」
「レベルが上がるとね、ステータスと言うのが見えるようになってくるんだけど、そのステータスによると現状でダンジョンに、入る前の百倍以上は強くなってると思うよ」
「冗談でも何でもなく、世界最強の男って言うことですね。私達もそうなれるのですか?」
何故かそのワードを聞き、島の目がキラキラして理を見た。
「ダンジョンで戦って行けば誰でもなれるはずですよ」
「本当か? 俺達でも出来る可能性があるんだな」とちょっと食い気味に身を乗り出す島を見て言った。
「キャラ崩壊気味ですよ。官房長官ってさ、もしかして十四歳の純真な心を持ちつづけて、勇者とか目指す人だったりするの?」
鋭く見抜いた。
坂内と東雲も一瞬島を見てしまう。
「あ、大丈夫ですよ島さん……私達も今の話を聞いて最強になれるかも? って思ってましたから、ね、東雲さん。そうだよね」
かなり苦しいフォローである。
島は少し赤面してたが、気をとりなおして言った。
「そうですね、私には確かに英雄願望があります。こんな時代になって追い続けた夢が叶うかもしれない。ましてやそれが私の大好きな日本を守る為なら、恥ずかしくなんてないさ!」
見事に開き直った。
「俺、官房長官みたいな人好きですよ! だから頑張って下さいね。協力出来る範囲で俺も頑張ってみるからね!」
「私は一度緊急で首相と会議を行い、今後の動き方を決めてくるので、坂内さんと東雲さんは交代要員が来るまでここに居て貰えますか。岩崎さんも本当は来て欲しいけどダメですよね?」
「当然嫌です。てか、うちの家にこのまま居続けられても困るんだけど」
「この地区にも至急で拠点を作りますので、今日だけ二人をお願いしますよ。坂内と東雲も、もう少しお話を聞きたいようですしね」
「ここにダンジョンがある事を知った上で放置したとか、野党の耳に入ったら無駄に大騒ぎされたりしますので、その為の保険で今日だけは我慢をお願いします」
二人も頷く。
「政治の話に巻き込まれちゃったりするのは、俺としても困るので、今日だけというのなら、仕方がないですね。お客さん用の布団とかは無いですよ」
「二人は明日交代の人員が到着したら、一度本部に帰還して下さい。食事は私が払いますのでお寿司の出前でも取って下さいね。それでは私は失礼させていただきます」
足早に離れ、ヘリポートへ向かう車の中で大泉に連絡をし、ミーティングの準備を整えておくように伝える。
【DIT】の本部にも連絡をし、明日豊橋に向わせるメンバーなどの指示を出し終えた頃に首相官邸に到着した。
◇◆◇◆
坂内と東雲に昨日の事件を受けての【DIT】の創設、理を見つけ出しここを尋ねるまでの経緯などの説明を一通り聞いた頃に、出前も届き食事を取った。
食事を終え、今度は女性陣からの質問タイムだ。
艶っぽい話題はないが、キャバクラ以外で若い女性と会話をした事など、ここ十年くらいは無かったのでちょっと嬉しかった。
「私たちをダンジョンに入れていただく事はできるのですか?」
「危険の無い範囲で、レベルアップ出来たりするなら行って見たいわ」
「んー。ダンジョンの中で現れるのはモンスターだからね、危険が無い何て事は絶対に無いよ」
「でも、さっき聞いた範囲じゃ【DIT】だけでも五十人も居るんだよね? その人たちに何度も同じ説明するのも嫌だから、これからちょっと行って見るかい? レベル5まで上げてもらうと基本的な事が出来るようになるから、その後でここに戻って、もう一度説明って形でいいかな? 他の人たちには二人から説明してね」
「怪我されても困るから装備をちょっと持ってくるね」
理が作り溜めてる装備品の中から低階層なら何とか使える物を二人分用意して渡した。
「武器は使えるかな? 刀と槍だけしかないけど」
「私は刀でお願いします」そう返事をした東雲さんはちょっと嬉しそうだ。
「私は槍がいいわ。警察の実技に棒術があるから。ある程度は扱えると思うわ」と、坂内さんは槍を選ぶ。
効果を解りやすく説明するのに便利がいいから、ちょっとこれで握力測ってね。
東雲さんが32㎏、坂内さんは38㎏だね。
この数字がダンジョンから戻ってきた時にどうなるか、楽しみにしててね。
防具は 防御力 重量 特殊効果
うさみみ帽子 HQ 2 1 聴力アップ
ラビットチュニックHQ 5 3 敏捷性+1
ラビットアーム HQ 2 1 敏捷性+1
ラビットテイル HQ 2 1 敏捷性+1
ラビットシューズ HQ 2 1 敏捷性+1
武器 攻撃力 重量 特殊効果
角槍 HQ 20 5
刀 HQ 20 4
主に角ウサギからのドロップ品で出来た装備だ。
コスプレさせたかったわけでは、決して無い。
「この防具って……ちょっと可愛すぎますよね……」と東雲さん。
「私は……これ着てるとこ人に見られたくないかも……」坂内さんは少し恥ずかしがってる。
「D1ダンジョン内だと十分な防御力あるから見た目は我慢してね。スライムの溶解液攻撃は魔物素材じゃないと防げないから、ちゃんと実用性があるんだよ」
ダンジョンの入り口に移動して二人を許可リストに入れると、二人の目に入り口が見えるようになる。
「じゃぁ後ろについてきてね、まだレベル1だから絶対前に出ないでね。今はパーティを組んでる状態になってるから、俺が倒しても経験値が入るからレベル5まではすぐ上がるよ」
「「解りました」」
二人が理の後ろについて行くと、そこは広い草原が広がっていて、夜なのに何故か明るい。
D1には三日は入っていなかったので、五十匹のモンスターが沸いてる状態だった。
理が九匹目のスライムを倒したところで二人のレベルを鑑定して見ると、レベルが2に上がっていた。
「ちょっといいかな? 二人ともステータスオープンと心で念じてみて」
「あ、表示されました。これってレベル2に上がる事が表示される条件なんですか?」
「俺は最初がレベル5だったから断言は出来ないけど、今二人にステータスが表示されたなら、それで間違いないと思うよ。レベル2になっただけでは単純にステータスが上がるだけだし、まだ戦闘するのは危険だから後ろで見ててね」
それから一時間ほどかけてレベル5を迎えた。
二人にも一匹ずつスライムとゴブリンを倒してもらった。
生き物を殺す嫌悪感が出る事もなかったようで、無事に狩を終えた。
「では家に戻るよ」
ダンジョンの奥のほうだったので、二人に手を握ってもらいエスケープでダンジョンの前に戻った。
坂内さんが「凄い。一瞬で移動したわ。これが転移系のスキルなんですね。ちょっと感動しました」と喜んでる。
こういう反応してもらえると、なんか嬉しいな。
ではレベルも上がったので、まずさっきやってもらった握力計をもう一度握ってみて。
「ぇ……百㎏まで測れるメーターが振り切れたわ」
「私も同じです。振り切れました」
「こんな力が一時間ちょっとで手に入るとなると、一般社会の中では大混乱が起こるのは間違いないよね。オリンピックとかの競技も根本的に成り立たなくなるからね」
「この力を犯罪者が手に入れてしまうと、世界が崩壊してしまう未来が簡単に予想できるわ。明日の会議ではこの問題が最優先で議論されるべきね」
「さてステータス確認をするよ」
『東雲 あずさ』
LV5
JOB (無し)
ポイント10
HP 50
MP 50
攻撃力 5
守備力 5
敏捷性 5
精神力 5
知力 5
運 5
所持スキル(無し)
『坂内 美穂』
LV5
JOB (無し)
ポイント10
HP 50
MP 50
攻撃力 5
守備力 5
敏捷性 5
精神力 5
知力 5
運 5
所持スキル(無し)
「それぞれ同じ数字が出てるのが解るね。数字が小さいからゲームに慣れてるとしょぼく見えるかもしれないけどさ、全ての人がレベル1の時のステータスが全項目で1だから、今は二人ともさっきまでの五倍の能力を持ってると見て間違いないよ」
「今日はここまで、俺も眠くなったから続きは明日でお願い。二人ともお布団も無くてごめんね。明日はJOBに就いてみようね。ではお休みなさい」
二人も色々体験しすぎて、部屋を暗くするとすぐに眠りにつけた。




