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なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話  作者: TB
第一章 ダンジョン黎明期

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第11話 見つかった

 日本の警察は非常に優秀である。

 顔写真一枚あれば人物を特定し探し出す事など、簡単に出来るほどには。


 警察庁のシステムを利用し、人物特定を行っていた上田、坂内の二名は先ほど追加で届けられたダンジョン消失後に現れた人物の姿も参考にする事で、かなり順調に絞込みが行えている。


「しかしこの人物は、ダンジョン消失後に現れた後は普通に歩いて離れていってます。注意深く行動しているようにも見えませんよね」


 プロファイリングに当てはめて観察しても、犯罪者特有の挙動というものが感じられない。


 少なくともこの人物の行動が、悪意から行われているのでは無さそうだ。


 離れていった後に、コンビニの店内に入っていった所までは、防犯カメラで確認できた。


 そのまま対象者はコンビニから出てくる事はなかった。

 捜索範囲を広げ、当然東京駅も調べる。

 

 日本の優れた監視システムがあれば、大体の容姿が判明していればコンピューター解析をかけると対象の姿は勝手に探し出してくれる。


 そんな事を気にもしていない理の姿は、簡単に探し出された。


 新幹線に乗って東海地方へ向かって行った事までは、すぐに判明した。

 ここから先は、現地に乗り込み、足を使った捜査を続けるしか手段は無い。


 坂内は島へ連絡をして指示を仰いだ。


「坂内さんは東雲さんと一緒に、対象者が新幹線を降りた都市へ向かって下さい。現地の警察組織に全面的な協力が得られる様に手配をしておきます。対象者を見つけ次第連絡をお願いします」


「了解しました」


 すぐに解析で判明した地域へ向かう。


 駅の防犯カメラデータから、愛知県の地方都市で下車した所までは判明している。


 駅構内のトイレに入って行った姿は確認出来たが、対象者がトイレから出て来る事は無かった。


「又トイレで行方が途切れたか……」


 上田はこの対象者は、トイレ内でしか使えない能力でもあるのか? と、一瞬考えたが、単純に転移系の能力で発動する所を見られたくないだけだと判断する方が合理的かと思い直した。


 一度本部へ戻り、対象者へたどり着いた経緯、又、気づいた点をDITのメンバーでブリーフィングする事にする。


「転移を使えるとして、この人物が使える転移能力は、距離などの制限が存在する事は間違いないですね」


 全員が納得する。


「ダンジョン消失時に現れたときには、プロテクターのような物を、頭部・胸部・腕・脚・靴の部分に装着しているのが確認できますが、コンビニに入って行く時には、ダンジョンに降りていた時と同じ物に変わっている事が確認できますね。私のラノベ知識では、アイテムボックス持ちと見て間違い無さそうです」


 それに対しても、全員納得の表情だ。


 ◇◆◇◆ 


 島が渋谷の現場に滞在していた三チームに帰還の指示を出し、本部へ戻ってきた三チームに現状迄の進捗状況を伝え、それぞれのチームへ勤務シフトを通達し、装備の確認、ホテルの説明をして解散させる。


「恐らく、渋谷ではもう何も起こる事はないだろうな……」

 

 と、根拠はないのだが、確信した表情でつぶやく。


 ◇◆◇◆ 


 理は、現在公園に来ていた。


 ノラ猫がよくたむろしている公園で、独り暮らしの理は世話の問題でペットを飼う決断は付かないのだが、ノラ猫にエサを与え眺める事が独り身になってからの心の癒しになっていた。


「今日こそモフらしてくれないかなぁ黒ちゃん……」


 お目当ては、最近この公園に住み着いた黒い子猫だ。

 エサを置くと寄っては来てくれる。


 だが、撫でようとすると「シャァーッ」って

 子猫らしからぬ威嚇の声を出し警戒して、触らせてくれない……


「今日もダメかぁ」


 気長に信頼関係を築いて行くしかないな。

 と、モフる事は諦めて帰る事にした。


 公園から出ようとした時に、女性とすれ違った。

 優しい表情で猫のいる方に向かって行き、さっきの黒い子猫に話しかけてる。


 気になって見ていると、子猫は女性に身体を擦り付けて「遊んで!」とねだっているような仕種をしてる。


 ……なんか……めっちゃうらやましい……


 女性は、子猫を抱き上げお腹をモフってあげてる。

 ぁ、頬ずりもしてるぅ。


 うらやましすぎる。


 女性も、子猫も。

 だって綺麗なお姉さんに、お腹モフられて頬ずりだよ‼


 決めた。

 

 次に取るスキルは、テイム系統にしよう。

 そして猫をモフる!


「ナビちゃん。ちょっといいかな」

「いかがなさいましたか? 理様」


「普通の動物ってテイムできるのかな? 猫とか」

「はい可能でございます」


「意思の疎通とかはどうなのかな?」

「もちろん意思の疎通もできますよ。ダンジョンに連れて行って一緒に戦えば、レベルも上がりますし、テイムされた生物は特技も覚える事がございます」


「ちなみに綺麗なお姉さんをテイムする事は出来ません」

「チッ」残念。


 ここだとスキルリスト開いてると怪しすぎるから、帰ってから獲得しよう。


 家に戻ると、お向かいのおばあちゃんが声を掛けてきた。


「この間はありがとうねぇ、お陰で足も調子良いしご飯も美味しいよ」

「良かったねおばあちゃん。あの薬メチャ効いたんだねー」


「そういえば岩崎さんも、前の奥さんと別れて結構経つけど、やっと再婚する気にでもなったのかい?」

「ぇ、どこからそんな話がでたの? まったく女っ気なんかないですよー」


「あらそうなのかい? さっきね興信所の人がきて岩崎さんの事を聞いて行ったよ。身辺調査を頼まれたって言ってたから、てっきり再婚でもするのかと思ったよ。めでたい事かと思っていっぱい褒めてあげたのに、違ったのかい」


 興信所って、まさかダンジョンの事とかバレて、悪の組織とかに狙われてたりとかするんじゃないかな……


 ちょっと不安になる。


 さて、取り敢えずは……


【スキルリストオープン】


 お目当てのスキルを探す。


【テイミング】

地上に生息する生命体、ダンジョン内に生息するモンスターを使役し、指示を与える事が出来るようになる。


テイムする為には、スキル保持者のレベル、スキルレベル、対象のHP残量が影響する。


スキルLVの上昇で、テイム出来る個体数の上昇。

使役できる対象のLV上限アップ、テイム確率の上昇。

使役された対象の能力値の上昇がある。


 うん。


 想像通り過ぎる。

 早速明日黒ちゃんに会いに行こう。

 いつもより贅沢な餌持って行くぜ!


 ◇◆◇◆ 


 その頃、新幹線で移動中の二人は、今朝からの急すぎる展開を思い出しながら会話を始めていた。


「坂内美穂二十九歳。独身。埼玉県の出身で実家からの通勤。今までは警察庁で主にプロファイリングについて学んでいたわ、まぁここに選ばれたくらいだから、当然趣味はゲームかな。特にアクションRPGみたいな感じで、大型のモンスターをPS(プレーヤースキル)を駆使して倒していくタイプのゲームが好みだわ。ゲームの中だと男女の体力差とかないから、純粋にPSを競える感じが好きなの!」


 と、一気にまくし立てた。

 女性二人なのもあるが本部に居た時とのギャップが激しい。


「次は私ですね。東雲あずさ二十六歳。独身です。父が自衛隊に居るので、幼い頃からその姿に憧れを持って、防衛省を選びました。私は官舎暮らしでしたので、時間がある時はもっぱらスマホで投稿小説を見ている感じでしたね。異世界転移でよくあるような女流剣士に憧れがあって、必殺技とか考えたりするのが好きですね。でも剣道は三段でインターハイで優勝した事もありますよ」


 と、自己紹介をした。


「DITって待遇凄いですよね。徒歩5分の高級ホテル暮らしなんて素敵過ぎます。でも、きっとメチャクチャ忙しくなりそうですよね」

「私は島さんの警護もあるからプライベートはほぼ無いと同じだよー、でもこんなにやる気の起きる任務って、一生に何度もめぐり合えないと思うわ。ちなみに私は合気道と空手がどちらも二段だよ」


 豊橋駅に到着して、最寄の所轄に連絡を取り、すぐにタクシーで向かう。

 署長に挨拶をすると既に島内閣官房長官から直接連絡が入っていて、VIP待遇で招き入れられた。


 ここは、大規模警察署であり署長の階級は警視正になる。

 上田と同じ階級だ。


 早速人員を手配して貰えて、対象者の写真、特徴を書き出した資料等を提示した。


「これから資料にある、人物の捜索をしてもらいますが、現時点では重要人物の可能性が高いだけの一般人です。犯罪者ではありませんので、プライバシー部分の侵害や、相手から気付かれる事が無い様に居所の確認をするまでが任務となります。よろしくお願いします」


 現在十七時三十分、夏の日差しはまだ高い。

 指示を出し終えて一息つき、坂内は東雲に声をかけた。

 

「今のうちに食事を済ませて起きましょう。出張時は食費も全て経費精算できると、島さんが言ってくれましたから、ちょっといいもの食べようね」


 十八時半を過ぎ、ようやく陽が落ち始めた頃連絡が入った。


「対象と見られる人物の居住所の確認が取れました。対象は氏名、岩崎(おさむ)年齢四十歳。当該住所において一人暮らし。盆前までは、派遣社員として働いていましたが、盆明け自己都合での退職をしております。賞罰該当無し」


 ほぼ静岡県との境目に位置する、静かな住宅地のようだ。

 早速、坂内と東雲は現場へ向かう。

 顔を見る事は出来ていないが、居所に在宅中である事が、エアコンの室外機の稼動から見て予想できる。


 島へ連絡を入れる。


「ありがとうございます。すぐにヘリコプターで向かいますので、そのまま対象者の補足を継続してください」


 二十時三十分を過ぎた頃に島が現場へ到着した。


「私一人でコンタクトを取りますので、坂内さん東雲さんはこのまま待機をお願いします」


 玄関へ向かい呼び鈴を押す。

 裏側にある庭から返事が聞こえた。


「夜分遅くに申し訳ございません。私は【内閣官房長官】を拝命している島と申します。私が直接尋ねて来るのに足るだけの、重要な事実を岩崎さんが握っていると信じ伺いました。是非お話を聞かせていただけませんか?」


 まっすぐに純粋な瞳で、真摯に優しく問いかけた。


「あぁ結構早く見つかっちゃったな、何で俺って解ったのかな?」

「日本の警察組織が持つ映像解析技術は世界最高峰です。ダンジョンに堂々と入って行くあなたの姿も、スロー再生ではちゃんと確認できましたよ」


「俺を捕まえに来た? って訳じゃないよね。何が望みなのかな?」

「私と共に来て頂き、色々と協力をしていただきたいと願います。可能でしょうか?」


「んーまず条件として東京へは行かないよ。島さんがここに来て聞きたい事を聞き、俺が答えられる範囲で答える。このスタンスを守るのならば協力しない事は無い」

「それには理由があるのでしょうか?」


「まだ鍛えないといけないからね」

「鍛えるのは東京では、出来ないのですか?」


「ダンジョンはここにしかないからね」


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