第10話 ダンジョンは何処だ?
「面会の可否を、うかがってきますね」
「よろしくお願いします」
厳重なセキュリティーを施されている、感染防止室の扉の中へ入って行く明石を見送り周囲を確認する。
ご家族らしき方がいらっしゃったが、いきなり声をかけるのは失礼だと思い静かに面会の可否の連絡を待つ。
病室内からインターフォンを通じて連絡が来る。
「面会の許可はいただきました。ご家族の方への確認と防護服の着用があるので、私も一度退出しますからお待ちください」
明石が退出してきて、ご家族のほうへ挨拶に向かう。
面会の申し入れを伝え、病室に向かう。
入室準備室のような場所で防護服を着込み、エアシャワーを一分ほど浴びてから室内へ向かう。
ようやく水野さんと会話をできる。
「始めまして、私はこの度の事件を受け、緊急設置された日本政府の組織に所属する山野と申します。この度は大変な体験をされて、御傷心なこととは思いますが、原因の究明と、再び被害を受ける方が現れない様、対処を行う為に、是非お気付きになられた点等御座いましたら、お教え頂きたいと思い伺いました」
「何も解りません。何故私と環ちゃんがこんな目にあったのか……こんな辛い思いをしなければならないのか? 何故なんですか? なんで…… ごめんなさい取り乱しちゃって」
「あんな体験をされたのですから当然の反応だと思います。気になさらないで下さい」
「洞窟みたいな所にいきなり滑り落ちて……登る事も出来ず腰を打ってたので座ってたら、黒い霧みたいなのがかかって……中からモンスターみたいなのが出てきて…… 環ちゃんが襲われて……覚えているのはそれだけです。後は気づいたらここにいました」
「ありがとうございます。辛い事を思い出させて申し訳ございませんでした。今日の所は、これで失礼させていただきますが、他に何か思い出した事や、お手伝い出来る事があったら、連絡をいただけませんか?」
と、連絡先を書いたメモを渡して退室した。
その後、明石と村松へ患者の容体の変化や、野口さんの意識が回復した場合の連絡を頼み病院を辞した。
◇◆◇◆
その頃、D2の二階層で順調にレベルアップとドロップ集めを続けていた理は「これからどうなって行くんだろうなぁ、どう考えても、一年後にD50とか登場する頃になると、階層数的に考えても一週間で攻略して次のダンジョンにすぐ移動するとか不可能だよなぁ……」
「うん。先の事を考えても、一人じゃ出来る事も限られちゃうんだから、まぁいっか」
と、考える事を諦めた。
きっと頭のいい人達が、色々考えてなんとかしてくれるよね!
理がダンジョンと出会う前から習得していた強力なスキル
【必殺人任せ】が発動した。
効果は思考を放棄できる……
◇◆◇◆
(DIT本部)
画像解析をしていた実働部隊のメンバーに動きがあった。
レンジャー出身チームのリーダー『森本 久枝』が手を上げた。
「ちょっと集まって貰っていいかしら?」
実働部隊のメンバーが、森本のもとに集まる。
「この十六時二十分頃から二十五分くらいの間に、何人かの一般人と会話をしている男性に注目して下さい。背格好、服装共にダンジョン内に侵入して行った人物に、酷似していると思いますが皆さんの目から見てどうでしょうか?」
SAT出身のメンバー青木が発言する。
「確かに、先程確認した人物に雰囲気がよく似ていますね」
と、周りのメンバーを見ると全員が首肯した。
「島さん、対象と思われる人物を特定いたました。指示をお願いします」
「ありがとうございます。上田さんと坂内さんは、すぐに警察庁のシステムを最大限活用して、人物の特定を行ってください。特定を行う事が出来れば、コンタクトは私が直接出向きます」
◇◆◇◆
渋谷の現場から、西山班が早川班と入れ替わりの形で帰還してきた。
「大体の事は聞いていると思いますが、昨日ダンジョン内の捜査中に、人物に出会ったり、何かの気配を感じたりと言う事は、ありませんでしたか?」
「事前に班員にもヒアリングを行いましたが、本官の班では、人物を見かけたり異変を感じ取れた者は存在しませんでした」
「解りました」
島が全員に聞こえるように指示を出す。
「【DIT】は基本二十四時間態勢で活動をする事になりますので、只今から班分けを発表いたします。サポートチームの方は六名一班の三チーム。実働部隊は現状通りのの六チームになります。
サポートチームの方はメンバー表を確認して、各班毎に集まってください。
西山さんの班は、現時刻より八時間の休息の後、再びこの本部へ集合してください。
森本さんの班は、現時刻より十六時間の休息の後、勤務に復帰をお願いします。
もう一点。DITに所属している間は、プライベートな時間を含め二十四時間態勢で連絡を取れるようにお願いいたします。
召集時間より二時間以内に常に本部へ来る事が出来るように体制を整えておいてください。
国会前にあるシティーホテルに、全員分の部屋を用意してありますので、基本的にはDITメンバーである期間は、そちらを利用していただける様にお願いします。
連絡用に衛星対応のスマートフォンを準備してあるので、受け取ってから休息に入って下さい」
かなり無茶な指示ではあるが、現状おかれている状況が、与えられた任務の大きさが、肯定以外はありえないと全員理解している。
「「「了解しました」」」
◇◆◇◆
「サポート班の方たちも三班体制になります。正面モニターに表示しますので、班毎に分かれた席割りに移動をお願いします」
A班 厚生労働省 山野 美紀
国土交通省 澤田 健斗
文部科学省 今井 優子
環境省 藤崎 真吾
防衛省 東雲 あずさ
外務省 織田 信雄
B班 厚生労働省 今川 構造
経済産業省 鹿内 雅子
法務省 大島 雄也
財務省 澤藤 蘭
総務省 星野 源太郎
農林水産省 真壁 聖子
C班 外務省 森 龍子
防衛省 相川 拓也
総務省 音羽 真由美
財務省 遠藤 秀二
法務省 前田 香織
経済産業省 京田 一雄
秘書官 警察庁 上田 泰造
坂内 美穂
「警察庁からの二名は、基本、私のSPを兼任していただきますので、班には所属せず秘書官として行動していただきます」
「「「了解いたしました」」」
◇◆◇◆
各自、班割を確認し、速やかに班毎に別れ着席した。
B班のメンバーは、現時刻より十二時間の休息。
C班のメンバーは、現時刻より二十時間の休息。
A班と実働部隊の熊野班は、継続して解析作業の指示が出た。
◇◆◇◆
現在、十六時を回ったところだ。
病院へ面会に行っていた山野も戻ってきていた。
解析を継続している、A班の今井から声がかかった。
「島さん、ダンジョン入り口が消失した後の画像に、気になる部分を見つけました」
画面内では丁度ダンジョン入り口が再び黒い霧に包まれ、霧が晴れた時には入り口が消失するという場面だ。
「この後です。画面の右側のほうを見ていてください。突然人が現れています。移動して来たとかではなく、沸いて出たと言う表現の方が合うような感じで、登場しています」
更にスロー再生にして確認すると、服装は違っていたが、ダンジョン内に徒歩で向かっていった人物に、特徴が酷似していると確認できた。
ほぼ先ほどの人物で間違い無い。
「この状況で予測できる事は、私がよく読んでいるようなラノベ小説のダンジョン物では、ダンジョンがクリアされた状態になったのではと思いますが、皆さんの意見はいかがでしょうか?」
ここに居るメンバーは、全員が作り話の世界の話ではあるが、ダンジョン、ファンタジー、モンスターというワードにおいて一定以上の知識を持ち合わせている。
全員がほぼ同じ感想を抱いた。
「ダンジョンがクリアされたとして考えた場合に起こりうる事象を列挙していただけますか」と島が問いかける。
①敵を倒してLVアップしている。
②ドロップ品を獲得している
(すでに昨日のSATも獲得しているので確定事項)
③討伐報酬を得ている。
④強力な装備品を獲得している。
⑤人の目の前を気づかれる事なく移動しているのを見ると、隠蔽スキルの類いをすでに所持している。
⑥突然現れた事象から、転移スキルと呼ばれるものを獲得している。
⑦ダンジョン内でドロップ品等を獲得したとすると、突然現れた人物は荷物を持っていないので、収納系の魔法もしくはスキル、又は収納系統のアイテムを所持している。
⑧この人物がダンジョンマスターになっている。
⑨武器を持っているように見えないので、強力な魔法が使えるのかもしれない。
⑩この世界の人間ではないのかもしれない。(異世界からの転移者)
⑪スキルと言われる異能力が使えるかもしれない。
⑫死者や欠損者の治癒が出来るかもしれない。
⑬魔王と呼ばれる存在が現れ、地球を滅ぼすかもしれない
⑭モンスターを仲間に出来るのかも知れない。
色々な意見が出るな……
ラノベの世界では普通でも、現実世界では起こり得ない事が当たり前の話だ。
とにかく、この人物の特定さえ出来れば、事態は大きく前進する。
どこに居る……
絶対声に出してはいえないが、
「俺もモンスター倒しまくってレベルアップしまくって勇者してみてぇーー」
内閣官房長官兼DIT代表 島 颯太
結構厨二病である。




