75 誰のせいか知らないけど俺は悪くねぇ……いや、うーん
えー、こちら現地特派員のフィヨルドです。
私が住んでいる世界は只今大変な事態となっております。
非常に強力なモンスター同士がぶつかり合った影響でしょうか、地上の至る所に巨大なクレーターが出来ております。
大気は不安定な状態が続いており、天候を変えてしまうような大規模な魔法のせいでしょうか。
突発的な竜巻が頻発し、ジョーズミチルを含んだ大量のサメが竜巻と共に都市部に来襲し、壊滅的な被害を被った都市が増え続けています。
その他の地域でも対立を深めた国同士の争いが多発しており、更なる被害は避けられそうにありません。
以上、現場から離れた安全な地域からフィヨルドがお送りしました。
大変なことになってしまった。
俺がちょっと、些細な行動をしただけで大国同士があっという間に険悪な関係に陥った。
これに関しては俺の予定通り、いや、予定よりもとても上手くいったので俺は内心喜んでいた。
少しおかしいなと思ったのは、最初に工作をしたゴブリンとデーモンの国の国境付近に転移魔法で久しぶりに飛んだ時のことである。
俺が転移した場所は緑豊かな森であったはずだが、何故か草一つない不毛な大地となっていたのだ。
転移先間違えたかなと思った矢先、地面から跳ね上がるような大きい衝撃が足を襲った。
遠くでドゴンバゴンという爆裂音が響き、遠くで核爆弾でも落ちたかのようなキノコ雲の形をした土煙が上がった。
もしかしてもう前哨戦が始まっているのか、とウキウキしながら様子を窺ったところ、すでに大量のモンスターを引き連れたターゲット同士が衝突していた。
まだ裏工作を大して行っていなかったのだが、想定よりも早く衝突したな。
しかもお互い最初から大将が出てきている、もうちょっと順序というか段階みたいなものはないのかしら。
普通戦争と言えば色々な交渉があって、それが決裂して、小さな衝突が徐々に大きくなって泥沼になっていくとかストーリー性があるでしょ。
と思いつつも俺としては好都合、早速作戦成功したので喜ぶべきである。
……喜ぶべきところなのだが、あまり何もしないまま始まってしまったのでなんというか感動が薄め。
まあいいか、俺が感動するためにこんなことしてたわけじゃないし。
早くターゲットのどちらか死なないかな、と見物していたが、魔法の規模がデカすぎて遠見の見物しているだけで命の危険がある。
最早俺が手が出せる状況ではない、大人しく爆音が鳴りやまない戦場から別の場所に退避しよう。
無事安全な場所まで退避したのはいいが、あの戦いは最後どのような結末を迎えるのであろうか。
結果がどうなったか知るために見守りたいところであるが、戦いの余波だけで死にかねないほど危険だ。
でも大丈夫、どちらかが命を落とせば神様が教えてくれるでしょ、多分。
さて、ターゲット同士が衝突したとはいえ決着が付かないとか、休戦してしまう可能性がまだ残っている。
だからまだまだ世界中でターゲット同士の戦いが起こるようにもっと積極的に対立煽り運動をすべきだな!
今回の結果から推察するに、モンスターやターゲットは思ったよりも簡単に殴り合いで解決しようとして戦争を勃発させてくれる。
さすが武力で問題の大半を解決してきた連中だ、堪忍袋の緒のキレやすさが違う。
どれだけ俺が暗躍しても戦争に発展しないという最悪の事態だけは避けられそうだし、もっともっと衝突が起きるように頑張らないとな!
えー、こちら現地特派員のフィヨルドです。
前回のレポートから一か月程度が経ちましたが、あれから状況はますます悪化しています。
毎日人が立っていられない地震が頻発し、その影響で世界中の大地に地割れが発生したほか、空からは原因不明の赤い雨が毎日降り注いでいます。
以前は竜巻と共にサメが飛んでいましたが、現在はサメのほか大量の海のモンスターやガジラまで空を飛び回っております。
人類は最初のターゲットの衝突が始まって以来約9割以上が死亡し、残りの生存者もかろうじて生き延びているという状況です。
この異常事態はいつまで続くのでしょうか、先行きは全く見通せない状態です。
以上、世界にすでに安息の場所は無いフィヨルドがお伝えしました。
とても大変なことになってしまった。
あれから俺が世界中でちょびっとターゲット同士の衝突を煽っただけで世界中で戦争が起こってしまった。
これに関しては俺の予想を遥かに超えた速度での衝突であり、こんなに上手くいくのかと思っていた。
かなりおかしいなと思ったのは、毎時地震のような衝撃が大地を走ったとき、いや、その前から普通に色々おかしかったわ。
何時からかはもう分からないけれど、世界中でターゲット同士の衝突が起こって天変地異が起きてるんだもの。
ターゲットの強さはターゲットリストで見ただけで詳細には知らないが、どうやら本気を出したらこの惑星の気候等に影響を与えるようだ。
それが1匹だけならば短時間で終わるので大きな影響はないのだろう。
しかしターゲット同士が争うことにより、同時に何匹も本気を出したせいで大地も海も大気にも様々な変化を及ぼしてしまった。
どうやらターゲットの本気は核ミサイル程度の影響力があるようで、それが何匹も長時間活動しているのだからこの惑星への影響も計り知れない。
間接的な影響だけで人類が絶滅しかけているし、無関係なモンスター達にも多大な影響が出ているのではないだろうか。
俺もこの気候や環境に対応できるモンスターに姿を変えていなければ、常時体力と魔力を消耗してしまいやがて衰弱死してしまうだろう。
果たして現在も続いているこの頂上決戦が終わる頃には、どれだけの生命が生きているのだろうか。
初期に開戦したゴブリンキングヒーローとイビルデーモンキングの決戦すらまだ終了していない。
俺はこの戦いの余波から最後まで生き残れるのだろうか……。
神様、俺はもう駄目そうです。
正確に言うと、俺以外も駄目なんですけどね。
多分俺以外の人類は絶滅してしまいました、人間として生きられなくなった俺を人類としてカウントするか微妙なところではありますけれど。
現在この惑星は氷河期を迎えています。
原因はよく分かりません、魔法により大量の土砂が巻き上げられたせいかもしれないし、世界各地で噴火しまくった火山の灰のせいかもしれません。
人類も絶滅寸前ですがモンスターも大半死滅したみたいです。
元気に殺し合いをしているのは選ばれしターゲット達くらい、やっぱ俺とはモノが違いますわ。
この世界はこれからどうなってしまうのだろうか、だなんて間もなく死に至らんとする俺が考えてどうするというのだ。
そんな要らない考えが頭を巡った時、俺の目の前を1匹の鳥が通った。
俺はその鳥に目が釘付けとなった。
日光が無いにも関わらず光り輝く、どんな鳥よりも綺麗な羽、どんな小動物よりも綺麗な顔、どんな海洋生物よりも優雅で、どんな大型動物よりも雄大な姿を持つ存在がそこにいた。
頭の中に美しい、という文字がよぎると同時にモンスターの名前が一つ浮かんだ。
不死鳥?
俺が神様からもらったターゲットのリストにあった名前の1匹だ。
だが今更手を出そうと思う気持ちは全く無い。
もう栄養失調と寒さで動くことすらままならないし。
ただ、死の間際に、今となってはもう見ることは出来ない動物達の美しさを思い出すことが出来た。
……何故俺はこの美しい生き物の、いや、世界の全ての素晴らしき生き物の住処を奪ってしまったのだろうか。
ふと我に返るような思考が脳裏をよぎった瞬間、ドゴゴゴッと今まで聞いた破壊音の中で最も大きな音が響いた。
地面が崩れる、片方は天へ、片方は底へ、大地と大地が二度と隣り合わなくなる。
惑星の壊れる音だ。
俺のいた惑星は大きな数個の塊と無数のチリに分裂し、その惑星が内包していた生命の全てが死んだ。
こうして俺の二度目の生は全ての生の終焉という形で幕を閉じたのであった。




