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70 神様ヘルプ 前編

この物語はフィクションです。実在の人物、キャラクターとは一切関係ありません。

 ターゲットを殺すための策は一つ考え付くことができた。

 それは成功率が決して高いとは言えない策なのだが、他に有効だと思える策が思いつかなかったので仕方が無い。

 でも俺がこの先生きのこるためにやるしかない、そのためには成功率を少しでも上げる必要がある。 

 俺の策を成功率を上げるためには、言語・思想・理念・頭脳・常識・財産・情報、そして何よりもっ、速さが必要!

 もちろん俺は鳥とかチーターとか空飛ぶモンスターになることが出来るので普通の人間よりは圧倒的に早いのだが、それでも全く足りない。

 どれだけ必要なのかというと限りなく速く、それこそ光のように速くなるかどこでも行けるドアみたいなのが理想である。

 しかしさすがにそれは無理だ。

 だってそんなに速く動ける生物が存在しないからな。

 でもたった一つ、たった一つだけ、解決できるかもしれない方法がある。

 そのために毎日祈りを欠かさなかった、神様、早く来てくれー!




「随分と呼んでいたようだが何の用だ?」


 意外と早くて4日目で来てくれた。

 本気で心から叫べば案外いつでも来てくれたのかもしれない。

 実は神様をお呼びしたのは理由がありまして、ターゲットを殺すための策が出来たのですがどうしても神様の御力や御協力を賜りたく思いましてですね。


「力を貸せと言われてもな、私の力はこの世界に干渉させることは出来ぬ」


 でもこればかりはどう考えても俺の力では解決できない問題なんです。

 だから神様の伝手やコネでどうにかしてもらいたいんですよね。

 これをクリアできるかが成功の分かれ目なんですよ。

 俺がターゲットを倒すための絶対的な機動力を手に入れるのに、神様の協力が必要なんです。


 神様に協力してもらいたいこと。

 それは神様に精霊の親玉を説得してもらって協力を取り付けてもらいたいのだ。

 移動方法として最も早い方法は何かと考えると瞬間移動だと思う。

 もちろんそんなことは俺には出来ない。

 なので俺は精霊に協力してもらって瞬間移動を実現したいと考えている。


 俺が考えたのは空間魔法であるアイテムボックスを活用することで疑似的に瞬間移動する方法だ。

 アイテムボックスは何処で使っても同じ場所、つまり同じアイテムボックスに繋がっている。

 ということは、何処からでも同じ場所に繋がっていて、同じ場所から何処へでも繋がっている。

 つまり空間魔法を活用することで何処からでもアイテムボックスを経由することで何処へでも行くことが出来るのではないだろうか?

 これが実現すれば瞬間移動が可能になる、そのためには神様の協力が必要不可欠なのだ。


「そこで何故私の協力が必要になると? 必要であればお前が精霊と交渉すれば事足りるであろう」


 そりゃあ俺が交渉できるならやってますよ。

 俺ができないから神様にお願いしているんですよ。

 精霊と会話や交渉ができるのは人間の中でも限られた極一部の高位外交官のみ。

 俺のような一冒険者はそのような立場にない。

 だけど神様は精霊と会話ができますよね? だって神様は、


 俺と会話するときも、精霊語を話しているじゃないですか。


 神様と俺が会話している時に神様は文字で表すと「」を使っていた。

 「」がある会話は精霊語でしょ。

 人間が唱えるときに使用するのは精霊語なので「」が付いていたし、アウトフィットで精霊語を話しているときも「」が付いていた。

 神様が俺と話している時、自動で俺にも分かるような言葉になっていたが、精霊語を使っていた。

 つまり神様は精霊語を使える、そしてこの事実から導かれることは。

 この世界の本当の主役、一番強い立場にあるのは精霊であるということだ。


 この世界は精霊によって実質支配されている。

 世界の大半に住んでいる魔物は精霊語を使っているし、通貨であるイディも精霊が造っている。

 だから神様もこの世界の支配者である精霊語を使っている。

 そして対話できない相手の言語を使う必要はあるだろうか、いや、無い。

 なので神様は精霊に会話や交渉ができると考えていい。

 俺は精霊への会話は出来ないので、俺がターゲットを殺す策を実行するために、神様に精霊への協力を仰いでもらいたいのだ。


「私が精霊語を話しているのは事実だが、残念ながら私は転生者以外に干渉は出来ないので精霊に協力を仰ぐことはできんぞ」


 ええっ……どうして出来ないんですか。

 俺今この事実をめっちゃキメ顔で言ってたと思いますよ。

 この世界に干渉できていたら神様がターゲット全員即死させてるって?

 確かにそれ言われたら納得するしかないけど。

 でも神様、何か解決策ありませんか、と尋ねたところ、


「瞬間移動できる魔法はある、ただし一部のモンスターしか使えないという制限はあるが」


 瞬間移動できる魔法あるんだ。

 ただし一部のモンスターしかその魔法を教えられていないため現状使うことが出来ない。

 人間状態ではもちろんのこと、合成獣である俺もその魔法を知らないはずなので使うことは不可能だ。

 もし俺が魔法を知っていたとして瞬間移動魔法を使ったら、精霊側から見て何故お前はその魔法を知っているのかとなる。

 そうなればその魔法をいくら唱えたとしても発動することはないだろう。

 もしかしたら1回や2回はその時の精霊次第で発動するかもしれないが、安定した使用には程遠い。

 そんな魔法に頼るのは危険すぎるので合成獣なりの解決策を使う。

 瞬間移動魔法を知っているモンスターを倒し、吸収することでそのモンスターになればいいのだ。

 そうすればそのモンスターに姿を変え瞬間移動魔法を使用することが出来る。

 完璧なプランだ、神様ありがとう!


「瞬間移動魔法が使えるモンスターについての情報は与えよう。瞬間移動魔法はそれが成れば教える。他に何かあるか」


 あとあの獅子舞が使っていた翻訳魔法も使いたいですけど。

 今から精霊語を学ぶのも時間がかかるし、カタコトの外国人みたいになりそうですし。


「いいだろう、その魔法は多くのモンスターが使える。瞬間移動魔法が使える魔物ならば全て問題ないので事が成れば一緒に教えよう。ではそろそろ私は行くぞ」


 そう言って神様は帰っていった、やっぱり忙しいのかしら。

 ま、今後の方針は決まったのは何よりだ。

 瞬間移動魔法を使用するためにモンスターを倒す、そしてターゲットを殺してハッピーエンドだ。

 じゃあさっそく該当モンスターの誰を倒すか精査しなければ、ここで殺されては元も子もないからな。



 というわけで俺が倒すモンスターは決まりました。

 俺の標的は覇王鬼帝(はおうきてい)。

 顔と体は猫科っぽいが様々な物に姿を変える、だが俺とは全く似て非なるモンスターである。


 俺は姿形を完全にその生物に変えるが、覇王鬼帝は顔の猫っぽさはそのまま維持しながらその地域に溶け込むように姿形を変える。

 鹿が多い場所では鹿っぽく、イカが多い場所ではイカっぽく、塔が有名な場所では塔っぽくなる。

 そのカモフラージュにより可愛さがアップするらしいが、可愛さに反比例して一騎当千の実力があるらしい。

 生息地は世界何処でもと言われているが、実際は覇王鬼帝は少数で世界各地を瞬間移動魔法を使用して何処にでもいるように見えるだけだ。


 人間の間ではまだ目撃事例が少ないのだが、覇王鬼帝はすぐ近くにいてただ気付いていないだけという説もある。

 ある日突然本性を現し命を刈り取り姿を消すので覇王鬼帝の仕業なのかも分からない。

 変幻自在の王、覇王鬼帝。

 俺も姿を変える能力では劣っていない、どちらが変幻自在の食物連鎖の頂点か、決着を着けてやる。


 覇王鬼帝は主に観光地に現れる、何故なら奴の獲物は観光客だからだ。

 奴は極めて特異な狩りの仕方を行う。

 まず覇王鬼帝は観光地の開店前の土産屋に現れ、店主を一瞬で洗脳してしまう。

 とはいえ店主を襲うわけではない。

 奴は土産物に姿を変えて土産屋の棚に当然のように陳列され、訪れた客に購入されるのを静かに待つ。

 そしてその異常事態を店主は洗脳により認識することが出来ず、普通に土産物として観光客に覇王鬼帝を販売する。

 そして運悪く覇王鬼帝を購入した観光客は宿や帰りの道中で丸呑みにされる。

 狩りの方法がかなり特殊であるが、恐ろしいモンスターだ。


 そんな手間をかけずに素直に店主を丸呑みでいいだろ、と思うかもしれないが観光客を狙うのはメリットがある。 

 覇王鬼帝が地元民ではなく観光客を狙う理由、それは狩りの後にある。

 地元民、例えば土産物屋の店主ががある日急に姿を消したとしよう。

 すると近所の住民や親族、知り合いが何があったのかと騒ぎ立てる。

 急に身内が行方不明になったのだから、当然憲兵等に通報されるのだが観光客にはそれが無い。


 もちろん観光客の自宅周辺では予定を過ぎて帰ってこなければ同様の騒ぎが起こるだろうが、調査や捜索は圧倒的に困難である。

 地元民ならば例えば最近家の周りに見慣れない男がいたとか、最後にあそこで目撃したとか、様々な情報により誰の仕業か特定されてしまうことが多い。

 だが観光地にいる観光客ならば見慣れない人間がいるのが日常だし、あの観光客を目撃したなどの情報を集めるのも困難だ。


 そもそも観光地で行方不明になったのか行き帰りの道で行方不明になったのかが分からない。

 もちろんある程度の特定は出来るだろうが、犯人の特定、それも覇王鬼帝の仕業と辿り着くのは不可能に近い。

 そして覇王鬼帝はまた別の観光地へ行き、獲物を狩る。

 また覇王鬼帝は人間はもちろんモンスターも丸呑みできる。

 人間の観光地だけでなくモンスターの観光地にも現れることだってある。

 なのでアウトフィットの土産物屋にも居る時があるかもしれない。

 でもアウトフィットの長期滞在は言語の都合上難しい、というか行きたくない。

 だから素直に人間の観光地を回って土産物屋で覇王鬼帝をゲットして、瞬間移動魔法もゲットしてやるぜ。

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