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60 人質救出アンダーグラウンド 後編

 救助した人数が多かったため非戦闘員の割合が高く、襲撃されれば救助した人が危険に晒される可能性が高い。

 なので俺が先行してモンスターや野生動物の有無を確認する。

 スポンジ達は彼女達の護衛をしながら山道を歩き、とりあえずの安全圏、ハイオークらの巣から30分ほど歩いて離れた場所で1回目の休憩。

 幸いオーク達も気づいていないか又はこちらの進路が分かっていないのかオークがこちらに来る気配は無く、他の危険生物も近くにはいない。

 元人質7人は捕まっている間大した食事や水も与えられていなかったし心休まる暇も無かったと思われ、体力的にも衰弱しているため半分は気力で動いていた。


 しかし我々には十分な食糧は無く、わずかな手持ちの食糧を与えて魔法で出した水を飲ませるのが精一杯。

 体力を回復させるため夜営した所で状況は改善されない。

 それどころか野営中に夜行性モンスターに襲われるかもしれないので、心を鬼にして生きたければ歩けと叱咤激励しながらアズールまで戻るしかない。


 途中で立ち止まり、もう無理と言い出した者がいたが、俺がエリアンテに歩かせろと命令したら、ここで止まればいずれ死ぬ、ならば今すぐ介錯してやろうか、と脅していた。

 これには皆ドン引きして止めると思いきや、深夜に山道という過酷な状況にイラつきがあったのか、それ以外の複雑の感情があったのか、それがさも当然のように見つめるボブネら。

 するとぐずついていた女が無言で歩き出したので、コイツらも成長したなぁとちょっとだけ感心した。

 その後も幾度かの休憩を挟みながら、予想よりも遅いペースではあったが4時間かけてなんとかアズールまで辿り着いた。

 


 アズールに無事辿り着いたのはいいがまだ仕事は終わっていない。

 今は深夜なので街の出入り口である関所は堅く閉ざされている。

 だから朝まで待て、となるところだが救出依頼により救助者を連れて来た場合や急病人、怪我人が居る場合は関所横の詰め所で事情を話せばアズールに入ることが可能だ。

 大人数で行くのも迷惑なので俺が代表して詰め所に行く。

 夜勤の門番に現況を説明すると、奥から夜勤の冒険者ギルドの職員が出てきた。

 依頼に関することなのでギルドの職員が窓口になってくれる。

 救助者の確認がその場で行われて救助依頼完了、あー深夜の労働は疲れるわ。


 救助者と俺はアズールに入りエリアンテ達は外で野宿、これで終わりだからしっかり休んでねとエリアンテ達に伝えるがエリアンテ達は憤慨した。

 救助した人はいいが何故フィヨルドだけがアズールに入れて私達は野宿なのか、と彼女らはご立腹なのだ。

 近くに野宿している人々がいるにも関わらず、声を出して抗議してくるが制度の関係上仕方ない。

 このような場合街の中に特例で入れるのは救助者と依頼を受けた者で用件を満たした者(総合ランクがB以上)だけ。

 エリアンテ達は用件を満たしていないし、そもそも依頼を受けていないので対象外だ。


 別に意地悪とかロハで働けとか俺の指示に従わないとか面倒事を持ちかけてくる等の日頃の恨みを晴らすためではない。

 ただそういう決まりなので大人しく従いたまえ。

 深夜なんで五月蝿いと周りから睨まれるぞ、実際にはもうこっちを見ている人もいるし。

 エリアンテ達の怒りの篭った視線を余所に俺は宿に戻ってふかふかのベッドでぐっすりと熟睡した。



 数日後、エリアンテ達がえらい勢いで俺に詰め寄ってきた。

 全く心当たりが無いことから何の用か聞いたところ、先日の救助依頼における金の話だった。

 何故私達に金が支払われないのか、そもそもどうして私達が依頼を受けたことになっていないのか、と俺に問い質しにきたのだ。

 何故金が支払われないかと言われても、お前ら言ったよな。


 友人の救出のためならもちろん無償で働くと。


 だから友人の救出のために無償で働いてもらったのだが、人にはタダで様子を見て来いなどと言っておきながら、いざ友人の救出となれば自分は無償で働くことなどありえないと言うのかね?

 それともなんだ、一週間も経たぬ間に考えが変わったとでも?

 ずいぶんと都合の良い主張をするものだ、信用も何もあったものではないな。

 むしろ俺の方からお前達の友人の救出費用を請求したいくらいだ。


 あとお前らが依頼を受けたことになっていないのは当然だ。

 あれは命令で、一緒に依頼を受けようなどと一言も言っていない。

 俺は依頼の報酬を手にする、君達は大事な友人を無事に救出する、それで十分釣り合いが取れている。

 それともまさか大事な友人の命が報酬よりも甚だしく安いと言うのかね?

 帰りの護衛もお前達が友人以外を自主的に守っただけでしょ。


 俺の理知的な説明によりエリアンテ達はぐぬぬと怯んだものの、護衛については友人以外の護衛料は発生するはずだと主張してきた。

 なるほど……でも友人以外は君達が勝手に連れてきたのではないのかね。

 君達は友人を助けに行ったのに、それに追加して他の人々も救出した。

 つまりお前達が勝手に追加で救出して護衛対象を増やしたのだ。

 そのお前達が勝手に増やした護衛対象の分について金を払えと要求するのは如何なものであろうか?


 このように説明を行ったのだが、スポンジ達も少しは頭が使えるらしい。(1名除く)

 彼女達曰く、フィヨルドが依頼を受けた依頼は人質全員の救出だったはず。

 他の人質を助けるのはフィヨルドの仕事、それを私達はサポートして助けたに過ぎない。

 帰りの護衛はフィヨルドと役割分担するなど相互協力して行ったことに違いなく、帰りの護衛についての金は受け取る権利があるとスポンジ達が主張してきた。


 ふむ、確かにその点については否定しにくい。

 分かった、その点については支払おう。

 仮に帰りの護衛料金を依頼として出した場合、報酬は10万イディほどが相場か。

 それを俺とエリアンテ達のパーティーという区分で2分割して5万でいいだろう。

 私達のほうが人数多いんだけど、と言ってくるが先行して安全確保する役割と護衛対象の護衛という役割で考えれば1:1だろ。

 俺は7人分の安全確保、エリアンテ達は友人2人分は無償なので5人分の護衛。

 むしろ俺の方が多く貰っていいところを半々にしているんだぞ。

 しかも安全確保のほうが大変なんだぞ、とかお互いに思うところを主張した。

 最終的に若干譲歩しエリアンテ達もある程度の納得をして7万イディの報酬を受け取ることで合意した。


 エリアンテ達に7万イディを渡すと期末テストが終わった子供のように喜んで帰って行った。

 その後ろ姿を見て俺はほくそ笑んだ。

 前半の救助の件はともかく後半の護衛の件についてはこちらの方が分が悪かったし、払うことに抵抗はほとんど無かったからだ。

 むしろ救助の件で無償だなんて言った記憶が無いなどと粘られると面倒だった。

 護衛に関する部分を大きな争点にして救助の報酬に関する部分について突っ込ませたくなったんだよね。

 なにせ俺の受け取った金額は約60万イディ。

 救助部分で50万、護衛部分で10万くらいだから小さいパイで争ってくれるなら大歓迎だ。

 俺の本命は救助部分の50万、そこに手をつけられないために護衛部分を本題にするのがこちらの思惑だったので戦略的に見て大勝利である。

 今回の件で彼女達も学習しただろうが、もうこれからは軽々しくタダで何かしてなんてお願いするなよ。

 今も昔もタダほど高い物は無いんだからな。 

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