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54 簡単に大金を稼げるお仕事の大半は詐欺かヤバいやつ

 俺は冒険者ギルドの副長の部屋に赴きSランクの依頼を受けた。

 内容はアズールの名士の息子の暗殺、依頼主はその名士本人だ。

 ちなみに冒険者ギルドは暗殺という一見非合法な依頼も受けるが、依頼があれば誰でも暗殺するわけではない。

 冒険者ギルドがその人物を殺すことは妥当かどうかはちゃんと精査している。

 だから依頼にある人物は殺したほうが良い、又は殺すべき人物と判断されるような人物ということだ。


 その辺りの判断は裏で存在していると言われる冒険者ギルド直属の諜報員や国の諜報員が情報を入手して上層部がやっている。

 つまり俺がその暗殺についてどう考えているかなどは一切関係無い。

 今回暗殺する人物は俺も噂で知っているが、具体的な内容はR18なので伏せるが、まあ評判も悪いしやっていることも悪い。

 評判や行動が悪ければ殺していいのか悪いのかは分からん。

 ただ、上は殺していいと判断した。

 だから俺は依頼にある人物の暗殺をする、それだけだ。



 ターゲットの名前はダーマーという男である。

 父親から追放処分を受けたが、生活費は誰かが渡しており郊外に豪邸を構えて暮らしている。

 豪邸には雇われたメイドや警護兵がいるが、大半は彼の悪事とは無関係である。

 今回の依頼では可能な限りダーマーのみを殺害すること、可能な限り事故に見せかけることを要求されている。

 しかしこれがなかなか難しいので困るところだ。


 例えば街の外に出かけているところを盗賊である俺が襲って殺害するとしよう。

 その時ダーマーの周囲には警護兵がおり、彼らを傷つけなければいけないし、盗賊から主人を守れなかった警護兵という汚名を被せられるだろう。

 また別の案として豪邸の食事に毒を入れてダーマーを殺害したとしよう。

 そうなればメイドが罪を疑われたり、毒を混入されたことに気付かなかったという評価になる。

 メイドや警護兵の中には名士に昔から仕えていた者や数世代に渡り仕えているものもいる。

 名士としてはそのような彼らに汚名を被せるのは避けたいのだ。


 だからこの暗殺では手口によって報酬が変わる。

 上記のような手口では報酬が何割か、最悪の場合半減するので上手に事故に見えるようにしたい。

 期限はこちらで決めて依頼を受けてから1週間にしておいた。

 俺が受けている間は誰もこの依頼を受けることが出来ないから、無駄に長くすると他の皆に迷惑がかかるからね。

 冒険者の依頼は長い時間かけても残業代なんか出ない歩合制の仕事なんで、ぱぱっと終わらせますか。



 ではまず豪邸チェック、入り口には守衛が1人がいる。

 守衛は侵入者はネズミ1匹通さないという覚悟を持っているかもしれないが、野鳥にはザル警備なので空から難無く豪邸の庭に侵入する。

 塀の上から窓を見て少なくても2人のメイドと1人のシェフがいるが詳しい人数は分からない。

 ダーマーの姿は確認できなかったが、早朝でカーテンが閉まっている部屋が多く、そのうちのどれかがダーマーの寝室なのだろう。

 鳥の種類を変えながら今日は1日偵察に徹する予定なので焦らずに情報を収集しよう。


 昼になって食堂で食事を取る1人の男の姿があった。

 冒険者ギルドで見た人相書き、食事中メイドが取る態度からしてあの男がダーマーに間違いない。

 食事後は書斎にいるときもあればカーテンの閉まった部屋にいたり、動向はよく分からなかったが問題は無い。

 夕食が終わり、入浴などを済ませて2階の寝室で眠る姿を確認して今日の仕事は終了。

 暗殺プランは事前に考えていたプランで問題ないだろう、時間をかける理由も無いので明日暗殺を決行しよう。



 翌日、まずは豪邸内に侵入するところから。

 人間ならばこれがかなり難しいはずだが、野鳥の俺にとっては難しいことは何一つ無い。

 寝室はメイドが換気と掃除のため窓を開ける、しかし他の部屋の掃除中も開けっ放しなので人がいない隙に窓から入れば侵入成功。

 あとはメイドが戻ってくる前に適当な場所に隠れれば良い。

 定番のベッド下も良いが、ベッド下の空間がちょっと広いしベッドメイクがまだ終わっていないのでバレるかもしれない。

 なので今回は洋服タンスの裏の隙間をチョイス。

 タンスの裏に入れるような細長い生物になってスタンバイして機会を待つ。


 約12時間後、拒否できない少女にR18な行為を行った後ダーマー就寝。

 前日にいびきをかいていたので、熟睡しているかの目安は見なくても分かるのがありがたい。

 ダーマーの横にいる少女にも寝ていてもらいたいので1時間ほど待って行動開始だ。


 半日ぶりに広い空間に出てまず窓を開錠するために人間形態になる。

 万が一ここで急に目覚めたときに顔を見られても良いよう犯罪など危険な時専門の顔を使う。

 俺が使える顔の中で最も特徴的なワシのような鼻、太い眉を持つ俺がヨクシャリパと呼んでいる顔だ。

 強い特徴を持つ顔なので、顔を見られて指名手配をかけられても大丈夫。

 フィヨルドなど他の顔と全く違うため、ヨクシャリパではない顔の俺が捕まることはないのでとても便利だ。


 そんなヨクシャリパになった俺は静かに窓の鍵を開錠し、簡単に外へ出られる準備を整えた。

 じゃあダーマー君、一足先にあの世にご招待してあげよう。

 君はこの狭い世界で王だったかもしれない、だから別の王が君を殺すよ。


 俺はヨクシャリパからゆっくりと姿を変えた。

 体長3メートルほど、鎌首を持ち上げて威嚇する姿が特徴的な毒蛇、キングコブラである。

 人間はおろか象すら噛まれたら死ぬと呼ばれる神経毒を持ち、大量の毒を噛んだ相手に流し込み死に至らしめる。


 毒というのは種類に応じて適切な治療を行えば助かることもある。

 だがこの世界に俺の血清なんて存在しないし、そもそも毒蛇に噛まれてもどの毒蛇なのか分からなければ対処のしようが無い。

 そしてキングコブラは噛まれたら助からないと言われるほどの毒蛇なので、噛んだ時点で死は確定的。

 隣で少女が寝ているので間違わないように、と思ったが普通に布団の外に肩と腕が出ていたので間違えようが無い。


 えいっ、とダーマーの二の腕にガブリと噛み付き毒を送り込む。

 突然の事態に飛び起きて叫ぶダーマーだがもう遅い。

 もう死に至らしめる毒はすでにお前の体内に送り込んだのだ。

 二の腕から口を離して痛みと何が起こったか分からずパニックになっているダーマーを尻目に窓から地面まで落下しておさらばする。

 悲鳴に慌てて警備兵やメイドが来たようだがもうどうにもならない。

 人間としてもこの状況になってしまったことも、もう手遅れなのだ。



 翌日、ダーマーの死を確認して冒険者ギルドに報告に向かった。

 報告と言っても詳しい手口などは一切説明しない、ただダーマーは死んだという報告だけだ。

 俺が殺したという証拠は一切無いが何ら問題はない。

 何故なら暗殺は依頼期間中に死ねば、例え依頼を受けた者がその死に無関係であろうと達成になる。

 暗殺の証拠を持っていくなんて馬鹿げた行為は冒険者側としてもギルド側としてもメリットがないしな。

 

 副長にやった旨報告をしたのだが、ギルド長もやってきて中々やるじゃないかと褒められた。

 報酬については通常と異なり最大10日程度待つ必要がある、と副長に告げられたがちょっと困る。

 上級オークションのため首都に行くのだが、予算がギリギリなので早めに欲しいんだけどと早期の支払いを願い出た。

 そう伝えると、ギルド長から二つ返事で最低報酬分のイディだけ前渡しでもらえることになった。

 最低報酬でも500万イディなんですけど、それがたった一言で動く高ランクの世界ってやばいわ。


 ただギルド長からもう1個依頼を受けてほしいと言われ、前渡しして貰った分断りにくい。

 条件としてオークションが終わってからともう1個条件を付けてOKした。

 冒険者は自分で仕事を決められる自由さが売りなのに、SランクのSは束縛(シャックル)のSも含んでいるんですかと思ってしまう。


 依頼の残りの報酬は意外に早く首都に出発する前、依頼が完了して3日後に支払われた。

 本来最高報酬で1000万イディだったのだが、依頼主が今回の仕事ぶりを評価したのか今後のためか200万増額されていた。

 今まで地道に金を貯めて来たのは何だったのだろう、と思うような金額である。

 くれるなら遠慮なく貰っておくけどね、金払いの良い依頼主は好きだよ。

 じゃあ上級オークション会場に行くか、ここで購入できる装備次第で俺の生死が決まるのだ。

 いい装備が出品されることを願い蛇の抜け殻を財布に入れて首都へと向かうことにした。

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